
「このバイクって、どこが良いの?」バイク好きなら一度は口にしているであろうこのセリフ。そんな疑問に一発回答! 日夜ニューモデルに触れまくっているヤングマシン編集部が、取材で得た裏話も交えて注目モデルの魅力のキモをピンポイントで伝えます。今回は、現行国産車では唯一、ユーロ5規制をクリアしている空冷大排気量車・カワサキW800系/メグロK3だ。
●文:ヤングマシン編集部(マツ) ●写真:真弓悟史
乗るだけで癒やされる希少な国産大型車
往年のW1シリーズのヘリテイジを受け継ぐネオクラシックモデル。‘99年にW650として誕生し、その後、細かな改良を加えながら販売が続けられるカワサキの良心だ。‘20年にはW1系の基となったメグロブランドを55年振りに復活させたバリエーションモデル「メグロK3」も登場している。
このバイク、興味のない人は本当に興味がない(笑)。旧車好きにすれば軟派に見えるのだろうし、当然ながらサーキットを速く走れるわけでもない(実用上のスピード/パワーは十分だが)。実は現在47歳の筆者も以前はそんな一人だったのだが、アラフォーに差し掛かった頃から見方が変わってきた。乗った瞬間に癒やされるというか、ものすご~くホッとさせられるのだ。こういうバイクは実はとても少なくて、特に現行の国産大型車ではオンリーワンと言える希少な存在だ。
その最大の特徴はエンジンだろう。2つのシリンダーが交互に等間隔で爆発する360°クランク(これも今や希少で、並列2気筒の国産大型車では他にTMAXのみ)を採用する空冷バーチカルツインは、擬音にすると「ヴォワーッ」と言った感じで一本調子に吹け上がる。Vツインや、いまやパラツインの主流となった270°クランク車のような「ドコドコ」「ダカダカ」といった、メリハリの効いた脈動感は薄いため、正直に言って分かりやすい刺激には欠ける。
しかし、このフィーリングが何とも穏やかでライダーを急かさないのだ。重たそうなクランクシャフトがゴロゴロ回っているような雰囲気も楽しいし、アクセルに対する反応が鋭すぎないのもいい。右手の操作にピピッと反応するバイクは、街乗りやツーリングでは疲労に繋がりやすいが、W800は多少操作が雑になっても、それを許容してくれるかのようなおおらかさがあるのだ。結果、長距離でも淡々と走り続けられるし、乗り手にさほどヤル気がなくても、ほどほどに街乗りやツーリングを楽しめてしまう。
背景にあるのはカワサキの実力と魅力
この「重たそうなクランク」や「穏やかな反応」は、いわゆる旧車のエンジンフィーリングにも通じるものなのだが、W800はそういった味を残しながらも、快適性を損なうような振動はしっかり抑制するなど、旧車とは比べ物にならない快適性を備えている点も素晴らしい。旧車の魅力は再現しつつ、現代に必要なものはしっかり備える。言葉にすれば簡単だが、そのバランスの取り方が絶妙なのだ。
これはスチール製ダブルクレードルフレームやリヤ2本サスなど、やはり旧車に通じる構成の車体も同様で、通常ペース+αでは快適かつ安定性も十分だが、ハイペースになると適度に旧車っぽくしなったりして、その気になっている乗り手をニヤリとさせてくれる。メーカーとしてはセールスポイントにしにくいかもしれないが、こうしたバランス感、線の引き方ができるのは作り手のセンスだと思うし、さらに言えば、それにOKを出せるカワサキという会社の魅力だと思う。
そんなW800系のグレードは全4種展開。軽快感が欲しければ18インチのフロントホイールを持つ2台、770mmという低いシート高が特徴のW800ストリートや、ビキニカウルや低いハンドル、シングル風シートのW800カフェがいいが、ここまでで述べた旧車と現行車の絶妙なミックス感や、「ザ・単車」とでも言うべき重厚な操縦性を満喫したいのなら、フロントホイールが19インチのW800やメグロK3がオススメだ。
旧メグロの最終モデルK2(記事冒頭写真でK3の背後を走る車両)の意匠を受け継ぐメグロK3では、アルミの立体成型品を職人が手作業で5色に塗り分けるという、非常に凝ったエンブレムを採用。さらには、ニンジャH2が採用する銀鏡塗装を燃料タンクに施すことで、K2のメッキタンクを再現している。 [写真タップで拡大]
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