
「すり抜け運転中に、助手席のドアが急に開いたのに驚いて転倒した」「駐車車両を避けようとしたら、急に運転席のドアが開いてぶつかった」 このように開いたクルマのドアとぶつかる“ドア開放事故”は、ライダーなら誰もが遭遇する可能性がある事故です。では、開いたクルマのドアとバイクがぶつかった場合、どちらの責任が問われるのでしょうか?
●文:ヤングマシン編集部(ピーコックブルー)
ドア開放事故の基本過失割合は“バイク10:クルマ90”
交通事故が起きた際の責任分担については、過去の判例を基にした“基本過失割合”が事故ごとに定められており、バイク対クルマのドア開放事故の基本過失割合は、バイク10:クルマ90となっています。
道路交通法第71条4の3で定められているとおり、クルマの運転者にはドアの開放によって交通の危険を生じさせないよう措置を講じる義務があります。そのため同乗者を含む後方確認を怠ったドア開放は、運転者の安全運転義務違反です。
しかし、バイク側もドアに衝突するような事故を起こせば、前方不注意として同じく安全運転義務違反に問われます。
ただしクルマとバイクの事故では、バイクの方が大きな損害を受ける可能性が高いことから、過失割合は一般的にバイクのほうが低くなる傾向にあります。
バイク対クルマのドア開放事故の過失割合は、バイク10:クルマ90を基本として、クルマ側の合図の有無/バイク側の速度超過などの事故状況が加味され、最終的な決定がなされます。多くの場合、バイク30:クルマ70〜バイク0:クルマ100となるようです。
つまり、過失割合だけをみれば“ドア開放事故はクルマの方が悪い”ということになります。
こうしたドア開放事故は、交通事故全体からみれば多くはありませんが、自転車や歩行者との事故までを含めると、年間2000件以上も起こっています。
また、交通事故総合分析センターが2014年に調査した結果では、ドア開放事故の相手は67%が自転車、19%がバイクとなっており、全体の90%近くを自転車/バイクが占めるとのこと。
そのうち、自転車の場合はドアへの衝突割合が左右でほぼ均等であるのに対し、バイクの場合は左ドアへの衝突割合が自転車に比べて4倍も高くなっていることがわかっています。
つまり、バイクのドア開放事故の多くが“すり抜け運転中”に起こっていると言えるでしょう。
すり抜け運転の是非は問いませんが、すり抜け運転が事故のリスクを引き上げることは事実です。
なお、多くのバイク対クルマのドア開放事故は、10〜20km/hの速度で起こっていることから、低速走行であっても急に開くクルマのドアを確実に回避するのは難しいと言わざるをえません。
もちろん、駐車しているクルマの右側を通る際にも十分な注意が必要になります。実際、急に開いたドアにぶつかって転倒したり、回避しようとして対向車にはみ出して重症を負ったりする事例もあります。
ドア開放事故はバイク側で積極的に回避しよう
バイク側がドア開放事故を回避するには、クルマの側方を通る際は常に“ドアが開くかもしれない”と意識して運転するのが基本。
具体的な対策としては、横方向の車間を十分に確保し、車間が確保できなければ徐行しましょう。無理な追い越しはせず、安全が確保できるまで待つことも大切です。すり抜け運転は、身体とバイクを大切に思うのであれば控えるのが賢明です。
また状況によっては、さらなる注意を働かせる必要があります。
タクシーなどの送迎車両/トラックやバンなどの運送車両のほか、乗用車の場合は、とくに助手席と後席のドアに注意を払う必要があります。
なお、運転席のドアは、免許を保有しているドライバーが操作するため安全確認する割合が高いのに対し、助手席や後席ドアを開けるのは道路交通法をよく知っている人物とは限りません。
冒頭で述べたとおり、クルマの運転者は同乗者の乗り降りに関しての責任も負いますが、最終的に後方の安全を確認するかどうかは同乗者次第です。
その同乗者は、運転免許を持っていない子ども/老人かもしれません。またクルマには死角が多く、接近するバイクを見落とす可能性が高いうえ、風が強い日はドアが急に大きく開く恐れもあります。
ドア開放事故に際してはクルマの方が過失割合は大きくなりますが、以上のようにクルマ側のみに安全措置を徹底させるのには無理があります。
ドア開放事故回避のためには、バイク側で積極的に注意するよう努めることが大切です。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(交通/社会問題)
歩行者が消える?超危険な「蒸発現象」による事故を防ぐ方法 2024年10月、岡山県内の道路である現象が原因となる交通事故が起きました。横断歩道を渡っていた高齢の女性をクルマがはねた、という事故です。ク[…]
対策意識の希薄化に警鐘を鳴らしたい 24年前、当時、編集長をしていたBiG MACHINE誌で「盗難対策」の大特集をしました。 この特集号をきっかけに盗難対策が大きな課題に そして、この大盗難特集号は[…]
意外と複雑な一方通行の表示 一方通行規制のおもな目的は、車両の相互通行による複雑で危険な交通状況を単純化し、交通の安全と円滑を図ることにある。とくに、道幅が狭く、歩行者や自転車の通行が多い住宅地や繁華[…]
[1] 7年目の高校生講習も秩父地域からスタート 埼玉県内を6地域に分けて全8回で開催される「令和7年度 高校生の自動二輪車等の安全運転講習」が2025年も始まった。 第1回目の講習会は、6月15日に[…]
レーダーでの速度取締の現場 赤切符と青切符の違いとは? 冬から春にかけては卒業や就職をひかえて新たに運転免許を取得する人が増えてくる時期です。自動車学校・教習所で習ったとおりの運転を心がけているつもり[…]
人気記事ランキング(全体)
ミニカーとは何かがわかると登録変更のハードルもわかる まず「ミニカー」とは、法律上どのような乗り物として扱われるのか、基本的な定義から押さえておく必要がある。実はこれ、道路交通法上では「普通自動車」扱[…]
昭和レトロの世界が広がる神奈川県『中古タイヤ市場 相模原店』 昭和の夏休みって、どんなでしたっけ? 朝はラジオ体操に行って、午前10時頃からは仮面ライダーやウルトラマンの再放送。昼は学校や地域のプール[…]
2025年6月16日に83歳になったアゴスティーニのスペシャル仕様 MVアグスタは欧州で、同ブランドが2025年で創立80周年を迎えるとともに、Agoことジャコモ・アゴスティーニ氏が83歳の誕生日を迎[…]
ガレージで眠っているマシンを引っ張りだそう! 今後の展開も期待されるポテンシャルの高さが魅力 コンストラクターの手によるオリジナルフレームを用いたシングル&ツインレースが流行した1990年代、オーヴァ[…]
初心者からベテランまで、老若男女だれもが一日中楽しめる オフロードバイクさえあれば、初心者だろうとベテランだろうと、老若男女だれもが一日中楽しめるフリーライドイベントとして企画されたのがエンジョイライ[…]
最新の投稿記事(全体)
冷たさが最大16時間続く、ピーコックの持ち運べる氷のう 炎天下の休憩で火照った体を一気にクールダウンさせたい。そんな時におすすめしたいのがピーコックの「アイスパックシリーズ」だ。 アイスパックは、創業[…]
初心者向けの溶接機は? 「初心者ですが、溶接機は何を買えばいいでしょうか?」そんな質問をいただくことが、最近増えています。折れたステーの修理から始まり、フレーム補強やスイングアーム自作、極めつけがフレ[…]
8月上旬発売:Kabuto「AEROBLADE-6 ADACT」 軽量コンパクトなフルフェイスヘルメットで、99%の紫外線と74%赤外線を軽減する「UV&IRカットシールド」を装備する。これによってヘ[…]
カワサキZ1系:1973~1978 1973 900super4 (Z1) 初期型となる’73年型。北米向けは橙×茶の「火の玉」のみだが、欧州仕様は黄×緑の通称 「イエローボール」も設定。長いリヤフェ[…]
FLHRロードキング[2002年式] ハーレーダビッドソンが1999年に満を持してリリースしたツインカムエンジン。従来(エボリューション)までのワンカム構造を改め、カムシャフトを2本配置。伝統のOHV[…]