
現在、世界で生産されるバイクは年間6000万台程度と言われ、そのうち日本メーカーのホンダが2000万台を生産している。長きにわたって世界ナンバーワンのメーカーであり続けているホンダのバイク、乗ったらどんな感じなの?
●文:ヤングマシン編集部
1948年創業、1958年にスーパーカブが誕生し、その後は誰もが知る世界一のメーカーに
2023年に創業75周年を迎えた本田技研工業は、1949年にフレームからすべて自社製の本格的なオートバイ、ドリームD型を発売し、1952年には自転車に赤い補助エンジンを後付けできるカブ号F型で一気に国内販売網を広げた。そして1958年、のちにシリーズ累計1億台を生産するスーパーカブの初代、スーパーカブC100が誕生する。
1954年には「レースで世界に打って出る」と宣言し、1959年には実際にマン島TT初出場、1961年6月のマン島TTでは125cc・250ccクラスでともに1位から5位を独占するという華々しい成果を残し、のちにグランプリの覇者へ。四輪のF1でも同様に華々しい成績を残している。
レースで世界一を極めたホンダは、同時に市販するバイクでも世界一を目指し、実現していく。前述のスーパーカブ、そして1969年登場のCB750フォア、1980年代~1990年代にはNSR250Rなど2ストローク車でも覇権を握ったが、基本的には4ストロークマシンで長く活躍しているメーカーだ。
NRの楕円ピストン、片持ちスイングアーム(プロアーム)、MotoGPマシンのシームレストランスミッションなど、新技術の開発・採用でも常に先陣を切ってきた。
そんなホンダのバイク、昔から“優等生”と例えられることが多く、「よく出来ているけどつまらない」といった論調もチラホラ。出木杉君ならではの言いがかりとも取れるが、じっさいどうなのだろうか?
というわけで、ホンダのバイクに乗って感じることを選んでみた。下記のほかにももっとある! というご意見もあるだろうが、ここでは公道におけるホンダ車の印象を5つに集約してみたい。
1.扱いやすくて素直
ホンダのどのバイクに乗っても、たとえば交差点の曲がり方や発進~停止など、誰もが扱いやすくて素直なキャラクターを持っている。曲がりたい方向を見れば素直に曲がっていくし、スロットルやブレーキも反応が安定していて信頼できる。難しく考えなくても違和感なく操縦できて、期待を裏切らないと言える。
また、気温や湿度といった要素が変わっても同じ素直さを保ってくれるので、いつも安心して同じように扱うことができるはず。定期的なメンテナンスさえ怠らなければ、経年による変化も出にくい傾向だ。
CBR650R
2.頑固!
スロットル操作やクラッチ操作、そしてギヤチェンジ、ブレーキと、いつどんなときに乗っても同じように反応してくれる。低速域から高速域まで、「こう反応するだろうな」という予想からズレることがほとんどなく、またライディングフォームを多少変えたりしても挙動はあまり変わらない。
ゆえに、ライダーの気分に合わせて反応が変わっていくのが面白さでもあるY社などの製品に比べると、素直でまっすぐな性格のバイクに乗り手が合わせなければならないような気がしてしまう場面も。これは元々ホンダ車に乗っている方だとあまり感じないかもしれないが、Y社やK社から乗り換えるとその傾向が強めに感じられるだろう。項目1とは表裏一体という感じだ。
3.燃費がいい
ライバルメーカーの努力もあって、車種やカテゴリーによってはそれほどアドバンテージがない部分もあるが、スーパーカブ系は燃料1Lあたり60~70km以上走ることもザラ。GB350も35km/Lを割ることはあまりない。高効率を極めたエンジン設計や制御のたまものだ。
スーパーカブC125
4.信頼性が高い
経年による性能やフィーリングの低下が少なく、故障も少ない。そんなイメージはシリーズ累計1億台以上も売れたカブ系や、1990年代の高コストが許容された時代につくられた面はあるものの、現代においてもやはり品質の安定性や経年劣化の少なさはそれぞれのカテゴリーの中で確固たる地位を築いている。
5.ホンダって凄ぇ……
素直さや頑固さ、信頼性の高さなど、ここまでに挙げたそれぞれの特徴は、言ってみれば『安定していて、意に反した変化が少ない』ということを違った角度から捉えたもの。これを素っ気ないと感じることもあれば、安心できると感じることもある。ライダーの好みにもよるし、どんなメーカーのバイクから乗り換えたかによっても違った感じ方になるだろう。
とはいえ、ホンダ製品の安定性についてはやっぱり凄いと言わざるを得ないことが多い。
たとえば遠くで丸一日の仕事を終えて、長距離をバイク自走で帰らなければならないといった場面。
ある一定以上の時間を走り続けると、ホンダ車の素っ気なさや頑固さが突如として絶大な信頼感に変わる瞬間がある。この傾向は、パワーに余裕のない小さめの排気量のバイクほど顕著に感じられる。
ライダーが疲れていても、気温が高くても低くても、雨が降っていても、ずっと安定して同じ反応を返し続けてくれることの凄みに気づかされるのだ。
CL250
まとめ
編集部でさまざまなメーカーのバイクを比較試乗するとき、○○は面白い、△△は尖ってる、××は快適などといったコメントが出たりするが、ホンダに対しては結論としてエモーショナルな表現よりも「凄ぇ……」となることが少なくない。
性能や挙動の安定性ゆえに優等生に見え、それをつまらないと思う向きもあるかもしれないが、時間をかけて試乗してみると、優等生的なキャラクターの裏では細かな部分まで意識して設計しているんだろうなとか、きっとあらゆる状況を想定してテストしているんだろうな、といったものが垣間見えてくる。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
RVF400参戦でV4パフォーマンスに優れたハンドリングと闘えるトラクションが加味され最強に! ホンダのV型4気筒戦略がスタートしたのは1982年。 VF750系に続いてVF400系も加わり、当初は高[…]
「走る」を変える次世代の相棒 一般的なガソリンバイクが燃料を燃焼させてエンジンを駆動するのに対し、電動バイクはバッテリーに充電した電気でモーターを回して走行する。そのため、排気ガスを一切排出しない、環[…]
ピカイチの快適性を誇り、タンデムユースも無理ナシ ようやく全日本JーGP3の開幕戦が近づいてきて(記事制作時)、最近はバイクに乗るトレーニングもスタート。 筋力が増えたことで、これまで苦手だった車種で[…]
メーカーメイドのカフェレーサー ’74年末から発売が始まったCB400フォア、通称ヨンフォアは、’60~’70年代に世界中でブームとなった、カフェレーサーを抜きにして語れないモデルである。カフェレーサ[…]
コスパも高い! 新型「CUV e:」が“シティコミューターの新常識”になる可能性 最初にぶっちゃけて言わせてもらうと、筆者(北岡)は“EV”全般に対して懐疑的なところがある者です。カーボンニュートラル[…]
最新の関連記事(新型ビジネス/レジャー/ファンバイク)
嬉しい、楽しい、大好きダックス! ちょっとHondaのバイクに詳しい人なら知っていることかもしれませんが、じつは「ダックス」のペットネームを持ったバイクがはじめて誕生したのは、半世紀以上も前の1969[…]
“次”が存在するのは確実! それが何かが問題だ 2018年に発売されたモンキー125以来、スーパーカブC125、CT125ハンターカブ、そしてダックス125と、立て続けにスマッシュヒットを飛ばしている[…]
エンジン積み替えで規制対応!? なら水冷縦型しかないっ! 2023年末にタイで、続く年明け以降にはベトナムやフィリピンでも発表された、ヤマハの新型モデル「PG-1」。日本にも一部で並行輸入されたりした[…]
カバーじゃない! 鉄製12Lタンクを搭載 おぉっ! モンキー125をベースにした「ゴリラ125」って多くのユーザーが欲しがってたヤツじゃん! タイの特派員より送られてきた画像には、まごうことなきゴリラ[…]
カフェだけじゃないバイク乗りのための空間 神奈川県座間市にある「ライダーズベース・リバティ」は、レンタルできる洗車場やピットなどを完備し、バイク用品やバイク本体(!)まで購入できるライダーズカフェだ。[…]
人気記事ランキング(全体)
ミニカーとは何かがわかると登録変更のハードルもわかる まず「ミニカー」とは、法律上どのような乗り物として扱われるのか、基本的な定義から押さえておく必要がある。実はこれ、道路交通法上では「普通自動車」扱[…]
昭和レトロの世界が広がる神奈川県『中古タイヤ市場 相模原店』 昭和の夏休みって、どんなでしたっけ? 朝はラジオ体操に行って、午前10時頃からは仮面ライダーやウルトラマンの再放送。昼は学校や地域のプール[…]
2025年6月16日に83歳になったアゴスティーニのスペシャル仕様 MVアグスタは欧州で、同ブランドが2025年で創立80周年を迎えるとともに、Agoことジャコモ・アゴスティーニ氏が83歳の誕生日を迎[…]
ガレージで眠っているマシンを引っ張りだそう! 今後の展開も期待されるポテンシャルの高さが魅力 コンストラクターの手によるオリジナルフレームを用いたシングル&ツインレースが流行した1990年代、オーヴァ[…]
初心者からベテランまで、老若男女だれもが一日中楽しめる オフロードバイクさえあれば、初心者だろうとベテランだろうと、老若男女だれもが一日中楽しめるフリーライドイベントとして企画されたのがエンジョイライ[…]
最新の投稿記事(全体)
冷たさが最大16時間続く、ピーコックの持ち運べる氷のう 炎天下の休憩で火照った体を一気にクールダウンさせたい。そんな時におすすめしたいのがピーコックの「アイスパックシリーズ」だ。 アイスパックは、創業[…]
初心者向けの溶接機は? 「初心者ですが、溶接機は何を買えばいいでしょうか?」そんな質問をいただくことが、最近増えています。折れたステーの修理から始まり、フレーム補強やスイングアーム自作、極めつけがフレ[…]
8月上旬発売:Kabuto「AEROBLADE-6 ADACT」 軽量コンパクトなフルフェイスヘルメットで、99%の紫外線と74%赤外線を軽減する「UV&IRカットシールド」を装備する。これによってヘ[…]
カワサキZ1系:1973~1978 1973 900super4 (Z1) 初期型となる’73年型。北米向けは橙×茶の「火の玉」のみだが、欧州仕様は黄×緑の通称 「イエローボール」も設定。長いリヤフェ[…]
FLHRロードキング[2002年式] ハーレーダビッドソンが1999年に満を持してリリースしたツインカムエンジン。従来(エボリューション)までのワンカム構造を改め、カムシャフトを2本配置。伝統のOHV[…]
- 1
- 2