世間を賑わせた「ホンダと日産が経営統合」の報道。バイクファンとして気になってしまうのは、この話が二輪事業に影響するのか、しないのか。現時点で何も確定した話はないのだが、さほど心配する必要はなさそうだという。それはなぜか?
●文:Nom(埜邑博道)
持ち株会社を設立し、ホンダと日産、さらに三菱自動車も加わる?
ホンダと日産が経営統合するという話が、12月18日からTVのニュースやワイドショーで大きく取り上げられています。
両社は、今年の3月に自動車の知能化・電動化時代に向けた戦略的パートナーシップを結ぶことを正式に発表(8月に共同研究契約を締結)していましたが、今回は一段階進んで統合して、設立する持ち株会社の下にホンダ、日産の両社がぶら下がる形となり、さらに日産傘下の三菱自動車もそこに加わるという非常に大きな出来事になっているようです。
なぜこのような話が出てきたかは、各報道で事細かに説明されていますが、その話をまとめると
- 日産の経営不振(今年4月から9月のグループ全体の決算で営業利益が前年度から90.2%減って329億円、最終利益は93.5%減って192億円に。このため、さ来年度までに生産能力を20%削減し、9000人の従業員を減らす方向)で、先行きが非常に不透明になっている
- 資金難に陥りそうな日産に対して台湾のEV事業を推し進めている台湾の鴻海(ホンハイ)が食指を伸ばしている
- 国の基幹事業でもある自動車産業の一角が、他国の企業に買収されるのに危機感を抱いた国(具体的には国交省)が、ホンダに日産との経営統合を勧め、それにホンダが同意した
- 来週にも経営統合に向けた基本合意書を締結して、出資比率やスケジュールを具体的に検討する
- カーボンニュートラルに向けた電気自動車の開発や、知能化などには巨額の投資が必要で、ホンダ、そして日産それぞれ個社での対応は難しいという判断も、両社が統合する大きな理由になっている
というものです。
現在のホンダを支えているのは二輪事業
そして、一部報道では触れられていますが、ホンダの収益体質を見ると二輪事業と四輪事業の利益率は圧倒的に二輪事業が高く、2023年度の決算資料によると二輪事業の営業利益は5562億円で営業利益率は17.3%。対して二輪よりも売上の規模がはるかに大きい四輪事業の営業利益は5606億円(前年度はマイナス166億円)で営業利益率は4.1%。この数字から明らかなように、現在のホンダの屋台骨を支えているのは二輪事業にほかなりません。
一般の方にとっては、ホンダは四輪の会社のように見えているでしょうが、我々二輪メディアを含め二輪関係者はこの事実をよく承知していて、やはりホンダは祖業でもある二輪の会社という認識が強いのです。
そこで二輪にかかわる人たちの間で、もしもホンダと日産が経営統合したら二輪はどうなるのか? という漠然とした不安が持ち上がっています。
ただ、決算の数字を見るだけでも、ホンダにとっての二輪は会社の根幹を支えているものであることは明白ですから、経営統合したからと言って二輪に何か大きな変化が起こるとはまったく思えません。
将来の本格的な四輪の電動化を見据えての経営統合であったとしても、ドル箱の二輪事業に悪影響が生じるようなことがあれば、ホンダという会社そのものが成り立たなくなってしまうでしょう。
今回の統合話に関しては、旧財閥系の日産と、本田宗一郎さんが一代で築き上げた在野の一企業のホンダでは社風が違いすぎてうまくいかない、ホンダが日産という負債を抱えるだけだなどという意見も見られます。
実際、この統合話が出て以降、日産の株価はストップ高になった反面、ホンダの株価は下落傾向になっています。
実際にこの統合話がどうなるかは、来週から始まるという契約に関する協議の進展を見なければ分りませんが、二輪事業に大きな変化が起こることはまず考えられないというのが衆目の一致したところではないでしょうか。
それよりも、統合した結果、ホンダがOEM供給することで日産ブランドのバイクが生まれる可能性もあり、そうなると日産ファンは四輪も二輪も日産ブランドで揃える、なんてことも起こるかもしれません。
ネガティブな予想をするよりも、日本の2位、3位メーカーが経営統合することで生まれるシナジーに期待したいところです。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([連載] 多事走論 from Nom)
アクアライン上り線の混雑時間帯の料金が1600円に! 2025年4月から新料金制を導入 12月3日に開催された「第4回東京湾アクアライン交通円滑化対策検討会」において、令和7(2025)年4月からアク[…]
総勢2000人が鉄フレームのバイクを楽しむ イベントレースと言えば、毎年5月と11月に茨城県のTSUKUBA2000で開催される「テイスト・オブ・ツクバ」(以下T.O.T.)が有名で、最近は1万人を超[…]
2025年11月の規制を睨み、2021年頃に開発の話が持ち上がった ご存知のように、バイクの世界にもカーボンニュートラル(CN)の波は激しく押し寄せていて、国内外の二輪メーカーはその対応に追われている[…]
新基準原付についてのパブコメ募集が始まった! 来年4月1日からの道交法改正がほぼ決まり 来年11月に施行される新排ガス規制に現在の原付一種(50cc)は対応することが困難という二輪業界からの要望を受け[…]
”聖地巡礼“のようだった頃の鈴鹿8耐を思い出させる ヤマハのXSR900 GPの受注が好調とのこと。 初めて見たときのファーストインプレッションは「なんだこれ?」だったけど、なるほど往年のGPレーサー[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA] | ニュース&トピックス)
全国170店超のHonda Dreamで開催中 Honda CBR650R/CB650Rに搭載された世界初のクラッチ自動制御メカ「Honda E-Clutch(イークラッチ)」。その実力を誰でも気軽に[…]
開発はいつからはじまったのか? まずはHonda E-Clutchの開発が、いつ頃から始まったのかを伺いました。 「クラッチをコントロールするという技術研究に関しては約10年かかっています。その間、い[…]
スーパーカブはどんな時代に生まれたのか 最初にスーパーカブが誕生した1950年代の日本がどのような時代だったのか、簡単に説明しておくことにしましょう。この写真は1952年の東京 日本橋の様子です。 1[…]
BIGなCBとBIGな企画 ビッグマック! ビッグサンダー! ビッグカツ!! てんちょーもBIGになってバイクをもっと布教したい! そう、目標はホンダのBIG-1ぐらい大きくなきゃね。え、BIG-1っ[…]
ホンダは、東京都内にお住まいの方を対象に電動二輪パーソナルコミューター「EM1 e:」を約2か月体験できるモニター500名を募集開始した。 ガソリン車の原付一種が生産終了とのニュースも飛び交うなか、電[…]
人気記事ランキング(全体)
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
車体を傾けたら真っ先に接地する“バンクセンサー” カーブを曲がるために深くバンクさせると、車体のどこかが地面に接地して、ゴリッとかガーッという音と共にステップから衝撃がきてビックリしたことがあるライダ[…]
1位:【2024年5月版】125ccスクーターおすすめ11選! 125ccスクーターに関する魅力とおすすめモデルを伝えた、5月の記事が1位。原付二種(51~125cc)クラスのスクーターは、手軽なサイ[…]
誰がなんと言おうと好きなんだ! 揺るがない人気と存在感。「XLスポーツスター」こそスタンダード。誰がなんと言おうと好きなんだ、このスタイル、この佇まい!!「フォーティーエイトファイナルエディション」が[…]
グロムとは違うのだよ、このモンキー125は! 2018年7月、オールドウイングシリーズ第1弾として、スーパーカブC125よりも2か月だけ早く発表&発売されたモンキー125。思えばこのモンキー125とス[…]
最新の投稿記事(全体)
持ち株会社を設立し、ホンダと日産、さらに三菱自動車も加わる? ホンダと日産が経営統合するという話が、12月18日からTVのニュースやワイドショーで大きく取り上げられています。 両社は、今年の3月に自動[…]
クルーザーベースなのに意外にスポーツ性高し! ロイヤルエンフィールドの日本国内ラインナップには、このショットガン650のほかに648ccの空冷パラレルツインエンジンを搭載するモデルが3機種ある。カフェ[…]
シリーズの中心的な存在、語り継がれる名車の予感 昨年3月に発売されたVストローム800DEと、その7か月後に登場した同800は、ともにミドルネイキッドのGSX-8Sとプラットフォームを共有している。 […]
生命力にあふれるジャングルを描いたポップアートなグラフィックモデル アストロGXのニューグラフィックモデルは、高彩度の色を多用した、にぎにぎしいカラースキームが街中でもワインディングでも目立つ派手さが[…]
中須賀選手の第4弾レプリカモデルがアライ最高峰フルフェイスに登場 全日本ロードレース選手権で通算12回のチャンピオン、そして鈴鹿8耐では3年連続優勝と前人未到の記録を持つレーシングライダー、中須賀克行[…]