
今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は言わずとしれた名車、カワサキのZ1について、このマシンに精通するバイクショップ・GPクラフトの田畑革氏に話を伺った。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●取材協力:GPクラフト
【GPクラフト:田畑革氏】’51年生まれで71歳の田畑氏は、空冷Zの現役時代を知っているものの、このシリーズに本格的に力を入れるようになったのは’90年代初頭以降。GPクラフトを創設してからの約10年間は、年に数回のペースでアメリカに出かけ、車両とパーツの輸入を行っていた。
カワサキ 900スーパー4 Z1:Z1乗りの”夢”を実現するGPクラフト
空冷Zシリーズを得意とするショップでは、ノーマルスタイルを重視したり、往年のAMAスーパーバイクレーサーが念頭にあったり、現代的な足まわりを推奨したりと、何らかの主張を感じることが少なくない。そして取材当日のGPクラフトに入庫していた空冷Zシリーズは、ノーマルか当時風カスタム…という雰囲気の車両が多かったものの、仕様は千差万別だった。
「ウチのモットーはお客さんの夢を実現することですから、こういう方向性でなくては、というこだわりは特にないんですよ(笑)。最近はほとんどやっていませんが、排気量を1100cc以上に拡大し、前後17インチのハイグリップタイヤを履くフルカスタムも、過去に何台か製作したことがあります」
実際に調子が悪い空冷Zを所有するオーナーから修理の相談を受けたら、同店ではどんな対応をするのだろう。
「まずは目視で各部を点検して、次にエンジンをかけて音を聞いて、その後は可能であれば試乗をします。そこからどんな整備を行うかは、車両のコンディションやお客さんの予算によりけりですが、どの車両でも私が重視するのはブレーキ。フロント用のマスターシリンダーとキャリパーは、たいていの個体で内部の摩耗が進んでいるので、シール類を交換しても、本来の性能は回復できません。だからウチでは新品への交換が定番になっていますし、品質の高さを考えて、ディスクはサンスターを推奨しています」
GPクラフトの充実設備
旧車専門店では、旋盤/フライス盤/溶接機/研磨機/サンドブラストマシンなどを目にすることが珍しくないけれど、GPクラフトにはそれらに加えて、さまざまな機械/設備が存在する。
「ウチの設備の一番の自慢は、やっぱり油圧を用いて歪みや曲がりを解消するフレーム修正機です。ただしこの機械は作業者のスキルが問われるので、導入にあたっては相当な勉強が必要でした」
カワサキ 900スーパー4 Z1:整備を行う順序は車両の状況や予算次第
点検によって問題が発覚した場合は、どういう順序で修理を行うのだろう。
「それも、車両のコンディションとお客さんの予算次第です。もちろん予算に余裕があるなら、すべての問題をイッキに解決するのが理想的ですが、なかなかそうは行きませんからね。例えばシリンダーヘッドをOHするとなったら、バルブとガイドはすべて新品にしたいところですが、予算的に厳しい場合は両方、あるいはガイドを再利用して、シートカットとステムシールの交換のみを行うことがあります」
当記事を読んで空冷Zシリーズを購入しようという人がいたら、田畑さんはどんなアドバイスをするのだろうか。
「ウチに来て修理中の車両を見ていただくのが一番ですが(笑)、他店やネットオークションなどで購入する場合は、機械的な問題はなかなか判断しづらいので、現時点で動いている車両を選ぶのがいいと思います。逆に言うなら、長い間動かしていなかった車両は、乗り始めてからいろいろな問題が起こりやすいんですよ。また、中古車の購入時には誰もが“掘り出しモノ”を探したくなりますが、もはや空冷Zシリーズの掘り出しモノは存在しないので、世間の相場より価格が安い場合は、それ相応の問題があると考えたほうがいいでしょう」
ちなみに、空冷Zに興味津々でも、特定のモデルにこだわりがないお客さんに対して、田畑さんがオススメすることが多いのは’77~’78年型Z1000。その主な理由は、シリーズで最も重いクランクシャフトを主因とする低速トルクの太さと、Z1000Mk IIほどではなくても、Z1よりは安定性が高いシャシーだが、Z1やMk IIより中古車価格が安いことも、もちろんZ1000ならではの魅力である。
【ノーマルとは別物に進化したZ750GP】GPクラフトが製作したZ750GPカスタムは、ワイセコφ69mmピストンを用いて排気量を738→810ccに拡大。キャブレターはケーヒンCR29、排気系はKERKER。足まわりパーツの多くはゼファー750用だが、前後キャリパーはブレンボで、リヤショックはオーリンズを選択している。
【取材協力:GPクラフト】部品販売を主業務としていたGパーツを発展させる形で、’90年代初頭に創業したGPクラフトは、’70~’80年代前半の日本製並列4気筒車を得意とするメンテナンス&カスタムショップ。最も取り扱いが多い機種はカワサキ空冷Zシリーズだが、ホンダCBシリーズやスズキGS/GSX系の入庫も少なくない。●住所:埼玉県川越市小仙波1000-1 ●電話:049-227-0008
※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
ホンダを完全に打ち負かすべし【カワサキ Z1 900 スーパー4】 ホンダCB750フォアは世界を驚かせた怪物だった。最も驚いたのはカワサキの技術陣だったろう。同社が水面下で開発していたN600は75[…]
ホンダを完全に打ち負かすべし【カワサキ Z1 900 スーパー4】 ホンダCB750フォアは世界を驚かせた怪物だった。最も驚いたのはカワサキの技術陣だったろう。同社が水面下で開発していたN600は75[…]
角Zの代名詞【カワサキZ1000Mk.II】 Z1000をベースに、さらに改良を加えたのがZ1000Mk.II。大きく変わった点は外観だ。丸みのあるZ1000とは異なった、力強い角型デザインこそがMk[…]
3速でウイリーした "ジャジャ馬" 戦前からBMWやベンツの航空機エンジンをライセンス生産していた川崎重工業は、その間に蓄積してきた高い技術力を活かし、戦後になるとこれを民間事業に振り向けて2輪事業に[…]
GP技術をフィードバックしたZ-GP【カワサキ Z1100GP[Z1100-B1]】 H1、H2RやZのレースでの実績に加えて、カワサキは世界GP250ccクラスの'78〜'81年連続チャンピオンを獲[…]
人気記事ランキング(全体)
いざという時に役に立つ小ネタ「結束バンドの外し方」 こんにちは! DIY道楽テツです。今回はすっごい「小ネタ」ですが、知っていれば間違いなくアナタの人生で救いをもたらす(大げさ?)な豆知識でございます[…]
V3の全開サウンドを鈴鹿で聞きたいっ! ここ数年で最も興奮した。少なくともヤングマシン編集部はそうだった。ホンダが昨秋のミラノショーで発表した「電動過給機付きV型3気筒エンジン」である。 V3だけでも[…]
1978 ホンダCBX 誕生の背景 多気筒化によるエンジンの高出力化は、1960年代の世界GPでホンダが実証していた。多気筒化によりエンジンストロークをショートストトークにでき、さらに1気筒当たりの動[…]
ファイナルエディションは初代風カラーでSP=白×赤、STD=黒を展開 「新しい時代にふさわしいホンダのロードスポーツ」を具現化し、本当に自分たちが乗りたいバイクをつくる――。そんな思いから発足した「プ[…]
ガソリン価格が過去最高値に迫るのに補助金は…… ガソリン代の高騰が止まりません。 全国平均ガソリン価格が1Lあたり170円以上になった場合に、1Lあたり5円を上限にして燃料元売り業者に補助金が支給され[…]
最新の記事
- 「カワサキ初のレーサーレプリカ」ライムグリーンカラーを導入した初の大排気量車:カワサキZ1000R【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 変化を一気見! カワサキ「Z900RS」歴代カラー大図鑑【2018~2025年モデル】
- 2025MotoGPヘルメット勢力図は5社がトップを分け合う戦国時代へ突入! 日本の3メーカーに躍進の予感!?
- 【SCOOP!】スズキ「GSX-8」系にネオクラが存在か!? 丸目のGS&クーリーレプリカ復活希望!!
- 「初の100ps超え!! 」全面改革で進化した第二世代のZ:カワサキZ1000J【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 1
- 2