
2024 FIM世界耐久選手権 “コカ·コーラ” 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第45回大会は、劇的なドラマを展開することなく粛々と進んだ。大記録が生まれるのは得てしてこういう時だ。記事の後半ではホンダ30勝の歴史と歴代ライダーの成績も取り上げてみたい。
●文:ヤングマシン編集部 ●写真:佐藤寿宏、箱崎太輔
4位までが従来の最多周回数記録を超えた決勝レース
密度の高い、緊張感のあるトップ争いだった。といっても激しいバトルになることはあまりなく、淡々とノーミス、ノートラブルで周回数を重ねていく。序盤のうちにトップに立ったチームHRCは最後までポジションを譲ることなくゴール。最終スティント前のピット作業に違反があったとして40秒のペナルティがあり、リザルトでは2位のYARTに7.86秒という僅差になったが、最後まで危なげなく走り切った。
これでチームHRCは3連覇、ホンダは8耐30勝目、そして高橋巧は8耐で6勝という大記録を打ち立てた。ヨハン・ザルコによる久々のモトGPライダー参戦も話題になり、期待に違わぬハイペースを刻んだ。ブリヂストン装着車としては17連覇だ。
ヨハン・ザルコ選手は表彰式で勝利のお約束、バックフリップを披露。
HRCの強さが際立ったものの、4位までが最多周回数記録を更新。2002年の219周はあるが、鈴鹿サーキットが現行レイアウトになってからは2016年の218周が最多だった。なんと従来の記録には今大会の7位までが並んでいる。
2位のYARTはこれまでも速さを見せていたものの、意外にも鈴鹿8耐では初表彰台。HRCと同じく220周を刻む堂々の走りだった。
そして3位に入ったヨシムラSERT Motulは、終盤にドゥカティチーム加賀山を逆転。速さが落ちなかったヨシムラの渥美心と、ダブルスティントで脱水症状を起こしてしまったチーム加賀山のハフィス・シャーリンが明暗を分けた格好だが、いずれも219周を記録した。
5位のBMW世界耐久チームは、トップ10トライアルや決勝序盤で見せ場を作りつつもトップ4の先行を許した。とはいえ従来の最多周回記録218周に並ぶ大健闘だ。同周回数には6位のホンダドリームRT桜井ホンダ、7位TOHOレーシングも名を連ねる。これらに続いたのがチームスズキCNチャレンジ(216周)、SDGチームハルクプロ(216周)、KM99(215周)だ。
全46チームが出走し、未完走は6チーム、レギュレーション違反による失格は3チームだった。
表彰台中央に立つのはヨハン・ザルコ、高橋巧、名越哲平のチームHRC。右端はヨシムラジャパンの加藤陽平監督で、創始者にして祖父母である吉村夫妻の写真を掲げた。
TOP5入りしたチーム
ホンダ・30勝の歴史
開催年 | マシン | ライダー1 | ライダー2 | ライダー3 | トピック |
1979 | CB900F | トニー:ハットン | マイク・コール | 1~8位を独占 | |
1981 | RS1000 | マイク・ボールドウィン | デヴィッド・アルダナ | モリワキZ1000でワイン・ガードナーが8耐デビュー。一時トップを走行 | |
1982 | CB900F | 飯嶋茂男 | 萩原紳治 | ||
1984 | RS750R | マイク・ボールドウィン | フレッド・マーケル | ||
1985 | RVF750 | ワイン・ガードナー | 徳野政樹 | ||
1986 | RVF750 | ワイン・ガードナー | ドミニク・サロン | ||
1989 | RVF750 | ドミニク・サロン | アレックス・ビエラ | ||
1991 | RVF750 | ワイン・ガードナー | マイケル・ドゥーハン | ||
1992 | RVF750 | ワイン・ガードナー | ダリル・ビーティー | ||
1994 | RC45 | ダグ・ポーレン | アーロン・スライト | ||
1995 | RC45 | アーロン・スライト | 岡田忠之 | ||
1997 | RC45 | 伊藤真一 | 宇川徹 | ||
1998 | RC45 | 伊藤真一 | 宇川徹 | ||
1999 | RC45 | 岡田忠之 | アレックス・バロス | ||
2000 | VTR1000 SPW | 宇川徹 | 加藤大治郎 | ||
2001 | VTR1000 SPW | バレンティーノ・ロッシ | コーリン・エドワーズ | 鎌田学 | |
2002 | VTR1000 SPW | 加藤大治郎 | コーリン・エドワーズ | 6回ピット作戦で旧コースレイアウト最多周回数の2019周を記録 | |
2003 | VTR1000 SPW | 鎌田学 | 生見友希雄 | ||
2004 | CBR1000RRW | 宇川徹 | 井筒仁康 | ||
2005 | CBR1000RRW | 清成龍一 | 宇川徹 | ||
2006 | CBR1000RRW | 辻村猛 | 伊藤真一 | ホンダが10連覇を記録 | |
2008 | CBR1000RRW | 清成龍一 | カルロス・チェカ | ||
2010 | CBR1000RRW | 清成龍一 | 高橋巧 | 中上貴晶 | |
2011 | CBR1000RRW | 秋吉耕佑 | 伊藤真一 | 清成龍一 | |
2012 | CBR1000RRW | ジョナサン・レイ | 秋吉耕佑 | 岡田忠之 | |
2013 | CBR1000RRW | 高橋巧 | マイケル・ファン・デル・マーク | レオン・ハスラム | |
2014 | CBR1000RRW | 高橋巧 | マイケル・ファン・デル・マーク | レオン・ハスラム | |
2022 | CBR1000RR-R SP | 高橋巧 | 長島哲太 | イケル・レクオナ | |
2023 | CBR1000RR-R SP | 高橋巧 | 長島哲太 | シャヴィ・ヴィエルゲ | |
2024 | CBR1000RR-R SP | 高橋巧 | ヨハン・ザルコ | 名越哲平 | 220周を記録 |
各メーカーのこれまでの勝利数
ホンダ | 30勝 |
ヤマハ | 8勝 |
スズキ | 5勝 |
カワサキ | 2勝 |
3勝以上を挙げたライダーたち
高橋巧 | 6勝 |
宇川徹 | 5勝 |
ワイン・ガードナー | 4勝 |
伊藤真一 | 4勝 |
清成龍一 | 4勝 |
マイケル・ファン・デル・マーク | 4勝 |
中須賀克行 | 4勝 |
アーロン・スライト | 3勝 |
加藤大治郎 | 3勝 |
コーリン・エドワーズ | 3勝 |
マイク・ボールドウィン | 3勝 |
岡田忠之 | 3勝 |
アレックス・ロウズ | 3勝 |
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