主に北米向けに販売されているカワサキのオフロード4輪車「テリックス/ミュール」。12月から日本でも発売されることになり、販売を担うカワサキモータースジャパンがメディア向けの試乗会を開催した。サイドバイサイドなどとも通称されるこのジャンル、日本人にはほとんど馴染みがない乗り物だが…乗ってみたらコレがスゴかった!!
●文:ヤングマシン編集部(マツ) ●写真:カワサキモータースジャパン/編集部
なんだコレ!! 2輪とも4輪とも異なる乗り味
ごめんなさい。ナメてました…。
12月から国内導入されることになった、カワサキのオフロード4輪である(詳細は以前の記事で紹介しているのでご参照を)。モトクロッサー的なスポーティさを持つテリックスはともかく、ちょっと立派なゴルフカートというか、見るからに仕事道具然としたミュールに対しては「軽トラみたいなモンでしょ」と高をくくっていたのだ(ホントにすみません)。
試乗会場は愛知県のさなげアドベンチャーフィールド。4輪のオフロードコースで、当然ながら路面は大小さまざまなデコボコが存在し、かつ荒れまくっている。こんなトコを4輪で走り回ったら、路面からガッツンガッツン突き上げられてユッサユッサ揺さぶられ、さぞや不快なんだろうな…。
しかし、ミュールにそんな心配は全くの無用だった。とにかくサスペンションの動きが凄いのだ。デコボコした路面に対し、ヌルヌルというかヒタヒタというか、ベッタリと舐めるかのようにタイヤを追従させ、乗員にはほとんど衝撃を伝えない。突き上げるような底付き感なんか皆無だ。路面が左右に大きく傾いても同様で、ミュールは片方のサスペンションをギュッと沈め、もう片方をグイーンと大きく伸ばして、何食わぬ顔で水平状態を保ち続ける。
つまり、その外観からは想像できないほどミュールは乗り心地が快適なのだ。身体を支えるためのグリップは装備されるが、そこを握る必要性をあまり感じさせないし、後席の乗員なら悪路走行中でも居眠りできるのでは? と思うほど居心地がいい。勝手に軽トラ的な乗り物だろうと想像していたが、あっちは路面のデコボコを忠実に拾い、特に空荷だと跳ね回るように走っていく。まったくの正反対だった。
岩がゴツゴツ露出するような悪路を走ってみれば、路面からのキックバックでハンドルが取られたりしないことにも驚かされたし、歩くのすら難儀する登り坂をワシワシ登れる登坂能力も凄まじい。販売の95%は北米市場だというが、なんだか自分が強くなったかのような、この能力拡張感は確かにアメリカ人が好むだろうなという感じがする。
そんな乗り味はスポーティなテリックス系も共通なのだが、イメージリーダーたるKRX1000はよりぶっ飛んでいる。前472mm/後536mmという長大なホイールトラベル(ミュールの倍以上!)やFOX製のぶっといショックユニット、タイヤのトーイン変化を極力抑えたというサスペンションなどで、大きな岩が露出した斜面すらガンガン登ってしまうのだ。今回のテストコースくらいの悪路なら“楽勝”らしく、状況にもよるが、45°くらいの勾配は登れる能力を持つという。余談ながら2WDモードならテールスライドさせて遊ぶのも簡単だ。
かなりダイレクトに伝わってくるエンジンの音や振動など、パワートレーンの洗練度では乗用車には敵わないから、全体的に見ると上質とか高級といった感じではない。しかし、その乗り味はSUVやクロカンといった4輪車とは明確に異なっていて(もちろんバイクとも違う)、類似するものを挙げるのが難しい。こんな乗り物が世の中に存在していたとは!
楽しい&スゴいから、日本の人にも知って欲しい!
「カワサキのオフロード4輪は、機械として非常に優れた、とても素晴らしい乗り物です。“こんなところも走れるの!?”と驚かされる、ものすごい走破性を有しています。この能力をぜひとも日本のお客様にも体験して欲しいんです」。そう語るのは販売元・カワサキモータースジャパンの桐野英子社長。彼女も、初めて乗ったときにその能力の高さに驚かされたのだという。
今回、国内に導入される2機種のうち、ミュール系は牧場や農場などで使われる優れたワークツールだが、テリックス系は完全な趣味の乗り物で、アメリカではこれをトレーラーに載せてオフロードまで牽引して行き、皆でワイワイ乗り回して遊ぶのだという。楽しみ方としてはモトクロッサーに近いものと考えていいらしく、そのため、ホイールトラベルや最高出力といったスペックで競合車に勝ることが、販売面ではかなり重要というのも興味深い。
とはいえ、日本での知名度はほぼゼロなうえ、一部の特殊需要を除けばナンバーも取得できない。少なくとも導入当初からバンバン売れることはないだろう。何より桐野社長自身が“日本で何万台も売れるなどとは考えていない”と語る。それでも日本に導入するのは「カワサキにはこんな面白い乗り物があることを知って頂きたいんです。しかも最近のモデルは速いし!」という、乗り物好き(&速いヤツが好き)な桐野社長のこだわりなのだ。
それでも、ポラリスやBRP(カンナム)などの海外製サイドバイサイドはそれなりの台数が日本に輸入されているそうで、ある程度の勝算は立っている模様。導入初年度の2022年は8つの拠点(現状では建機関連のディーラーが多いという)で40台というスモールスタートを掲げており、その後、需要を開拓しながら2023年は12拠点/120台、2024年度以降は20拠点/200台という数字を目指していくという。
日本での販売にあたり、アメリカではオプションとなるシートベルトを標準装備とし、日本語のクイック操作ガイドを添付するなど安全面や使い勝手にも配慮する。販売先には個人や業務用のほかに、スキー場やオフロードコースなどのレジャー施設、さらには官公庁や災害救助などの特殊需要も想定。製造はアメリカのリンカーン工場などで行われる輸入車となる。
■テリックスKRX1000
■ミュールPRO-FXT EPS
“ガチ”過ぎないテリックスもラインナップ!
〈動画〉テリックスKRXが岩の激坂を登り降り!
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