「本田宗一郎杯 Hondaエコマイレッジチャレンジ」は、1Lのガソリンでどれだけ走れるかを競うホンダ伝統の大会。2024 11/12〜13にモビリティリゾートもてぎで開催された第43回の今回は「カーボンニュートラル燃料クラス」が新設されたことが話題となった。従来のガソリンから燃料が変わるとどうなるのか…2つの参戦チームに話を聞いた。
●文:ヤングマシン編集部(マツ) ●写真:編集部/ホンダ ●外部リンク:Hondaエコ マイレッジ チャレンジ
1Lのガソリンでベトナムまで行ける?!
1981年にスタートした大会を起源とする「Hondaエコマイレッジチャレンジ」は、冒頭で述べた通り1Lのガソリンで何km走れるかを競う競技。ホンダの50cc車を改造した原型を留める車両から、完全にオリジナルの車両まで、いくつかのクラスに分かれていて、中学生や高校生のクラスも設定されるなど、幅広い層に門戸が開かれたモータースポーツだ。
過去の最高記録は2011年に達成された3644.869km/Lで、これは大会会場のモビリティリゾートもてぎから、ベトナムまで行けてしまう数値。実際の競技では走行中にエンジンを停止させ、惰性で走行する場面もあるため、リアル環境に反映させるのは難しいが、空気やころがり抵抗を極限まで低減した車両の姿は独特の迫力に満ちている。
そんな“エコマイ”に、今年からハルターマン・カーレス社のカーボンニュートラル燃料を使用する「カーボンニュートラル(以下CN)燃料クラス」が、従来のガソリンクラスに併存する形で新設された。これは2050年のCN達成を掲げているホンダの取り組みの一環だ。
大会会長を務めるホンダの加藤 稔 二輪・パワープロダクツ事業本部長は「全日本やモトGPではすでに使用されていて、今後は4輪のFIもCN燃料になります。ならばエコマイもCN燃料でやるべきと、昨年から準備を進めてきました。大変な部分もあると思いますが、参戦チームは我々ホンダと一緒に、CNに向けてチャレンジしていただきたい」と語る。
今大会では全222チームのうち、57のチームがCNクラスに参戦。そうなると気になるのは「従来のガソリンとどう異なるの?」という点だろう。そこで2つのチームに話を尋ねてみた。それぞれでCN燃料への理解度がかなり異なるため、解釈に違いがあるのがとても興味深い。従来のガソリンとポンと入れ替えて使ってみた例と、CN燃料の特性を理解した上で使った印象の違い…と、捉えてもいいだろう。
①あきる野市立東中学校Team-A【CNグループI(中学生クラス)】
「CN燃料はすごく難しいですね。気温が低いとエンジンが始動しにくいですし、化石燃料のガソリンに対してベトッとしているので、点火プラグをカブらせてしまうと、付着した燃料がなかなか揮発してくれず、本当にかからない。エンジンも暖まりにくいので中古プラグで暖気しておいて、スタートの直前に、新品プラグを入れています」
「ウチは部活動ですので、生徒に基本を知ってもらうためにも、キャブレターで参加しています。点火時期も含め、気温や気圧を見ながら自分たちで考えながら、セッティングさせているのですが、CN燃料を扱い始めた2月頃は、寒かったせいもあって本当にエンジンがかからなくて。どうやったらかかるのか、テストを繰り返してきました」
「ちなみに部の名称は”技術研究部“で、現在の部員は27名。メインの活動がエコマイです。公立中学が参加するには敷居の高いイベントなのですが、地元のいろいろな方々の協力をいただきながら「公立中でもできる!」を伝えたくて活動しています。生徒はクルマやバイク好きが多いのと、保護者の方から”自分が子どものときにあれば入りたかった”と、言われることが多いですね(笑)」
②team-truth【CNグループ Ⅳ(一般クラス)】
「CN燃料ですが、意外と従来のガソリンと変わらないな…という印象です。多少の特性の違いはありますが、一般的な化石由来のガソリンと同じJIS規格を通っていることもあり、“ちょっと扱いにコツがいる”ぐらいの差だと思います」
「とはいえ、それは職業的な知識もありますし、CN燃料の特性を調べて“ここは苦労しそうだな”というポイントを理解したうえで、トライしていることもあります。そういう意味ではいきなり使うと苦労するでしょうし、これから挑戦するチームには、CN燃料はハードルが高いかもしれません」
「CN燃料は理論的な空燃比が通常のガソリンより濃い目なので、単純に置き換えると燃費は7%ぐらい落ちます。今までのガソリン感覚でセッティングすると、薄くなってしまう。それが始動性に影響している可能性もあります。燃料を濃い目にしていった先に、今までのガソリンと同様に使えるポイントがありますが、そこを探すのに少し苦労するかもしれません」
「あとは低発熱量といって、取り出せる熱量が少ないのでパワーもやや落ちます。燃調は濃くしないといけない、かつ出力は落ちる、というのが自分たちが掴んでいるCN燃料の特性です。走らせてのフィーリングはCN燃料を前提にセッティングしているため、従来のガソリンとほとんど違いを感じません。おそらく“利きガス”をやっても、わからないでしょうね(笑)」
ちなみにエコマイについて尋ねてみると「敷居はとても低く、カブエンジンのポン乗せでも参加でき、そこそこの燃費も出せます。そこから先はまず空力で、1000km/L台にはしっかりしたカウルがないとまず入らない。あとはどこまで走行抵抗を減らせるかの、積み重ねです。人が聞いたら引くぐらい細かくなりますが(笑)、そうしたノウハウを自分で考え、反映させられるのも面白いところです」
指定のCN燃料は100%バイオ由来
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
ヤマハの最先端技術の結晶、それがYZF-R1だ 今からちょうど10年前の2014年11月。イタリアはミラノで開催されたEICMAにおいて、7代目となるヤマハのフラッグシップ“YZF-R1”が華々しくデ[…]
ハーレーダビッドソン ジャパン株式会社(本社:東京都新宿区)は2025年1月1日付で、新たなマネージングダイレクターに玉木一史氏が就任することを発表した。玉木氏は、2024年12月31日をもって退任・[…]
連続シリーズ「カワサキ水素大学」の第5弾 「カワサキ水素大学」は、カーボンニュートラル社会の切り札とされる水素エネルギーへの、川崎重工グループとしての取組み方を紹介しつつ学ぶという動画。モデルの、トラ[…]
世の中は忘年会シーズン真っ只中。あっちに行ったりこっちに行ったりと、一次会や二次会などで都心を駆け回るビジネスマンをよく見かける。でも、忘年会の会場が駅や会社から離れた場所にあるときは、移動が面倒…。[…]
持ち株会社を設立し、ホンダと日産、さらに三菱自動車も加わる? ホンダと日産が経営統合するという話が、12月18日からTVのニュースやワイドショーで大きく取り上げられています。 両社は、今年の3月に自動[…]
最新の関連記事(レース)
今シーズンに続き富樫虎太郎選手を起用、新加入は木村隆之介 元MotoGPライダーの中野真矢さんが率いるレーシングチーム「56RACING(56レーシング)」が、2025年のレース活動概要を発表した。 […]
全日本ST1000とASB1000の両カテゴリーを制す! 開幕2連勝を飾り、常にポイントリードし最終戦を待たずにチャンピオンを決めた全日本ST1000クラスに比べ、ARRC ASB1000クラスは、ポ[…]
機密事項が満載のレーシングマシンたち バイクムック”RACERS(レーサーズ)”は、「いま振り返る往年のレーシングマシン」がコンセプト。それぞれの時代を彩った、レーシングマシンを取り上げている。 現在[…]
ポイントを取りこぼしたバニャイアと、シーズンを通して安定していたマルティン MotoGPの2024シーズンが終わりました。1番のサプライズは、ドゥカティ・ファクトリーのフランチェスコ・バニャイアが決勝[…]
プロジェクトの苦しさに相反する“優しい雰囲気” 全日本ロードレース最終戦・鈴鹿、金曜日の午前のセッション、私はサーキットに到着するとまず長島哲太のピットの姿を撮りに行った。プレスルームで初日のスポーツ[…]
人気記事ランキング(全体)
2025年こそ直4のヘリテイジネイキッドに期待! カワサキの躍進が著しい。2023年にはEVやハイブリッド、そして2024年には待望のW230&メグロS1が市販化。ひと通り大きな峠を超えた。となれば、[…]
一定以上のスピードの車両を自動的に撮影する「オービス」 結論から言うと、基本的にバイクはオービスに撮影されても捕まらない。そもそもオービスはバイクを取り締まるつもりがない。ただし警察にもメンツがあるか[…]
第1位:JW-145 タッチパネル対応 蓄熱インナーグローブ [おたふく手袋] 2024年11月現在、インナーウェアの売れ筋1位に輝いたのは、おたふく手袋が販売する「JW-145 蓄熱インナーグローブ[…]
新色×2に加え、継続色も一部変更 ホンダは、水冷4バルブの「eSP+」エンジンを搭載するアドベンチャースタイルの軽二輪スクーター「ADV160」に、スポーティ感のある「ミレニアムレッド」と上質感のある[…]
寒い時期のツーリング 冬はライダーにとって、本当に過酷な季節です。急激に気温が下がったりしてきましたが、オートバイに乗られているみなさんは、どういった寒さ対策をしていますか。 とにかく着込む、重ね着す[…]
最新の投稿記事(全体)
今シーズンに続き富樫虎太郎選手を起用、新加入は木村隆之介 元MotoGPライダーの中野真矢さんが率いるレーシングチーム「56RACING(56レーシング)」が、2025年のレース活動概要を発表した。 […]
全日本ST1000とASB1000の両カテゴリーを制す! 開幕2連勝を飾り、常にポイントリードし最終戦を待たずにチャンピオンを決めた全日本ST1000クラスに比べ、ARRC ASB1000クラスは、ポ[…]
一度掴んだ税金は離さない! というお役所論理は、もういいでしょう 12月20日に与党(自民党と公明党)が取りまとめた「令和7年度税制改正大綱」の「令和7年度税制改正大綱の基本的な考え」の3ページ目に「[…]
ヤマハの最先端技術の結晶、それがYZF-R1だ 今からちょうど10年前の2014年11月。イタリアはミラノで開催されたEICMAにおいて、7代目となるヤマハのフラッグシップ“YZF-R1”が華々しくデ[…]
場所によっては恒例行事なバイクの冬眠(長期保管) 「バイクの冬眠」…雪が多い地域の皆様にとっては、冬から春にかけて毎年恒例の行事かもしれませんね。また、雪国じゃなかったとしても、諸事情により長期間バイ[…]
- 1
- 2