今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる。本記事では量産バイクで初めてDOHC4バルブ空冷並列6気筒を搭載したホンダCBXについて、リモーション・横川貴彦氏のインタビューをお届けする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:徳永茂/YM ARCHIVES ●外部リンク:リモーション
エンジンが好調なら何でもOKです
新車と見まがうほどのノーマル車から、ありとあらゆる部分に手が入ったフルカスタム車まで、取材当日のリモーションにはさまざまなCBXが入庫していた。その幅広さ/バラエティ感は、ある意味では横川さんの思想を反映している…と言えなくもない。
「ウチのスタンスは、CBXの最大の魅力である並列6気筒エンジンの調子が良ければ、それ以外は何でもOKですからね(笑)。とはいえ、私のほうからカスタムをオススメすることは基本的にありませんし、できることなら最初は、ノーマルに近い状態から乗り始めてほしいと思います。そうしないとCBXの素性が理解しにくいですから」
もっとも、最近の同店に新規で入庫するCBXは、カスタムを始める前に要整備という車両がほとんどのようだ。
「一番多いのはキャブレターの不調ですが、充電系や点火系に問題を抱えている個体も少なくありません。もちろん、ウチではどんなトラブルにも対処しますが、ひと昔前と比べると中古車価格が大幅に上がったからでしょうか、最近は整備の相談でウチを訪れて、自分が購入したCBXの実情を知って落胆されるケースが増えています。その事実を考えると、これからCBXを購入するなら、修理費用に関してはある程度の覚悟が必要でしょう」
完調に至るまでの経緯はさておき、実際にCBXを所有するにあたって何か注意することはあるのだろうか?
「熱的に厳しいエンジンですから、オイルには気を遣ってほしいですが、それ以外は現行車の扱いと大差ないですよ。なおマニュアル式カムチェーンテンショナーは、オーバーホール時にウチの新品/リビルド品を組み込めば、定期的な調整でトラブルはほとんどありません」
前述したように、横川さんは必ずしもカスタム推奨派ではないのだが、同店はこれまでに数多くのCBXで、足まわりの全面刷新を手がけている。
「コムスターホイールには対向式キャリパーを装着できないので、関連部品をすべて交換したほうが手っ取り早い…という事情はありますが、足まわりの全面刷新はバランスを考えた結果です。CBXのような旧車で部分的な刷新を行うと、かえって乗りにくくことがありますから。唯一の例外はリヤショックで、ノーマルは十中八九以上の確率で抜けているので、現代のアフターマーケット製に変更すれば確実に運動性や乗り心地が向上します」
最後の質問は横川さんのCBXに対する思い入れ。そもそも横川さんは、どうしてこのモデルにハマり、ショップとして力を入れることになったのだろう。
「一番の理由はやっぱり走らせて面白いからですが、このバイクをいじっていると、至るところでよくぞここまでこだわったなあ…という気分になるんですよ。中でもエンジンを整備していると、当時の技術者の情熱がヒシヒシと伝わって来ます。その情熱に感化されたからこそ、私はCBXに力を入れるようになったんでしょうね」
メンテナンスコスト[リモーションの場合]
- エンジンフルオーバーホール:100万円~
- キャブレターオーバーホール:10万円~
- 車体ベアリング全交換:8万円~
- フロントフォークオーバーホール:2万5000円~
経年劣化が進んだ結果として、バルブまわりの見直しやピストン交換/シリンダーボーリングだけでは性能の回復が難しくなってきたため、近年のリモーションではCBXのエンジン腰上オーバーホールは受け付けていない。
※すべての価格は部品代込みで、キャブレターオーバーホールには脱着工賃も含まれる(税抜)。
リモーション併設、ゆったりした時間が過ごせるThe.O.H.Cafe
コーヒーと音楽を楽しむため、そしてアパレル&グッズのブランドとして、横川氏は’18年に「The Over Head Company」を創設。その思想をさらに推し進める形で、’20年7月17日にはリモーションの敷地内に「The.O.H.Cafe」をオープンした。「バイク好きの来店は大歓迎ですが、いわゆるバイカーズカフェにするつもりはありません。誰もが気軽に訪れて、ゆったりくつろげるカフェを目指しています」
※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
整備が行き届いていれば現代の路上でも快適に走れる 随所に独創的な機構を採用しているうえに生産期間が短かったため、何となくコンディションの回復と維持が難しそうな気がするCBX。とはいえリモーション横川氏[…]
大反響を巻き起こしつつもセールスでは予想外の苦戦 '60年代初頭に年間販売台数で欧米の古豪を抜き去り、'66年にサイドカーを除く世界GP全クラス制覇を実現。'69年に量産初の並列4気筒車となるCB75[…]
2ストの歴史を変えたRZシリーズの最高峰 登場時に大反響を巻き起こしながらも、わずか2~3年で市場から撤退。'80年代中盤に突如として起こった2ストGP500レーサーレプリカブームは、あたかも打ち上げ[…]
型式は同じMC18でも、'88と'89年型は別物 今になって考えると、'80〜'90年代中盤は2ストロードスポーツが最後の炎を燃やした時代だった。そしてその時代を象徴するモデルと言えば、多くの人が最初[…]
最新の記事
- ホンダが新型「NC750X」発表!! コネクテッドTFTメーターにダブルディスク獲得、外装の一部にバイオ由来素材
- 7年ぶりのデザイン変更! ホンダの原付二種スクーター「リード125」がモデルチェンジ
- ホンダ「ADV160」国内2025年モデルが登場! 新色は鮮やかな赤とメタリック黒
- 日本でも発売決定! ホンダ新型「CB750 ホーネット」はフェイスリフトと新TFT液晶メーター採用
- [CB400/DR-Z4S etc] 衝撃の新型バイクスクープ 2024年度上半期ランキングトップ10
- 1
- 2