
1978年に始まった、アメリカにおけるヨシムラとスズキのパートナーシップは、40年以上にわたる成功に満ちた歴史を歩んできたが、2019年に解消され、ヨシムラのアメリカンロードレースの歴史は休止していた。そして2022年、ヨシムラとして初めて、ヤマハ車でレースをすることが発表された。
●外部リンク:YOSHIMURA R&D
POP吉村の孫が始める新しいプロジェクト

写真は1965年のもの。ホンダやBSAを扱っていた。 yoshimura-rd.com より [写真タップで拡大]
ヨシムラの創始者であるPOPこと吉村秀雄は、1954年に福岡県でヨシムラモータースを創業。第二次世界大戦後に日本へ駐留していた米兵を相手にバイクのチューニングを手がけ、物おじしない性格や面倒見のよさから「POP(親父)」と名付けられた。当初はBSAやBMWの販売代理店もやっていたというが、米兵のためにCB72とCB77をチューニングしたのがアメリカとヨシムラの関わりの始まりだったと言っていいだろう。
現在まで68年間の歴史の中で、ヨシムラはホンダ、カワサキ、スズキのマシンでレース活動を続け、1978年には第1回鈴鹿8時間耐久ロードレースにスズキGS1000で参戦し、ホンダワークスを相手に優勝をもぎ取っている。1972年にアメリカへ進出し、1975年に現在のヨシムラR&Dオブアメリカへ改名。鈴鹿8耐の参戦と時を同じくして1978年にアメリカでもスズキとのパートナーシップを開始する。
よく知られているように、ヨシムラとスズキのパートナーシップは現在も強固なものだが、アメリカにおいては少し様子が異なる。2019年にアライアンスを解消し、現地でのレース活動を休止していたのだ。
そんな中、2022年4月にヨシムラR&Dは新しいプロジェクトの始動を告げる。7月8日~10日に開催されるMotoAmericaのツインズカップ(ミドルクラスの2気筒マシンによるレース)、ラグナセカラウンドにヤマハ「YZF-R7」で参戦するというのだ。1978年以降、スズキとのパートナーシップシップで数々の成功を収めてきたヨシムラR&Dが、1954年に始まった社史の中で初めて、ヤマハのマシンでレースをする。日本のヨシムラ本社とは異なる動きなのかもしれないが、スズキのMotoGP参戦がどうなるのか不透明との噂が流れるなか、このプロジェクトのインパクトはかなりのものと言えそうだ。
ヨシムラR&Dのリリースによれば、吉村秀雄の孫でありヨシムラR&DのCEOである吉村雄策さんは、2022年2月に開かれたプロジェクトの最初の会議で「レースはヨシムラのコアバリューです」と述べ、2019年にスズキが撤退した際に閉鎖されたヨシムラレーシングとは異なる体制で、新しいレーシングマシンの開発を始めることにしたようだ。
経験の浅い若手技術者たちにとって、新しいメーカーと協力しながらレーシングマシンを開発していくのは容易なことではないはず。YZF-R1のようなスーパーバイクではなく、2気筒のストリートスポーツからプロジェクトを始めることは、未来へとつながるチャレンジに違いない。
今のところ、ラグナセカラウンドでの1回限りのレースが計画されているようだが、長い歴史を刻んできたヨシムラR&Dの、新しい歴史の一部が始まろうとしているのかもしれない。そんな期待をしてしまってもバチは当たらないだろう。
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【動画】Yoshimura R&D Plans To Go Racing Again in MotoAmerica With The YZF-R7
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