トライアンフの巨艦クルーザー「ロケット3R」は、フルモデルチェンジを受けて排気量を2458ccに拡大。早くも2019年末に日本市場導入が開始された。唯一無二の英国せクルーザーがもたらす快感を、ヤングマシンテスターとしておなじみの丸山浩氏が徹底検証する。
【テスター:丸山 浩】言わずと知れた本誌のメインテストライダー。ロードレースでの輝かしい実績を持つ一方で、日本一周経験があるほどのツーリング好き。ロケット3にアメ車やゾウを連想した!?

「これ操れるのか?」の不安は一瞬で吹き飛ぶ
第一印象は「とにかくデカい!」。ロー&ロングフォルムだが、低さよりも長さに驚かされる。そして、エンジンの主張がもはやバイクの存在感すら上回っているとさえ感じられた。2458ccという排気量を考えたら当然なのだが、クルマのエンジンが載っているかのようで、しかもそれを丸ごと見せるようなフレームワーク。2294ccの先代に試乗した経験があるからある程度の想像はついたが、そうでなければ対峙しただけで、「これ、どんな走りをするんだ!?」と、ワクワク感が止まらなくなりそうなルックスだ。
【TRIUMPH ROCKET 3 R】主要諸元 ■全幅889 全高1065 軸距1677 シート高773(各mm) 車重291kg(乾燥) ■水冷4スト並列3気筒DOHC2458cc 167ps/6000rpm 22.54kg-m/4000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量18L ■ブレーキF=Φ330mm×2 R=Φ300mm ■タイヤF=150/80R17 R=240/50R16 ●色:赤、黒 ●価格:265万3000円
巨漢ながらロースタイルなので、両足の母指球あたりまでしっかり接地する。ただし、シート幅があるのでややバランスが取りづらい点には注意したい。ハンドルは遠く、絞り込みもなくワイドなため、結果的に前傾姿勢を強いられる。ゆったりクルーザーというより、ドラッグ系の雰囲気が感じられる設定だ。
ところが、いざ走りだしてまず抱いたのは、加速やトルクがもたらす興奮ではなく、身構えていたぶん肩透かしを喰うほどの扱いやすさだった。
この新型ロケット3Rは、これまでも量産二輪車の世界最大排気量を誇ってきたロケットIIIシリーズの後継として’19年夏に発表された。エンジンは排気量アップだけでなくほぼすべての部品が新設計され、車体もオールニュー。IMU(慣性計測装置)を含む電子制御機構も満載で、車名までローマ数字の「III」からアラビア数字の「3」に変更するなど、徹底的に刷新が図られている。それらの結果、モーターサイクルとしての操縦性も高められていて、排気量増よりもこちらの方が注目すべきポイントである。
車体は先代比で40kg以上も軽量。もちろん重いが、まるで支えていられないというほどでもない。アシスト&スリッパー機能付きの油圧クラッチなので、クラッチレバー操作も軽め。もちろんトルクのバケモノみたいになってはいるが、それが扱いにくさにはつながっていない。そう、新型ロケット3Rは、手なずけられる猛獣なのだ。
2294ccの先代よりもビッグボアかつショートストロークなエンジンは、クランクケースや潤滑系やバランサーシャフトをはじめ、ほぼすべての部品が刷新されていて、その排気量は2458ccを誇る。
クランク縦置きの並列3気筒レイアウトで、エキゾーストパイプは車体右側に並ぶ。骨格は先代のスチールからアルミ製になったが、フレームワークをまるで感じさせないエンジンの存在感!
マフラーは右側2本出しに見えるが、じつは車体左側下部にも排気口がある。後輪駆動は、ベベルボックスによるシャフト式。6速仕様(先代は5速)で、アシスト&スリッパークラッチも搭載。
フロントブレーキには、ブレンボの最新世代となるスタイルマのラジアルモノブロックキャリパーを採用。ショーワ製の倒立フロントフォークは伸圧減衰力が調整可能で、インナーチューブ径は47mmと極太だ!
ショーワ製のフルアジャスタブルリヤモノショックは、車体右側にオフセット配置されていて、油圧式のリモートプリロードアジャスターを搭載している。ちなみにリヤブレーキは、ブレンボ製4ピストンモノブロックキャリパーと超ハイスペック。
量産バイクで世界最大の排気量=2458ccを有するトライアンフの巨艦クルーザー「ロケット3R」。丸山浩氏の試乗インプレッション、次のページではさらに深く掘り下げる。
(前ページより続く) トライアンフの巨艦クルーザー「ロケット3R」は、ほぼアイドリングの状態でもクラッチをつなぐだけで車体が前に動きはじめ、そこからほんの少しスロットルを開けると、ドロドロドロ……と前[…]
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