
写真を撮影したのはモビリティリゾートもてぎ内のホンダコレクションホールなので、メインとなるのはホンダ。ただし当連載では他メーカーも含めて、現代の視点で、1980年代以前に生まれた旧車の素性を振り返ってみたい。なお、展示内容はリニューアル前のものだ。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●外部リンク:ホンダコレクションホール
2ストパラツインと4ストVツインの戦い
前任となるRD250の最高出力/乾燥重量が30ps/152kgだったのに対して、RZ250は35ps/139kgという数値を公称。1980年発売。
既存のRDシリーズから劇的な進化を遂げる形で、1980年に登場した2ストパラレルツインのヤマハRZ250(と兄弟車の350)が、2輪の歴史を語るうえで欠かせない名車であることに、異論を述べる人はいないだろう。何と言ってもRZは、1970年代末に消えかかっていた2ストロードスポーツの火を再燃させ、以後の2ストレーサーレプリカブームの基盤を作ったモデルなのだから。
VT250Fの最高出力/乾燥重量は35ps/149kg。この数値をどう感じるかは人それぞれだが、前任のスーパーホークが26ps/173kgという事実を考えれば、劇的な進化だった。初代モデルは1982年6月発売から実質7か月で3万台以上売れ、マイナーチェンジ後はさらに販売台数を伸ばし、1985年にはシリーズ累計10万台達成記念モデルも限定発売された。
では現役時代のRZ250と熾烈なバトルを繰り広げたライバル車、1982年にホンダが発売した4ストVツインのVT250Fが、世間で同等の評価を得ているのかと言うと……。それはなかなか微妙なところで、昨今ではVTシリーズに対して、エントリーユーザー向け、バイク便御用達、などという印象を抱いている人が多い気がする。
VT250Fの前後ホイールはホンダ独自のコムスターで、フロントは当時の流行だった16インチ。インボード式ブレーキディスクは、CBX400Fから継承したメカニズム。
ただし筆者としては、VT250FにはRZ250と互角、見方によってはRZ250以上の革新性が備わっていたと感じているのだ。と言うより、1980年代初頭をリアルタイムで体験したライダーなら、現在の2台の評価の差に疑問を感じているんじゃないだろうか。いずれにしても以下に記す各車の特徴を読めば、VT250Fの資質がRZ250に負けず劣らずだったことが理解していただけるはずだ。
各車各様の姿勢でレーサーの技術を転用
水冷化が図られても、RZ250が搭載する2ストパラレルツインのボア×ストロークは前任のRD250と同じ54×54mm。吸気はピストンリードバルブ式で、排気デバイスは装備しない。
まずはRZ250の特徴を記すと、筆頭に挙がるのは市販レーサーTZ250から継承したエンジンの水冷機構とモノクロス式リアサスペンション。とはいえ、パワーユニットの振動を緩和するオーソゴナルマウント、後端を跳ね上げたチャンバー、ヘッドパイプとスイングアームピボットを直線的に結ぶことを意識したフレーム、一体感を重視した外装部品、火炎をイメージしたキャストホイールなども、当時としては革新的な要素だったのである。
1973年から発売が始まったTZ250は、当初から水冷パラレルツインを搭載。モノクロス式リアサスペンションの採用は1976年から。写真は1979年型。 ※写真:ヤマハ発動機
もちろん革新的という意味では、VT250Fもまったく負けてはいなかった。ビキニカウル、フロント16インチ、ブーメランコムスターホイール、インボード式ブレーキディスク、リンク式リアサスペンション、RZ250以上にヘッドパイプとスイングアームピボットを直線的に結んだフレームなど、見どころ満載だったのである。ただしやっぱり、このモデルの最大の注目要素はエンジンだろう。既存の日本製4スト250ccが空冷並列2気筒か単気筒の二択だったのに対して、VT250FはGPレーサーNRの技術を転用した、水冷Vツインを搭載していたのだから。
現代の視点で考えても、VT250Fが搭載する水冷90度Vツインは、250ccクラスでは貴重なエンジン。初代で35psだった最高出力は、1984年型で40ps、1986年型で43psに向上。
1980年代初頭の250ccの基準で考えるなら、水冷Vツインというだけで十分に革新的だったものの、現代の視点でVT250Fを見て感心するのは、Vバンク間=中央吸気・前後排気+ダウンドラフト式キャブレターを採用したこと。そういった構成は、同時代のホンダVFシリーズやヤマハXZ400/500なども同様で、ハーレーダビッドソンは大昔から中央吸気・前後排気が定番だったけれど、VT250Fのエンジンからは“4ストで2ストを打ち負かす‼”という、ホンダの気概がビンビン伝わって来たのだ。
1979年から世界GP500への参戦を開始した4ストV4のNR。楕円ピストンや8バルブはさておき、この車両のエンジンを縦方向に半分にするという発想が、VT250Fの原点だった。
どちらも2輪の歴史を語るうえで欠かせない名車
RZ250のメーターはオーソドックスな構成だが、回転計のレッドゾーンはRD250より10000rpm高い9000rpmから。ハンドルはバー式。
もっとも前述したように、近年の2台に対する世間の見方には大きな差が存在する。VT250Fの評価があまり高くない理由は、シリーズ全体で考えると生産期間が非常に長かったため、希少性を感じづらいから……だろうか。あるいは、エンジン特性がピーキーなRZ250とは異なり、初心者でも気軽に乗れるフレンドリーなキャラクターだったことも、マニア心をくすぐらない原因かもしれない。
VT250Fのタコメーターのレッドゾーンは、当時の250ccとしては驚異的な12500rpmから。ハンドルはセパレート式で、クラッチは油圧式。
とはいえ改めて歴史を振り返ると、VT250Fを筆頭とするVTシリーズは、4ストVツインならではの世界が堪能できる貴重な250ccだったのだ。そして初代の動力性能がRZ250とほとんど互角だったこと、1982~1985年に圧倒的な強さでクラストップの販売台数を記録したこと、時代の要求に応じて変化を遂げながら35年に渡って販売が続いたこと(RZは後継のRZ-RとR1-Zを含めても約20年)などを考えると、やっぱり筆者としては、VT250FはRZ250に勝るとも劣らない魅力を備えた、2輪の歴史を語るうえで欠かせない名車だと思うのである。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
300km/h時代を拓いた怪鳥の誕生 1997年にキャブレター式のバイクで世界最速と言われたCBR1100XX Super Blackbird(以下、XX)がデビューしました。カワサキZZR-1100[…]
世代交代の象徴となったロッシの優勝 ヴァレンティーノ・ロッシが17歳という若さで、初めてWGPにデビューしたのが1996年のこと。アプリリアのファクトリーライダーとして前述のRS125Rでフル参戦。マ[…]
世界初、独自機構を貫いたキャブレター式ターボの誕生 1981年の東京モーターショーに、XJ650をベースとしたターボ車が出展された。会場には電子制御式フューエルインジェクションとキャブレターの2種類が[…]
80年代ターボブームを駆け抜けた近未来フォルムと先進装備 XN85は、空冷4気筒エンジンを搭載する「GS650G」をベースにスズキが作り上げたターボチャージャー搭載モデルである。当時の日本ではターボ車[…]
世界初にして国産唯一の市販ロータリーバイク、スズキ「RE-5」の誕生 ロータリーエンジンは、ドイツの発明家フェリクス・ヴァンケル氏が考案した、おむすび型のローター(ピストン)が回転して動力を生み出す方[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
300km/h時代を拓いた怪鳥の誕生 1997年にキャブレター式のバイクで世界最速と言われたCBR1100XX Super Blackbird(以下、XX)がデビューしました。カワサキZZR-1100[…]
コスパも高い! 新型『CUV e: 』が“シティコミューターの新常識”になる可能性 最初にぶっちゃけて言わせてもらうと、筆者の私(北岡)は『EV』全般に対して懐疑的なところがある人です。カーボンニュー[…]
全クラス制覇から常勝への軌跡 創業者の本田宗一郎が1954年にマン島TTレースに出場宣言。59年に125クラスに初参戦し、6位・7位・8位に入る快挙を成し遂げ、ここから世界GPに本格参戦。なんと196[…]
スーパーカブC125特別仕様車がタイで登場 タイのホンダ系列プレミアムブランド「CUB House」から、上質なカラーリングとレザーシートをまとった特別仕様車「スーパーカブC125 “ザ・クラフティ・[…]
GB350を初体験 今回一緒に走るのはミクさん。2人でバイクを交代しながら千葉県の手賀沼周辺を走っていただきます。胡桃さん、これまでスポーツバイクが興味の中心だったのでGB350とGB350 Sをマジ[…]
人気記事ランキング(全体)
サビて固着したネジやナメて外せなくなったネジを簡単に外せる デイトナから発売されている「バイク用ショックドライバーセット(品番:95392)」は、錆びついて固着したボルトや、ネジ緩み止め剤が塗布された[…]
ワークマン最大のカジュアルショップがイオンモール川口に誕生!! Workman Colors(ワークマンカラーズ)はワークマンが展開する多数のウエアやグッズのなかで、従来のメイン商材だった作業着(ワー[…]
ダカールラリー直系の設計思想!ファクトリービルドで誕生した本格ラリーマシン 世界で最も過酷なラリーレイドであるダカールラリーにおいて、数々の金字塔を打ち立ててきたKTM。これまで多くのプライベーターや[…]
R1のDNAとYCC-Tを凝縮。クラス最軽量149kgを掲げたYZF-R2の全貌 インドで世界初公開されたヤマハの新型YZF-R2は、急成長を続ける200ccプレミアムスーパースポーツセグメントに向け[…]
免許不要の四輪特定小型原付サンエンペラー「エルバード」の安定性と利便性 2023年7月の道路交通法改正によって誕生した「特定小型原動機付自転車」は、16歳以上であれば運転免許不要で公道を走行できる新た[…]
最新の投稿記事(全体)
北海道をともに走ったBMW F 450 GS 今回お借りしたのは、「GS Trophy」グレード。クラッチレバーの操作を必要としないERC(Easy Ride Clutch)が標準装備されていることも[…]
欧州での人気を背景により本格的なオフロードモデルに進化 2025年にフルモデルチェンジを行ったキャバレロラリー500最大のトピックは、従来モデルから大幅な見直しが図られた車体構成にある。これまでのラリ[…]
本棚の奥にガレージ出現!?「遊べる本屋」の真骨頂 雑多に積み上げられた書籍、POPの毒のある言葉、そしてサブカルチャーの濃密な空気感。「遊べる本屋」の代名詞を持つヴィレッジヴァンガードは、行くたびに新[…]
従来の2気筒から新設計3気筒へ!劇的進化を遂げた新型「Ryker」 BRPジャパンが国内に展開するカンナムシリーズの中で、よりカジュアルに3輪アドベンチャーを楽しめるモデルとして支持されてきた「Ryk[…]
ザガートの名がつくだけで売れ行きがまったく違う とにかく、アストンマーチンが100周年にかけた情熱はすさまじいもので、DBS GTザガートとDB4 GT ザガートのセット販売をはじめ、ハイパーカーと呼[…]
- 1
- 2







































