“ツアークロスV”に込められた思い Vol.1【11年ぶりのモデルチェンジ! アライヘルメットの中で最も高級な多機能ヘルメットに!】
今夏、アライヘルメットのツアークロスVが登場。2018年より開発がスタートし、ついに登場した新しいヘルメットには、アライヘルメットの矜持が表れていた。その開発背景などを尋ねた。
●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:真弓悟史 長谷川徹 ●外部リンク:アライヘルメット ●BRAND POST提供:アライヘルメット
アライヘルメットの中でもっとも高級なヘルメット。それが「ツアークロスV」だ
デリバリーが始まったばかりのアライヘルメットの「ツアークロスV」。その価格は、ソリッドモデルが6万9300円、モデルグラフィックが7万9200円。アライヘルメットの中ではカーボンなどを除くともっとも高額なヘルメットである。
ツアークロスはアライヘルメットのロングセラーモデル。前作のツアークロス3が発売されたのは2012年だが、基本設計からは20年以上が経過している。それだけに待ち望んでいたファンは多く、この価格に衝撃を受けた方も多かったと思う。
僕も実際にその価格を見て「RX-7Xよりも高いのか…」と思った1人。しかし、今回アライヘルメットの開発陣の話を聞いて、さらに実際に被って触って走ってすぐに納得した。それどころか、よくぞここまで…と、執念ともいえるそのこだわりに驚かされたのだった。
バイクのターゲットを『オフロード』から『アドベンチャー』へ!
ここ数年、世界的に増えているアドベンチャーモデル。その勢いは凄まじい。僕も20年前はロードバイク一辺倒だったが、10年ほど前から周囲ではBMWのGSシリーズが特に目立つようになった。国内外のバイクを見ても、ここ数年でいうとほぼ全メーカーが“打倒GSモデル”をラインナップしている。
日本でいちばん売れているBMWは相変わらずR1250GSであり、ドゥカティも欧州でもっとも売れているのは10年ほど前からムルティストラーダシリーズ。KTMやハスクバーナ、トライアンフのアドベンチャー&ビッグオフモデルの台頭も大きく、あのハーレーダビッドソンさえもがこのカテゴリーに参画。また国産では、ホンダからはアフリカツインやトランザルプが登場し、ヤマハはテネレ700、スズキはVストロームシリーズを様々な排気量に用意している。
この変化により、ツアークロスはターゲットを大きく変更。求められることが格段に増え、開発は困難を極めたそうだ。
小中排気量のオフロードバイクがターゲットであれば、高速道路の巡航速度は80〜100km/hほどで、1日の走行距離も知れている。しかし、アドベンチャーとなると話は別。1日の走行距離も連続走行時間も長く、さらには世界に目を向けると高速道路の巡航速度はぐっと高まる。当然、ヘルメットへのニーズは大きく異なってくる。
念には念を入れて開発。オフロード性能と同時に高速性能も重視
アライヘルメットの中で、ツアークロスVほど開発期間が長かったヘルメットはなかったという。開発がスタートしたのは2018年。ツアークロス3の問題点の洗い出しから始まったが、それは多岐に渡った。バイクのターゲットが変わっているのだから当然で、開発期間中にもアドベンチャーバイクは続々と進化を遂げて登場。飛躍的に高性能化&電子制御化した新型バイクが出ることは、すなわちヘルメットに求められるハードルもどんどん上がっていくことを意味する。
「シールドをワンタッチで外せること/シールドの視界の改善/視界を広げること/シールドの可動部分の支点を下げること/コンパクト化/発泡スチロールの量をどうしたら稼げるか、などあらゆる改善点を出しました。もちろん、より安全性を上げること/かわす性能を進化させることは必須です」と、ツアークロスの開発初期段階から担当する開発部の大野智城さん。
「20年前はアドベンチャーモデルにそれほど市民権はなく、11年前に登場したツアークロス3も、オフロード車に乗るツーリングライダーの方が、ゴーグルの煩わしさを少しでも軽減できることを目的にと作られました。しかし、特に欧州ではビッグアドベンチャーでアウトバーンを200km/hで走るライダーが出てきたんです。さすがにこちらが想定もしていない事象ですが、ニーズの高まりも感じました」と開発部の鈴木雅士さんは語る。
1つのヘルメットで3種類のスタイルを楽しめる
ツアークロスは一見すると、オフロード性能を重視したアドベンチャー用ヘルメットに見える。しかしバイザーをワンタッチで外すことで、ロード用のヘルメットに変身させることが可能。実はアライヘルメットでは、30年ほど前にシールドとゴーグルが使えるOWというヘルメットをラインナップしていた。昔から『オンとオフを一つに』という発想を持っていたのだ。
「ヘルメットのカスタムをもっと気軽にできたらいいなと、ずっと思っていました。人によってバイクライフは様々ですから。そこでツアークロスVは、デュアルパーパスでなくマルチパーパスというコンセプトに変更。シールド&バイザー付きのアドベンチャースタイル/シールドを外したゴーグル着用のオフロードスタイル/バイザーを外したロードスタイルの3つです」と鈴木さん。
「ツアークロス3もスタイルを変えることはできるのですが、シールドが4本のネジ止めなので、工具を使わないと外せません。そこで、工具を使わずにバイザーやシールドの交換ができたら良いよね、となったのです」と大野さん。
「安全にコストがかかる分には、どんどんやれ!」と社長が言ってくれた
他にも課題はたくさんあった。インカムの装着/視野の確保/エアダクトの快適性/被り心地/安全性のための形状の追求などだ。なんと今回のツアークロスVの開発に要した金型は8個。アライヘルメットは金型も自社生産できる強みを持つが、通常の開発でプロトタイプに要する金型はせいぜい3つくらい。しかし、開発メンバーは妥協をしなかった。金型を起こすだけでなく、3Dプリンターでも様々なパーツを作ったという。
ツアークロスVは、これまでのアライ製ヘルメットの中でもっとも多様性のあるヘルメット。色々なライダーが使い、色々なバイクに使われるだけに、テストにも時間がかかった。さらにはテストで使い込んで、ストレスを感じる部分をきちんと改善。その都度、3Dプリンターでのパーツ制作や金型の調整が行われた。
金型を作ればコストがかかる。開発期間が伸びればそれもコストになる。当然である。
「普通のメーカーだったら、コストを下げようって話になると思います。しかし、社長は『まずはお客さんの頭を護ることを優先しなさい。安全にコストがかかる分には、どんどんやれ』って言ってくれました。その点はやりやすかったですね。ヘルメットには色々な規格がありますが、例えばスネル規格に合わせるのはそれほど大変ではないのです。それよりも社内独自の水準に持っていく方が大変です。そこにも時間がかかりました。
また、成形部としては生産のことも考えなくてはなりません。工場にいる職人達とも相談しました。やはり生産の工程でもツアークロスはいちばん手間がかかるのです。ファイバーなどは専用のシートを作り、これまでにない積層方法にしています。部品点数も多い。正直、生産現場からクレームが出るんじゃないかとヒヤヒヤしていましたが、みんな『お客さんのため、安全のため』と言って受け入れてくれました」と成形部の藤野さん。
ツアークロス3とツアークロスVを並べてみると、その進化がよくわかる。安全性を追求しつつコンパクトになっているし、シールドの支点を下げることで、丸さを追求しているのだ。
一つひとつのことをどこまでも深く掘り下げるその姿勢に、なんてアライヘルメットらしい進化なのだろう、こだわりなのだろうと感心させられる。話を聞いていると、色々なライダーがツアークロスVを被って遠くを目指すその姿が簡単に目に浮かんだ。
次回、ツアークロスVに込められた思いVol.2【これまででもっとも開発期間の長かったヘルメット。細部のディテールに愛が宿る】では、各セクションの担当者に話を聞き、その詳細に迫ろう。
ツアークロスVのソリッドモデル(6万9300円)を見てみよう!
ツアークロスVのモデルグラフィック(7万9200円)を見てみよう!
サイズ:(54) (55-56) (57-58) (59-60) (61-62)
規格:スネル JIS
帽体:PB-cLc2
※本記事はアライヘルメットが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。