
’21年末、東京都が「総合的な駐車対策のあり方(案)」について都民に意見(パブリックコメント)を募集した。クルマ中心からヒト中心へとシフトする2040年代に向け、人が歩きやすい街づくりを実現するための様々な取り組みについて、駐車対策という視点から施策案をまとめ、意見を求めたのだ。将来のバイク駐車環境に関わる施策案も多いので、東京都が駐車対策に取り組む背景と、バイクの駐車構想について前/後編の2回にわたって紹介する。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨)
バイクを停めやすい東京が実現!?
「総合的な駐車対策のあり方」によって目指すべき2040年代の将来像は、いま東京都がブーストしようとしている「ゼロエミッション東京」の実現だ。サスティナブルリカバリーの観点をふまえ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しつつ、コンパクトでスマートな都市を目指すとある。ここで言うDXに当たるのは、ICT(情報通信技術)を活用したMaaS*や、5Gによる自動運転環境の整備といったことだ。
その目指すべき将来像に向け、現行のあらゆるモビリティを対象に、ヒト中心の街づくりと連携した駐車対策を検討するという。たとえば、路肩のカーブサイド(車寄せのある歩道)の活用、稼働率の低い4輪駐車場を多様なモビリティ(電動キックボード等)の駐車スペースに転用、パークアンドライドの導入やフリンジ駐車場(都市部に入る前にクルマを停めバス等で都心部へ移動)の配置による公共交通の利用促進、MaaSや自動運転などの先進技術、新たなモビリティへの対応などが挙げられている。こうした検討や施策の実施を地区ごとの実情をふまえて展開するのだ。
路上の活用も視野に?
この施策案で興味深いのは、都市計画駐車場や附置義務駐車場といった、これまでの対象施設ではなく、路肩側の車道空間であるカーブサイドの活用など、対象施設(空間)を大幅に広げていることだ。道路区域内で言うと、車道や歩道といった公有地までもが駐車スペースとして検討されているのだ。こうした路上の活用法は、区市町村が街づくり計画等の中で特例かつ緊急避難的に用いてきた手法だが、本案では初めから路上駐車場(現状、都内では設置なし)としての活用が想定されている。
このような柔軟な考え方に至ったのは、CASE**に沿った新しいモビリティに対応し、MaaSを活用したシームレスな移動空間を実現するためには、これまでの活用法では到底対応できないからだろう。もちろんこうした活用法を実現するためには、条例改正も視野に入ってくるのだが…。
バイクは、様々な自走モビリティの中でもICTへの対応がもっとも遅れている。CASE/MaaS/5G対応による街づくり(スマートシティ等)が各地で構想されるなか、特にコミューターのEV化(ゼロエミバイク)とその活用について、こうした取り組みとの”構想段階からの連携”が求められている。
**MaaS=Mobility as a Service:ICT(情報通信技術)を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、自家用車以外のすべての交通手段による移動をひとつのサービスとして捉えてシームレスに繋ぐ、新たな『移動』の概念。※Wikipediaより
**CASE=Connected(インターネットへの常時接続)/Autonomous(自動運転)/Shared(カーシェアリング)/Electric(電気自動車) ※Wikipediaより
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