ドゥカティはスーパーバイクの上位グレードとなる『パニガーレV4 SP2』を発表、2022年に販売することを発表した。サーキットでのパフォーマンスを追求した結果、改良箇所は車両全体に及んでおり、エンジンパワー向上、電子制御デバイスの最適化などを中心として、走行性能がさらに引き上げられている。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●外部リンク:ドゥカティ
サーキット専用とすることで走行性能をさらに追求した最新パニガーレV4 SP2
パニガーレV4 SP2は、インターネットを介して催された『ドゥカティ・ワールドプレミア2022』のラストとなる第9回で発表された。最終回でのスーパーバイク最高峰モデル発表はドゥカティらしい演出であり、真骨頂といえるだろう。
SPとはスポーツプロダクションの略称で、パニガーレV4 SP2はサーキットにおけるスポーツライディングの可能性を一段と引き上げた改良が施されている。
SP2専用装備や性能の前に、まずは前年式から改良されたパニガーレV4の変更点を見ていこう。
MotoGPから派生したデスモセディチ・ストラダーレ(1103cc水冷4ストロークV型4気筒)は、最高出力215.5ps/13000rpmを発生。これは主に新開発の専用マッピングによるもので、スタンダードのV4よりも1.5ps高められている。また、これによってパワーピークを超えた1万4500回転時での比較では2.5ps高くなっており、全開加速時の大きなアドバンテージとなっている。
エンジンのパワーモードは、「ハイ」と「ミディアム」に加えて「フル」と「ロー」を追加した4種となり、サーキットでのパフォーマンスを徹底的にアップした。
エンジンのパワーアップに伴ってギヤ比も変更され、1速は11.6%、2速は5.6%、6速は1.8%高くなっている。これによりエンジンブレーキをより有効に活用できるほか、コーナーの立ち上がりにおける加速力が高められ、最高速は5km/h引き上げられている。
そのほか、スイングアームピボット位置を4mm高くしたことでアンチスクワット効果を高め、加速時のリヤの沈み込みを抑制。加速時の走行安定性を向上させている。
オーリンズ製電子制御サスペンションが搭載されるV4Sでは、フロントフォークはNIX30からNPX25/30に変更され、ストローク量が5mm延長された。これにより荒れた路面における安定性が高まり、限界状態でのグリップ力やブレーキフィーリングも向上している。
また、燃料タンクやシート形状も見直され、よりハードなライディングに対応するほか、タンク容量は16Lから17Lへと増量した。
SP2専用装備としては、駆動系ではSTM製『EVO SBKクラッチ』を採用する。乾式となるこのクラッチは軽量化に貢献するほか、スタンダードの湿式と比較してより明確なアンチホッピング効果(激しいエンジンブレーキ時のリアの浮き上がりを抑止する効果)と、スロットルオフ時のスムーズな作動性を実現する。この乾式クラッチにはカーボン製カバーが装着される。また、純正オプションで用意されるセカンダリースプリングを替えることで、エンジンブレーキの強さを物理的に変更することも可能だ。
足まわりでは、前後ホイールがV4 Sの鍛造アルミよりも1.4kg軽い、ハイクォリティ5スプリットスポークのカーボンファイバー製ホイールが装着される。これによってホイールによる慣性をフロント26%、リア46%も軽減しており、ハンドリングをさらに俊敏なものとしている。
ブレーキは上級モデルとなるブレンボ製Stylema Rが装着され、長時間のサーキット走行でもブレーキの引きしろに変化がなく、安定した制動力を発揮する。マスターシリンダーはマルチプル・クリック・システム(MCS)を採用した19/21ラジアルポンプで、レバーレシオを3段階に調節可能。ブレーキレバーにはリモートアジャストが備わり、左グリップに設けられたノブを操作することで走行中でもレバー位置を調整できる。また、レバーはクラッチ側ともにエッジ部を機械加工して空気抵抗を低減しているのも特徴だ。
ライディングステップはリゾマ製フルアジャスタブルタイプが装着される。ライディングフォームを最適化できるだけでなく、サーキットに合わせて最大バンク角を調節することもでき、マシンとライダーのパフォーマンスを最大限に引き出すことができる。
ライディングモードは、レースA、レースB、スポーツ、ストリートの4種。MotoGPライダーの提案により採用されたメーター表示モード『トラックEVO』などはV4/Sと同様だが、SP2ではGPSモジュールが標準装備される。これにより自動ラップタイム機能を有効にできるほか、コースのセクタータイムも瞬時に把握することができる。純正アクセサリーとして用意されるソフトウエアを導入すると、レース用スリックタイヤやレインタイヤ用のトラクションコントロール設定を使えるようになる。この機能はさらにサーキットごとの座標ごとにカスタマイズすることも可能となり、より確実なタイプアップを目指すことができる。
SBK由来の「ウィンターテスト」と名づけられた専用カラーは、マットブラックを基調としてドゥカティらしいレッドをアクセントとし、アルミ製燃料タンクをヘアブラシ加工で仕上げるなど特別なものとなっている。削り出しのステアリングヘッドにはシリアルナンバーがレーザー刻印される。走行安定性を高めるウイングにはイタリア国旗のトリコローレ(緑、白、赤)があしらわれる。
なお、アクラポビッチと共同開発したエキゾーストシステム(純正パーツ)を導入すると、5kgもの軽量化を達成すると同時に、最高出力は228ps、最大トルクは131Nm(13.6kg-m)まで高められる。
DUCATI PANIGALE V4 SP2[2022 model]
主要諸元■全長― 全幅― 全高― 軸距1469 シート高850(各mm) 車重194.5kg(乾燥重量173kg)■水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ 1103cc 215.5ps/13000rpm 12.6kg-m/9500rpm 変速機6段 燃料タンク容量17L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=200/60ZR17 ※諸元はイタリア仕様 ●価格:未発表 ●色:黒×銀×赤 ●発売:2022年3月より順次(マーケットによる)
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