これまでに多種多様な手法で、カワサキ ニンジャZX-25Rの資質に磨きをかけてきたトリックスター。そんな同社が新たに着手したのが、ターボ仕様での最高速アタックだ。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●取材協力:トリックスター
自然吸気とは異なる過給器ならではの加速!
’20年秋の発売以来、さまざまな角度からZX‐25Rの可能性を追求してきたトリックスター。その中でも鶴田竜二代表がこだわっているのは最高速で、ノーマルの実測180km/h/メーター読み187km/hに対して、同社製マフラー/吸気系パーツ/スクリーン(最高速重視で開発した製品だが、空力性能の向上はツーリングでも十分に体感できる)などを投入し、インジェクションマップをサブコンのラピッドバイクで刷新したデモ車は、’21年5月の時点で205km/h/215km/hをマーク。そして次なる手段として同社が選択したのが、ターボチャージャーの導入である。
もちろん、250cc4気筒用のターボなど世の中には存在しない。だからタービンの選定や吸排気系の再構築には、かなりの試行錯誤が必要になったものの、第一段階のセットアップが完了した時点での後輪出力は、ノーマル+約20ps/デモ車+約13psとなる58.79psに到達。スパ西浦モーターパークでの実走テストで好感触を得た同社は、’21年11月14日に茨城県の日本自動車研究所(JARI)で開催した超MAXSPEED走行会で最高速アタックを敢行。その結果はと言うと…。
1本目の走行で実測217.85km/h/メーター読み225km/h!
驚くことに1本目の走行で実測217.85km/h/メーター読み225km/hをマーク‼ ターボなら当然と感じる人がいるかもしれないが、自然吸気とはレベルが異なる数字にスタッフは大いに盛り上がった。もっとも、かなりロングに振ったファイナルレシオをややショートにして2本目の走行を開始したところ、吹け上がりに微妙な違和感が生じたため、この日のチャレンジは終了した。
とはいえ、開発を担当する国際レーシングライダーの山本剛大氏とメカニックの中村公次氏は、ZX‐25Rターボの本領発揮はまだまだこれから…と考えているようだ。
「スパ西浦で初めて乗ったときは、自然吸気とはまったくフィーリングが異なるうえに、250ccとは思えない速さに驚きました。特に16000rpm以上の加速は強烈で、シフトアップが追いつかなくなるほどです。今回の最高速アタックでは、諸般の事情でエンジンの回転数が17000rpmで頭打ちになりましたが、スパ西浦の時と同様に18000rpmまできっちり回せたら、実測220km/h以上は行けたと思います」(山本氏)
「現状はあくまでも第一段階で、軽自動車から流用したタービンはサイズが大きすぎるし、純正のエアクリーナーボックスをそのまま使っているサージタンクも理想的な形状ではありません。0.5kg/cm2のブースト圧や10:1(STDは11.5:1)前後に設定した圧縮比も、おそらくベストとは言えないでしょう。逆に言うならこのバイクは、至るところにまだ煮詰める余地があるんです」(中村氏)
ターボ化で限界の先へ。目指すは250km/hだ!
なおターボプロジェクトをスタートするにあたって、鶴田さんが立てた目標は250km/h。現状から+30km/hは難事業と思えるものの、JARIでのテストから約3週間後、各部を刷新したZX‐25Rターボの最高出力はイッキに69.13psにまで向上。このペースで開発が進めば、そう遠くない将来に目標は実現可能と思える。
「まずは最高速という形でプロジェクトは進んでいますが、現状ではターボチャージャーの追加によるネガが出ていて、正直言って扱いやすい特性ではありません。具体的な話をするなら、本格的にパワーが乗ってくるのは10000rpm手前の谷を超えてからで、その後は14000〜15500rpmあたりでやや停滞する区間があって、以後は一気に回るという印象です。もちろん、こういったネガは今後のセットアップで解消する予定で、最終的にはカワサキが’80年代に発売した750ターボのような、フレンドリーな特性を目指しています」(山本氏)
あくまでも最高速チャレンジが一段落してからだが、トリックスターではZX‐25R用ターボキットの市販を検討している。ストリート用として成立するのか、クローズドコース専用になるかは今の時点では何とも言えないものの、究極の250cc並列4気筒を味わいたいライダーは、同社の動向をマメにチェックしてほしい。
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