HSR九州のイベントレース「鉄馬(てつうま)」で開催されたGB350のワンメイクレース。ライダーの夢を叶える真のコンストラクター・モリワキエンジニアリングは、一般公募ライダーの金子美寿々さんとともに参戦した。本記事ではその経緯を振り返りつつ、5月1日に行われたレース当日の模様をお届けする。
●文:ヤングマシン編集部(伊藤康司) ●写真:高島秀吉 ●取材協力:モリワキエンジニアリング
夢こそモリワキの原動力。イベントレース”鉄馬”で恩返し
「鉄馬(てつうま)」は、HSR九州で開催される、鉄フレームのバイクによるイベントレース。Z系はもちろんハーレーやツイン、シングルまで、回を増すごとにクラスも拡大している。そんな鉄馬に、モリワキは’20年からZ900RSで参戦。これはコロナ禍で減少したレースやミーティングに対し、モリワキファンやZ900RSユーザーとの交流を増やすことが目的だった。
そのモリワキに、HSR九州および鉄馬事務局から、2輪レースの門戸拡大を目指したGB350ワンメークレース開催の連絡があった。この参戦要請を快諾したモリワキだが、しかしZ900RSでライダーを務めた副社長の森脇尚護さんは、鈴鹿8耐で総合3位の実績を持つ国際ライセンス保持者。入門クラスのレースに参戦することはできない。すると社内から、ライダーを一般公募する「GB350プロジェクト」のアイディアが挙がった。そして今年の元旦、WEBヤングマシンにてライダー募集を掲載し、プロジェクトが始動したのだ。
「モリワキのレーシングライダーになりたい」という熱意があれば、誰でも応募可能という前代未聞の試みだが、その根底には「モリワキが長くレース活動を続けるために支えてもらったファンや協力会社への恩返し」と、色々な人にモータースポーツを楽しんでもらいたいという想いがある。
そして参戦するからには、入門レースとはいえ自社開発の本格マシンを用意し、ライダーを育て、万全にサポートする。これが「夢」を原動力に戦い続けてきたモリワキの流儀なのだ。
ライダーを育てるのもコンストラクターの責務
「“モリワキのチューニングは、エンジンを速くすることじゃなくて、人間のチューニングだ”と、メカニックの方から聞きました」と金子さん。
鈴鹿ツインサーキットでの練習や、HSR九州で鉄馬レースウィークに入ってからのスポーツ走行でも、少しでも乗りにくく感じる部分があると、すぐに調整してくれる。するとスロットルをより早く開けられるようになり、タイムが向上する。モリワキの技術力の高さはもちろん、メカニックの言葉を正しく理解してスキルを上げる金子さんのライダーとしての成長が凄い。
「レースでは後ろの子(追走する岸野選手)が攻めざるを得ないほど、金子さんがペースを上げられたのが良かった。最高の結果でとにかく嬉しい。相手はマシンもライダーも速いのがパッと見てわかったので“ヤバいな”って。予想外だったけど嬉しい展開です」と、この企画の推進者だった尚護さん。モリワキのGB350プロジェクトは見事に完遂されたといって良いだろう。
「鉄馬やテイストオブツクバは、コンストラクターやショップが楽しんでレースをしている。そこにモータースポーツの原点があると思うし、この盛り上がりを大事にしたい」。尚護さんの言葉に、モリワキの意思が見えた。
モリワキエンジニアリング森脇尚護さん「サーキットを楽しむことを今後も後押ししたい」
好バトルを展開、見事優勝!
レースは他クラスとの混走。予選は#3の岸野選手に0.096秒差で後れを取った金子さん。そして迎えた決勝もスタートは岸野選手に先行されて離されるが、金子さんは着実に間を詰めていく(本人的にはかなり焦って必死に追いかけたという)。ブレーキングで頑張りつつ、4周目の左高速コーナーで岸野選手を見事にアウトからパス。その後は岸野選手の猛追に屈せずバトルを展開して会場を沸かせた。
終盤に#3岸野選手が転倒するも、追われる金子さんは気づかず、ミスせず走ることに専念してクラストップでチェッカー! 見事、夢の表彰台に立つこととなった。ちなみに予選の1分21秒390から、決勝ラストで1分20秒954のベストラップを叩き出した。
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