
MVアグスタは、1943年に誕生した記念すべき最初のエンジン・98cc単気筒モデルから80年後にあたる今日、「MV98」を彷彿とさせるワインレッドでスーパーヴェローチェをドレスアップし、限定モデルとして300台を生産すると発表した。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
生産して数週間後に活動停止、終戦直後までお蔵入りになった原初のモーターサイクルをオマージュ
MVアグスタは本国イタリアで「スーパーヴェローチェ98」を発表した。世界300台限定モデルで、MVアグスタが1943年に生み出した最初の98cc単気筒エンジンを搭載した「MV98」をオマージュしたものだ。
戦時下にあった1940年代、イタリアの人々の手軽な移動を可能とするモーターサイクルに目を向けたドメニコ・アグスタは、1927年に父ジョヴァンニの死後に受け継いだ家業であるジョヴァンニ・アグスタ飛行機向上と従業員の将来を保証するため、モーターサイクルの生産を決意したという。
そうして1943年に誕生したのが、冒頭でも触れた98cc単気筒エンジンで、潤滑式2速ギヤボックスを搭載した軽量コンパクトなモデルはすぐに生産へと移された。しかし、わずか数週間後の1943年9月、工場が占領されたために全ての活動を停止。プロジェクトは終戦直後までお蔵入りとなった。
終戦後に組み立てが再開されたMV 98は、特徴的なワインレッド(ロッソ・ヴェルゲーラ)に彩られ、戦後の沈鬱なイタリアの公道に明るさを添える存在として親しまれた。このカラーが選ばれた理由は、ジョヴァンニ・アグスタの貴族のルーツに息子が敬意を表したのか、単なるひらめきか、個人的な好みだったのかはわからない。
時を一気に飛ばして2023年、MV98の誕生から80年後になる今日、ロッソ・ヴェルゲーラのカラーリングは新しい限定生産モデル「スーパーヴェローチェ98 エディツィオーネ リミタータ(Superveloce 98 Edizione Limitata=限定エディション)」を彩ることになった。オリジナルカラーをイメージした塗料は、CRC(Cagiva Reserch Center)で開発されたもので、2液タイプの塗料を使ったマットなベースからメタリック顔料に輝きを与えるポリッシュ層のフィニッシュまで手作業で何層にも分けて塗られている。
MV98(手前)、スーパーヴェローチェ98(奥)
「98 Edizione Limitata」のロゴはテールカウルの横と上面配置され、その脇にはイタリア国旗が飾られる。トップブリッジにもレーザーで「98」の文字が刻印される。ゴールド仕上げのスポークホイール、ブレンボ製PR 16/19ラジアルマスターシリンダーやM4.30スタイルマ・フロントキャリパー、コンチネンタルMK100 ABSなど全ての装備が一級品だ。
この車両には、専用に製作したレーシングキット(サーキット専用アロー・トリプルエキゾースト、レーシングECU)のほか、テールカバー、専用バイクカバーが付属している。
今のところ日本への導入は未定とされ、導入が決定した場合でもレーシングキットは提供できない可能性があるという。吉報を待ちたい。
スーパーヴェローチェ98 限定エディション のスペック
| 車名 | SUPERVELOCE 98 EDIZIONE LIMITATA |
| 全長×全幅×全高 | 2015×760×──mm |
| 軸距 | 1380mm |
| 最低地上高 | 120mm |
| シート高 | 830mm |
| 乾燥重量 | 173kg〈165kg〉 |
| エンジン型式 | 水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ |
| 総排気量 | 798cc |
| 内径×行程 | 92.0×81.4mm |
| 圧縮比 | 13.3:1 |
| 最高出力 | 147ps/13000rpm〈153ps/13250rpm〉 |
| 最大トルク | 8.98kg-m/10100rpm |
| 最高速度 | 240km/h |
| 加速性能 | 0-100km/h=3.05秒/0-200km/h=9.0秒 |
| 始動方式 | セルフスターター |
| 変速機 | 6段リターン |
| 燃料タンク容量 | 16.5L |
| タイヤサイズ前 | 120/70ZR17 |
| タイヤサイズ後 | 180/55ZR17 |
| ブレーキ前 | φ320mmダブルディスク+4ポットキャリパー |
| ブレーキ後 | φ220mmディスク+2ポットキャリパー |
| 価格&発売時期 | 未発表 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(MVアグスタ)
3気筒と変わらない幅を実現した5気筒エンジンは単体重量60kg未満! MVアグスタはEICMAでいくつかの2026年モデルを発表したが、何の予告もなく新型5気筒エンジンを電撃発表した。その名も「クアド[…]
F1の英雄アイルトン・セナとドゥカティから続く熱い絆 セナとバイクのつながりが最初に報道されたのは、おそらく1990年のことでしょう。当時、ドゥカティのオーナーだったクラウディオ・カスティリオーニが8[…]
2025年6月16日に83歳になったアゴスティーニのスペシャル仕様 MVアグスタは欧州で、同ブランドが2025年で創立80周年を迎えるとともに、Agoことジャコモ・アゴスティーニ氏が83歳の誕生日を迎[…]
MVアグスタ(イタリア、ヴァレーゼ)は2025年1月31日、サルダロフ家が経営するアート オブ モビリティがMVアグスタの完全な経営権を取り戻し、正式にKTMから分離することを発表した。 KTMを経営[…]
998cc・並列4気筒のスーパーヴェローチェ1000セリエオロ爆誕!! MVアグスタ スーパーヴェローチェシリーズの最新作、208psを発揮する998cc並列4気筒エンジン搭載の「Superveloc[…]
最新の関連記事(記念モデル/限定モデル)
大型ウイングレット装備とともに戦闘力を向上! カワサキは欧州と北米で「ニンジャZX-10R」シリーズの2026年モデルを発表。サーキットパフォーマンスと公道での実用性を両立するスーパースポーツがさらな[…]
TMAX生誕25周年! 特別装備満載の記念モデルが登場! ヤマハは、”オートマチックスポーツコミューター”という独自のジャンルを築き上げた「TMAX」の誕生25周年を記念し、特別仕様車「TMAX560[…]
ライダー本人のサイン入り限定ヘルメットも附属 ホンダUKが発表した「CBR1000RR-RファイアーブレードSP ディーン・ハリソン レプリカ」は、2025年のマン島TT・スーパーストッククラスでディ[…]
F1の英雄アイルトン・セナとドゥカティから続く熱い絆 セナとバイクのつながりが最初に報道されたのは、おそらく1990年のことでしょう。当時、ドゥカティのオーナーだったクラウディオ・カスティリオーニが8[…]
左右で違うイラストが楽しめる! ホンダは、サンリオの人気キャラクター「クロミ」ちゃんのかわいらしいデザインを施したモンキー125用の純正アクセサリー「“Honda × Kuromi” モンキー125用[…]
人気記事ランキング(全体)
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
[A] 前後左右のピッチングの動きを最小限に抑えられるからです たしかに最新のスーパースポーツは、エンジン下から斜め横へサイレンサーが顔を出すスタイルが主流になっていますよネ。 20年ほど前はシートカ[…]
主流のワンウェイタイプ作業失敗時の課題 結束バンドには、繰り返し使える「リピートタイ」も存在するが、市場では一度締め込むと外すことができない「ワンウェイ(使い捨て)」タイプが主流だ。ワンウェイタイプは[…]
通勤からツーリング、サーキット走行まで使えるカウル付き軽二輪スポーツ 日本の道に最適といえるサイズ感や、通勤/通学からツーリングまで使える万能さが軽二輪(126~250cc)の長所。スクーターやレジャ[…]
400で初のV4でもホンダ・ファンは躊躇なく殺到! 1982年12月にリリースされたVF400Fは、このクラスでは12,500rpmの未経験な超高回転域と0-400mを13.1secという俊足ぶりもさ[…]
最新の投稿記事(全体)
発熱により脚全体の冷えを抑えやすい構造 「EK-113」は、車両の12V電源を利用する電熱インナーで、太ももや腰まわりなど冷えやすい部分を効率よく温める設計だ。冬の走行中は下半身の冷えが疲労に直結しや[…]
丸山浩直伝! ホンダCB1000Fの嗜み やっぱりCBはストリート=公道のヒーローだった。 まず何が素晴らしかったかと言えば、低速域におけるトルク感とかあのドロドロっとした大排気量直4CBならではのフ[…]
「マスダンパー」って知ってる? バイクに乗っていると、エンジンや路面から細かい振動がハンドルやステップに伝わってきます。その振動を“重り”の力で抑え込むパーツが、いわゆるマスダンパー(mass dam[…]
油圧ディスクブレーキだけど、“油(オイル)”じゃない いまや原付のスクーターからビッグバイクまで、ブレーキ(少なくともフロントブレーキ)はすべて油圧式ディスクブレーキを装備している。 厳密な構造はとも[…]
USB給電で発熱を活かせる構造と使いやすさ EK-304はUSBモバイルバッテリーから給電することで発熱し、首元を温められる仕様だ。走行中に冷えやすい首周りをケアすることで、体全体の冷えを抑えやすくな[…]



































