ヤマハファクトリーの2台を引き連れてトップを快走する#6亀井雄大。全日本ロードレース選手権第5戦オートポリスでは、JSB1000クラスで一大勢力を誇るホンダ・CBR1000RR-R勢の中で最速の走りを見せた。
●文/写真:佐藤寿宏
ヤマハファクトリーに挑む
あっと言う間に5月も終わってしまいましたね。税金の支払いで諭吉が何人も飛んで行ってしまいましたが、コロナ禍と戦争で値上げが相次いでいるんですから、何とかして欲しいものです。
さて、先日行われた全日本ロードレース選手権第3戦オートポリスSUPER2&4レースの日曜日は最高の天気に恵まれました。まさに雲ひとつない五月晴れ。阿蘇の大自然の真っ直中にあるオートポリスは、湿度が低く、気持ちのいい観戦日和になっていました。
今回も2&4レースということで、JSB1000クラスのみが開催されました。オートポリスの2&4レースは、2019年以来3年振りでしたが、多くのお客さんが来場しイベントも盛況でしたのでコロナ禍も終わりに近づいていることを感じさせました。
オートポリス2&4も中須賀克行の強さは変わらずダブルウイン、2位に岡本裕生、3位に渡辺一樹という結果は、両レースとも変わりませんでしたが、レース内容は1人のライダーによって、大きく違ったものになりました。
その1人のライダーとは、鈴鹿レーシングの亀井雄大です。オートポリス2&4の前週に第4戦SUGOの事前テストが行われたのですが、ここで亀井は中須賀に次ぐ2番手タイムを記録。この走りに以前から亀井を応援しているノジマエンジニアリングの古澤基樹氏が衝き動かされ吸気系パーツを加工。シャーシダイナモでパワーチェックを行うと確実によくなっていました。実際にオートポリスを走ると低中速がよくなり、ヤマハファクトリーに対しても、鈴鹿2&4のときより離されず、最高速も2、3km/hほど伸びていたそうです。日曜日朝のウォームアップ走行では、300km/hもマークしていましたから、今年から投入しているスイングアームとの相性のよさ、そして亀井自身の成長もあり、トップ争いの常連になってきました。
路面が濡れており、霧雨も降り続く難しいコンディションで行われた公式予選では、使えるタイヤの都合もありましたが、早めにスリックタイヤに交換しました。
「もっと乾くまで待とうか? という話も出ましたが、待っていても仕方がないと思い、早めにコースに出ました。最後はライン1本だけ乾いていたのでアタックしていきました。あの状況ではベストは尽くせたかな」
亀井は、圧倒的なタイムでダブルポールポジションを獲得。中須賀は、レインタイヤで2番手でしたが、ピットに戻ってくると「よくスリックタイヤでいったな。まだかなり濡れていたからね」と言っていましたね。それだけ気合いの入った亀井のアタックでした。
レース1では、トップが1周を終える頃にコース復帰……
そしてレース1のスタートを迎えます。オートポリスはタイヤに厳しいサーキットなので、ヤマハファクトリーを始め、グリッドで新品タイヤに交換するチームもいくつかありました。亀井もグリッドでタイヤ交換をしたのですが、ここでメカニックがフロントタイヤを逆に組んでしまいます。今回、鈴鹿レーシングは、スタッフの仕事の都合がつかずに通常より1人少ない2人体制でした。初のポールポジション、限られた時間の中でのタイヤ交換ということで、余裕がなかったことは容易に想像できます。
ダミーグリッドを離れ、ウォーミングアップ走行に出て行くと亀井は異変に気付きます。トラクションコントロールのセンサーが効かずエラー表示が出るとシフターもおかしくコースアウトしかけてしまいます。トラブルに気付いた亀井は、すぐにピットインしますが、スタッフがグリッドから戻ってなく、周りの人が助けてくれます。亀井も自らフロントスタンドをかけ、フロントタイヤを装着し直しますが、コースに戻ったときには、トップ集団が1周を終えようとしていました。
亀井は、すぐにレーシングスピードで走れたわけではありませんでした。タイヤを交換している間、タイヤは冷めてしまっていたため、熱を入れる必要があったからです。レース2のためにも、最後まで走り切ろうとチェッカーフラッグを目指しましたが、ラップタイムも上がらず、1周遅れの22位という結果でした。
「邪魔にならないように走っていましたが、タイヤを暖めるのに2、3周かかってしまい厳しかったですね。レース1をちゃんと走ることができていれば、レース2では、もっといけたかもしれません」
鈴鹿製作所の“部活”でトップ争いにまで
レース1で、いいデータを取ることができなかったため、調子のよかった金曜日の状態でレース2に臨んだ亀井は、ホールショットを奪うとトップを快走しました。
「タイヤマネジメントも考えず、とにかく全力で走りました。6、7周でタイヤが厳しくなってきて、抜かれてからは、ついていくのがやっとでした。残り5周ではフロントタイヤがさらに厳しくなってしまい、最後に渡辺選手にかわされてしまいました」
鈴鹿レーシングは、他のHondaユーザーとは一線を画すアプローチで挑んでいるのが、おもしろいところです。鈴鹿製作所のクラブチームとして長い歴史を持っていますが、あくまで部活なので、ポールポジションを獲っても、トップを走っても、なかなか予算を増額してもらうことは難しいそうです。亀井は、昨年から鈴鹿レーシングの部長となり牽引する立場になりました。文字通り、結果でチームを牽引していますよね。
「一発タイムが出るようになってきたので、トラコンがもっと機能するようになれば、アベレージタイムを上げることができるはずですし、車体を軽量化することも可能かと。まだまだ詰められるところは、あるので、協力してくださっている皆さんとヤマハファクトリーに勝てるように頑張っていきたいですね」
予算があれば、いいパーツを使えることは目に見えていますが、そこは限られている中で何とかしなければならないところ。その中で、工夫しながら戦っていますが、プライベーターならではのアプローチで速くなってきているのが、おもしろいところです。まだまだ伸びしろのある亀井が、JSB1000クラスを盛り上げてくれそうです。
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