
間もなく台風シーズンが本格化する。台風が直撃しているときにバイクに乗らないほうがいいのはもちろんご存じだと思いますが、小降りになってきたからと油断してはいけない。注意すべきは雨だけじゃないのだ。
●文:ヤングマシン編集部
一定のレベルを超えると風の危険度は一気に増す
バイクの面白さのひとつは、夏の暑さや冬の寒さを直に肌で感じながら走ること。必ずしも快適なばなりではないが、それゆえに非日常感や自然の中に生きている実感が得られやすい。
とはいうものの、雨風は度を超すと大敵になる。
もちろん雨天走行は危険をともない、路面の滑りやすさや視界の悪さに注意を払う必要がある。そして道路が冠水していれば、バイクはクルマよりも足元の見えない障害物によってバランスを崩す可能性が高くなり、転倒のリスクも増す乗り物だ。
とはいえ、小降りならば注意しながら走行することでリスクを最小限に抑えることもできるし、大雨はわかりやすく危険なので雨宿りの判断もしやすい。
ところが、風は見えにくい危険をはらんでいる。
強風であおられて車線1本分ズレたとか、トラックに追い越されたときにふらついてしまったといったことは多くのライダーが経験していることだろう。だが、そこで深く考えたこともないという方も少なくないのでは。
バイクにとって危険なのは横風で、風速5m/sくらいならまあそれほど気にしなくても対処できるが、風速二桁m/sになるとけっこうドキドキすることになる。東京湾アクアラインが通行規制される基準はおおよそ風速20m/sと言われるが、これに近い状況になるとかなりの緊張感があり、車種によっては危険なので走行しないほうがいいレベルになっていく。
そして、瞬間風速は平均風速の約1.5倍になると言われている。
想像してみてほしい。風速約27.8m/を時速に直すと100km/hになり、それが横からぶつかってくるのだ。
バイクは重量があるほど風の影響を受けにくくなると言われるが、風を受ける部分の位置や形状でも大きく左右される。例えば大型のトップケースを装着していると、重心から離れた高い所にある広い面積の物体が横に押され、バランスを崩す方向に強い力が働くのだ。普段は便利な装備でも、強い横風が吹く状況では注意が必要になる。
さて、台風である。台風の場合は大気の流れが大きく入り乱れるため、瞬間風速は平均風速の2倍以上にも達することがあるという。つまり、平均風速が20m/sだとすると40m/s以上になる可能性があり、140km/h以上の横風がぶち当たってくることになるのだ。
そうなるともう人力で対抗するのはきわめて難しく、ひたすら耐えながら運に身を任せることになってしまう。
それでもバイクを運転してしまう人が出てくるのには、台風特有の『強弱』が油断を招くからだろう。雨が強まったり弱まったり、また風も吹いたり吹かなかったりする。それが見掛け上、たいしたことないように錯覚させてしまうのだ。うっかり高速道路を走ったりしようものなら、途中から風雨が強まったりしてにっちもさっちもいかなくなり、運が悪ければ転倒事故につながっていく。
いくらか状況がいいように見えても慎重に判断してほしい。
雨は(冠水さえなければ)速度を落とすことでなんとかやり過ごせる可能性が高いが、風は突発的に危険な状況を生むことがある。台風が近付いたらバイクを運転することは絶対にしないよう、肝に銘じたい。
軽量かつトップケース装着のバイクは横風の影響をより受けやすい。台風のとき、TVで配達中に身動きが取れなくなったライダーの映像が流れることもあるが、そんな日に配達に行かせようとする会社かどうかはブラック体質を見抜くひとつのヒントになるかもしれない。
屋外にバイクを置いておく時にも応用可能
台風の影響を少しでも減らすためには、バイクを置いておくときにも上記のような考え方が応用できる。
ようは風を受けやすいバイクカバーやトップケースなどを外しておくわけだ。あとは可能な限り建物や壁に近づけ、ギヤを1速に入れる。バイクカバーを外すのに抵抗があるなら、ひもなどでぐるぐる巻きにしてカバーがバタつかないようにしておくといいだろう。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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