
2024年10月20日、熊本県運転免許センターで「原付バイク安全運転スキルアップ講習会」(熊本県交通安全協会主催)が開催された。本講習会には二輪車安全運転推進委員会(二推指導員)に加えて、熊本県立矢部高等学校二輪車競技部の部員も指導者として参加した。高校生が他校生徒や大人にバイクの安全運転について指導するという画期的な講習会の模様をお伝えする。
●文:田中淳麿(ヤングマシン編集部)
原付バイク安全運転スキルアップ講習会について
本講習会は原付バイクに特化した安全運転講習会で、原付利用者の交通安全意識と安全運転技能の向上を図り、交通事故を防止しようという狙いで2024年から開始された取り組みだ。
原付バイクに特化した講習会は全国的に見ても近年ほぼないが、2023年は熊本県でのバイク事故が2割弱も増加。原付バイクが関与した事故に限ると243件の発生、27%強も増え、2名が亡くなった。開催の背景にはこうした状況がある。
講習には10~60代と幅広い年齢層が参加した。30名以上の受講生に対して二推指導員は十数名が配置されたが、さらに矢部高校二輪車競技部員7名がそのサポート役を務めた。
なお、原付免許の交付時には計3時限の講義・講習会が課せられているが、年配の参加者には受講未経験者も多い。クルマの免許はあるけど原付バイクに乗るのは今日が初めてという方も多数いたが、そうした方々は別グループとなって運転の基礎から教えてもらうことができた。
二輪車競技部の面々は、各課目の始めにデモンストレーション走行を見せたり、運転のおぼつかない受講者への先導や追走といったサポートをしたほか、受講者からの質問に答えたりアドバイスをするなど大人の二推指導員を見事にサポートし、頼もしい活躍ぶりだった。
二推指導員の高齢化も二輪業界の課題だ。”18歳で成人”のいま、高校生が年配者に教えることに対して許容、推進すべき時かもしれない。
開講式の様子。矢部高校二輪車競技部は指導員側の列に並んだ。
安全運転を教えた二輪車競技部の活躍
本講習会では、熊本市近郊の高校でバイク通学を行う生徒も参加した。
矢部高校二輪車競技部はふだんから運転技能向上のための練習や同校生徒への安全運転指導、ボランティア活動などを行っているが、近年は二輪車安全運転大会廃止の影響もあり、他校生徒への指導も模索していた中での参加実現となった。
当日は部員に加え、顧問の先生、支援者らも参加した。講習会終了後、部員に話を聞くと「頭や体ではわかっていても他者に言葉で伝えることに難しさを感じた」とのこと。今後は“教えることのテクニック”について学びを深めたいところだろう。
講習生として参加した県立翔陽高校3年生の岩下さんにも話を聞くと、「免許センターという場所もあり、ふだん学校で受けている講習と違って課目の練習が具体的で実践的でした。矢部高校さんのお手本も参考になりました」とのことだった。
矢部高校の参加メンバー。
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