BMWジャパンは、空油冷水平対向エンジンを搭載するヘリテイジシリーズ『R nineT』の後継モデルとなる、クラシックロードスター『R12 nineT』と、クラシッククルーザー『R12』の2モデルを発表した。日本への導入時期や車両価格などは未定だ。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛)
第2世代となったBMWヘリテイジは世界初のテレスコ採用モデルがモチーフ
BMWヘリテイジシリーズとして登場した『R nineT』は、BMW創業90周年に合わせて登場したモデルで、それまでRシリーズに搭載してきた1170cc空油冷水平対向2気筒エンジンを受け継ぐヨーロピアンネオクラシックだ。車名の「nineT」は、日本人には字面だとわかりにくいが、周年である「90(ninety)」が由来で、2013年の登場時にはアメリカのカスタムビルダー『ローランドサンズ』が、1973年登場の『R90S』をモチーフとしたカスタムコンプリートモデルも発表したことで話題となった。
このたび発表された『R12 nineT』と『R12』は、それから10年、BMW創業100周年となる今年発表となった。R nineTのボクサーエンジンを受け継ぎつつ、新設計のスチールチューブラーブリッジフレームにより重量を軽減。よりクラシカルな外観を作り上げている。
往年の『/5シリーズ(スラッシュファイブ)』をイメージさせる新設計のアルミ製燃料タンク『トースタータンク』は、従来よりも後端部を30mm短縮したことで、ライダーの乗車位置を前方へと移動させ、荷重配分を最適化した。
いっぽう、R12の燃料タンクはスチール製で、クルーザースタイルにマッチするティアドロップ型としている。
これらの変更に合わせるように、エアクリーナーボックスはシート下に水平に配置された。
伝統のドライブシャフトは車体右側、サイレンサーは左側としたスタイルは従来モデル同様だが、エキゾーストパイプからは排気フラップが撤去された。触媒コンバーターはサイレンサー直前に設置されたフロントサイレンサーに格納される。
電子制御デバイスは、リーン対応のABSプロ、DTC(トラクションコントロール)を装備する。ライディングモードは、R12 nineTでは「レイン」、「ロード」、「ダイナミック」の3種、R12は「ロール」、「ロック」の2種を標準装備する。名称は異なっているが、ロールはロード、ロックはダイナミックのような特性で、これはR18同様、アメリカンクルーザーというキャラクターに合わせたネーミングだ。さらにR12には、強いエンジンブレーキを軽減して後輪のスリップなどを抑えるエンジンドラッグコントロールも備わる。また、キーレスライドも標準装備だ。
なお、ABSプロ、DTC、エンジンドラッグコントロールは、それぞれのライディングモードに合わせて適切な設定へと自動変更される。
アップ/ダウン対応のクイックシフターであるシフトアシスタントプロ、坂道発進を容易にする昼スタートコントロールプロは、工場オプションとして用意される。(※日本仕様は未定)
メーターは円形の指針式が標準装備(R12 nineTはギアポジションとライディングモード表示機能付き速度計と回転計の2個、R12はギアポジションとライディングモード表示機能付き速度計のみ)となるが、工場オプションでコンパクトな横長長方形の3.5インチフルカラー液晶ディスプレイ(コネクト機能付き)を装着可能となるほか、R12の回転計はディーラーオプションとして用意される。
灯火器類はすべてLEDで、コーナリングで車体のバンク角に合わせて照射範囲を変化させるアダプティブヘッドライトプロは工場オプションで装着可能だ。
「R12」と「R12 nineT」の仕様はどう違う?
R12 nineTとR12の違いは、前述したようヨーロピアンスポーツとアメリカンスポーツだ。R12 nineTが前後17インチホイールを装着するのに対し、R12はフロント19インチ、リア16インチホイールを装着する。フロントフォークはどちらも45mm径倒立だが、R12 nineTはフルアジャスタブルでストローク量は120mm、R12は90mmとしている。
トラベル量はリアサスペンションも同数値で、従来型よりもレイダウンして装着されるモノショックは、R12 nineTではやはりフルアジャスタブルタイプとなる。
R12 nineT、R12ともに純正アクセサリーとして豊富なオプションパーツが揃っており、『オプション719』、『シャドウ』などテーマに合わせたカスタムパーツがセットされる。もちろんこれらは個別に購入することも可能だ。
R12 nineTとR12の車名は、BMWが1935年に発売した『R12』に由来する。このバイクはBMWが発明したテレスコピック式フォークを世界で初めて採用したことで有名だ(テレスコは同年発売のR17にも採用)。しかしBMWがユニークなのは、みずからが発明したテレスコピックフォークにこだわることなく、サイドカー全盛期である50~60年代にはアールズフォーク(BMWの発明ではない)採用モデルを生産し、’93年のR1100シリーズ以降はテレレバー、’05年のK1200シリーズからはデュオレバーと、数々の独創的なフロントサスペンションを開発し、採用し続けていることだ。
R12 nineTとR12は、BMWの伝統であるボクサーエンジン+シャフトドライブ、そしてテレスコピックフォークを受け継ぐという意味では、テレレバーを採用するR1250/R1300シリーズよりも正統派BMWといえる。だからこそヘリテイジなのだ。
’23年11月現在、R12 nineTとR12の国内導入時期、装備内容、車両価格は未定だが、続報が入り次第お伝えする。
BMW R12 nineT
主要諸元■全長2130 全幅870 全高― 軸距1511 シート高795(各mm) 車重220kg■空油冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ 1170cc 109ps/7000rpm 11.7kg-m/6500rpm 変速機6段 燃料タンク容量16L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:未定 ●色:黒、緑、銀 ●発売日:未発表
BMW R12
主要諸元■全長2200 全幅830 全高― 軸距1520 シート高754(各mm) 車重227kg■空油冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ 1170cc 95ps/6500rpm 11.2kg-m/6000rpm 変速機6段 燃料タンク容量14L■タイヤサイズF=100/90-19 R=150/80-16 ●価格:未定 ●色:黒、赤、銀 ●発売日:未発表
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(新型ヘリテイジ/ネオクラシック)
新鮮なボディカラーに加えホイール色も刷新 スズキがSV650Xの新色を発表した。ボディカラーは新たに「パールテックホワイト」を採用し、ブラックのフレームにブルーのホイールを組み合わせる。価格は、SV6[…]
1990~2000年代に栄えた『ビッグネイキッド』の末裔 巨大な4気筒エンジンを積み、威風堂々の体躯から想像するよりもスポーティな走りを披露するのがCB1300シリーズの持ち味。その源流は、1992年[…]
タンクのカラーは“Benny Yellow Special” マットモーターサイクルズジャパンは、軽二輪ロードスターの「GT-SR 250」をベースとした特別仕様車「BENNYʼS.LTD.×JAPA[…]
水平ゴールドラインのニューカラーが2色展開しSEも同時発表、半年後には50周年車! カワサキは2021年8月にZ900RS/カフェの2022年モデルを発表。Z900RSには1975年型Z1Bで採用され[…]
R750スタイルでフレンドリーなサイズ感と価格を実現したX350に新色 1970年代初頭から40年以上にわたってフラットトラックレースで活躍してきた伝説のマシン XR750をオマージュした「X350」[…]
最新の関連記事(BMWモトラッド)
時期が合えば水仙と桜の共演も 日本の三大水仙群生地と呼ばれているのが、福井県の越前海岸と、兵庫県の淡路島、そして千葉県の南房総:鋸南町である。鋸南町の水仙は12月中旬から1月下旬が見頃で、2025年も[…]
年間6000台が目前に! BMW Motorradは、2024年の新規登録台数が2010年7月の統計開始以来、史上最高を記録。BMW Motorradの登録台数は250cc市場で5,986台(対前年比[…]
BMWモトラッドにおけるヘリテイジカテゴリーとは BMWモトラッドには、Sport/M/Tour/Roadster/Heritage/Adventure/Urban Mobilityの7つのカテゴリー[…]
スズキからBMWのファクトリー車へ オートレース宇部Racing Teamは、BMW M1000RRのファクトリーマシンを入手し、浦本修充選手を擁して2025年のJSB1000に参戦すると発表した。ス[…]
モトラッドミツオカグループを牽引してきた老舗ディーラー 2010年にバイク業界へ新規参入して以来、近畿東海地方に14年間で6店舗のBMWモトラッドディーラーを展開してきたモトラッドミツオカ。その最初の[…]
人気記事ランキング(全体)
私は冬用グローブを使うときにインナーグローブを併用しています。防寒目的もありますし、冬用グローブを清潔に保つ目的もあります。最近、長年使い続けたインナーグローブが破れてしまったこともあり、新品にしよう[…]
アクセルワイヤーが長すぎた!というトラブル ハンドルを交換して長さが合わなくなってしまったり、はたまたケーブルそのものが痛んでしまったり。こうしたアクセルワイヤー(スロットルケーブル)を交換する際、「[…]
白バイ隊員はバイクバカ⁉ 白バイに乗りたい、白バイ隊員になりたい、と白バイ隊員を目指す警察官のなかでバイクに関心のない人はいないと言い切っていいかと思います。少なくとも私が知るなかではひとりもいません[…]
2018 カワサキ ニンジャ400:250と共通設計としたことでツアラーから変貌(2018年8月30日公開記事より) 2018年型でフルモデルチェンジを敢行した際、従来の650共通ではなく250共通設[…]
高回転のバルブ往復にスプリングが追従できないとバルブがピストンに衝突してエンジンを壊すので、赤いゾーンまで回すのは絶対に厳禁! 回転計(タコメーター)の高回転域に表示されるレッドゾーン、赤くなっている[…]
最新の投稿記事(全体)
グローバルサイトでは「e-アドレス」「アドレス125」と表記! スズキが新型バッテリーEV(BEV)スクーター「e-ACCESS(e-アクセス)」、新型スクーター「ACCESS(アクセス)」、バイオエ[…]
従来は縦2連だったメーターが横2連配置に ヤマハは、2004年に欧州で誕生し、2017年より日本を含むアジア市場へ(250として)導入されたスポーツスクーター「XMAX」の2025年モデルを欧州および[…]
時期が合えば水仙と桜の共演も 日本の三大水仙群生地と呼ばれているのが、福井県の越前海岸と、兵庫県の淡路島、そして千葉県の南房総:鋸南町である。鋸南町の水仙は12月中旬から1月下旬が見頃で、2025年も[…]
しっかりとした防寒対策をすれば冬ならではの魅力が楽しめる! じっとしているだけでも寒い季節…さらに走行風を浴びるバイクって何が楽しいの? と思われる方も多いかもしれません。たしかに寒さの感じ方は、人そ[…]
TRIJYA(トライジャ):カフェレーサースタイルのX500 パンアメリカやナイトスターなど水冷ハーレーのカスタムにも力を入れているトライジャ。以前の記事では同社のX350カスタム車を掲載したが、今回[…]
- 1
- 2