ハスクバーナモーターサイクルズ創業国・スウェーデンの言葉で”黒い矢”という意味を持つ「スヴァルトピレン」は、近未来とレトロを融合したスクランブラースタイルが特徴。優れたファンライド性能は、走りの楽しさを重視するベテランライダーさえも満足させる。
●文:田宮徹 ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:ハスクバーナモーターサイクルズ
回す楽しさ、操る快感。バイクの本質ここにあり
’21年型は401/250/125で展開されているスヴァルトピレン。近年のカテゴライズならネイキッド系に分類されるだろうが、そこにはスクランブラーやクラシックスポーツなどのエッセンスと近未来感がミックスされていて、「〇〇がモチーフ」と簡単には語れない個性が確立されている。
ハスクバーナモーターサイクルズはスウェーデン生まれだが、現在はオーストリアのKTMと同じグループに属するため、スヴァルトピレン401の水冷単気筒エンジンはKTM 390デュークなどに使われてきたものをルーツとする。そしてこのエンジンが、このバイクの乗り味を作る大きな要素となっている。
一般的に、公道用モデルに搭載されるシングルエンジンは、低中回転域の力強さや粘りを重視して設計されることが多い。結果、出足は良好だけど高回転域のパワーは…というパターンが普通だ。しかし、KTMが手がけたこのエンジンはまるで違う。悪く言えば低回転でのトルクや粘りはなく、3000rpm以下は使えない。代わりに、レブリミットは1万1000rpmに設定され、高回転域ではかなりの力強さを発揮する。つまり、単気筒だけど”ぶん回して楽しい”特性なのだ!
400ccクラスで44psという最高出力は突出したスペックではないが、とはいえ同じクラスの国内メーカー製2気筒エンジンに迫る数値。コンパクトなエンジンのおかげで車重も比較的軽めなので、車速も伸びやすい。一般道では、大型クラスに乗り慣れたライダーでも「これで十分」と思える速さがある。8000rpmから上では伸びのあるパワーバンドを演出。ローギヤならレブリミットまで引っ張ってもメーター読み60km/h弱なので、高速道路を中心にしつつ公道でもこの領域を楽しみながら走れる。
ピレリ製のスコーピオンラリーSTRというブロックパターンタイヤを履くが、コーナリングは意外にも”普通のオンロードバイク”。ハンドリングはニュートラルだ。WP製の前後サスはややハードな設定で、硬めのシートと組み合わさることで、レトロカスタムモデルのような硬質感を生みだしている。オフ系タイヤなのに足が短めというのは不思議な感覚だが、おかげでオンロードのコーナリングはビシッと決まる。ちなみにタイヤは前後17インチ径で250~400クラスの標準的なサイズなので、オンロード寄りのタイヤに変更することも容易だ。
スタイル最優先の個性派モデルかと思いきや、乗るとかなりスポーティで、走りの楽しさを追求するという点においても抜かりなし。「さすがのハスクバーナ!」なのである。
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