バイクのフレームは、アルミや鉄、珍しいところではカーボンと、様々な材質で作られている。それはなぜなのか? アルミと鉄、どちらが優れているのか? アルミ/鉄フレームの車両を複数台所有し、それぞれでレースを戦ったこともある元車両開発関係者が解説する。
●文:モトコネクト編集部(NTMworks)
【解説:NTMworks】長年オートバイ業界を裏側から支えてきた、元車両開発関係者。 バイク便ライダーの経験や、多数のレース参戦経験もあり。 ライダー/設計者、両方の視点を駆使して、メカニズムの解説などを中心に記事を執筆。 実は元某社モトGP用ワークスマシンを組める世界で数人のうちの一人でもある。
アルミ&鉄:素材自体の特徴
「アルミ」「鉄」と言っても、実は色々な種類があります。この説明を始めると膨大な量になってしまうので、今回はフレームに使われることの多い種類の、一般的な特性を説明します。
アルミの最大の長所は”軽さ”です。その代わり、鉄と比べると強度的には劣ります。強度とは、どれくらいの大きさの力まで破壊されずに耐えられるかを指します。鉄と同じ強度を得るためには、厚みや面積を増やして体積を増やす必要があるのですが、鉄と同じ強度になるよう体積を増やしても、まだ鉄より軽いというのがアルミの長所です。
鉄の最大の長所は”弾性の高さ”です。弾性とは、力が加わった際に変形し、その力が抜けると元の形に戻ることを指します。アルミは大きな力が加わっても変形しにくく、変形してしまうと元に戻りにくいという性質を持っています。しなやかに、変形しながら大きな力を受け流す、といった使い方には鉄の弾性の高さが長所となります。
フレームに求められる要素とは?
フレームは、名前の通りオートバイの枠組み/骨格です。エンジンや足回りをはじめ、オートバイを構成する多くの部品を支え、適切な位置に固定するのが本来の役割です。その上で、走行中にかかる荷重や衝撃に耐える強度を確保しなければなりません。さらにデザイン/生産性/コストなど、様々な要素を満たさなければならず、目立たないわりには重要で、設計の難易度の高い部品です。
さらに、フレームと言えば、というくらい語られることの多い”剛性”についても要求を満たさなければなりません。剛性とは、力が加わったときにどれくらい変形するか、を指します。強度と似ていますが、違うものです。
そのフレーム剛性は、’90年代くらいまでは、コーナリングスピードを上げた場合にかかる大きな荷重に耐えられる、とにかく高剛性なフレームが良いとされていました。大きな荷重に耐えられるフレームを造るので精一杯だったとも言えます。
しかし現在では、ただ剛性が高いだけではなく、上手くたわませて旋回性を引き出す方向へと設計思想が変化してきました。全くたわまないフレームでは、旋回性はタイヤの性能に依存する部分が大きく、性能向上に限界があること、グリップ限界を超えた場合の挙動が神経質になりやすいことなどが理由です。
この思想の実現に大きな役割を果たしたのが、「CAE解析」と呼ばれるコンピューターシミュレーション技術の発達です。それまでも考えられていなかったわけではないのですが、テストライダーや職人の勘に頼る部分が大きかった剛性バランスを、コンピューター上で明確に数値化して設計することが可能となったために、設計時の自由度が向上しました。
アルミ/鉄の素材としての特徴と、フレームの役割に続き、アルミ/鉄フレーム双方のメリット/デメリットとその優劣について解説を続ける。
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