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オフロードマシン専門誌『ゴー・ライド』連載企画『令和の世に放つ 愛と青春のオフロードマシン』より、バイクが熱かった時代にラインナップされた懐かしのオフロードマシンを、”迷車ソムリエ”ことムッシュ濱矢が振り返る。本記事では、ムッシュが独断と偏見で選んだ”おもちゃ感あふれる小さいバイク”たちを紹介しよう!! 車両価格が安い/維持費が安い/足着きがいい/燃費がいいなどいろいろなメリットがあるが、一番は”おもちゃ感”。オフロードでも小さければ持ち上げて進めるから、テクニックより体力に依存した走破性を期待できるのだ。
●文:ゴーライド編集部(濱矢文夫)
新車時で希少だったゼロハンオフたち
小排気量の遊び心あふれるバイクを見ると、深夜のヤンタンから流れてきた「レンタル〜天狗のおめ〜ん」というエコーをかけた女性のセクシー声を聞いて、天狗のお面を借りてやることを想像しながら興奮した若い頃を思い出す。今は、”若者向けとして登場”というフレコミでバイクを売っても、実際に買うのは我ら半世紀生きてしまった系ライダーばかりだけれど、昔はホントに若いライダーがいっぱいいた。そして今回紹介するような魅力的な小排気量車が数多くあった。昔は良かったとか、いい時代だったとかは、クヤシイから言わないが、事実として今よりいい意味で冗談みたいな機種がたくさんあった。
- ホンダ モンキーバハ
- スズキ エポ
- ヤマハ BW’S
- ホンダ ディオXRバハ
- スズキ ストリートマジックⅡ
現在のライダー平均年齢とドンピシャな筆者としては、若者をバイクに乗せないと国内バイク市場の未来は暗いといって若者に媚びるような気風がイマイチぴんとこない。若者だろうが年寄だろうが、”欲しい”と思わせる機種があればいいだけで、わざわざターゲットにして、若者はこういう嗜好とか考えると逆に失敗するんじゃないかと思うのでユーアールであ〜る。私がヤングブラッドだったら”若者向け”といわれる機種には乗りたくない。だって、恥ずかしいもん。
勝手なおやじの主張になったけれど、楽しんで乗っている姿を伝えられれば、自然に2輪文化は盛り上がってくると思うんだ。大人のおもちゃみたいなバイクがたくさんあって、おもしろかった時代を思い出しながら、そんなことを思う。
昔もよかったけど、今もいいのだから。広げた風呂敷を閉じられないような起承転結を無視した話になったけれど、まあ、今も変なバイクがもっとあったらいいな、なんて思うワケですよ。成熟して落ち着くのもいいけれど、元気があるのは不安定な魂だから、それに見合ったバイクが欲しい。コストとか燃費とか理詰めだけじゃ響かない。新陳代謝ではなく支葉碩茂。
ホンダ モンキーバハ:バハ丸出しの感覚が不足している
こういうパロディができることが重要なんだ。「12Vモンキーでバハを作ったらおもしくね?」「いいねぇ」と共感して製品となり、「やば、これ欲しい」とユーザーも共感。今はメーカーもユーザーもそんな余裕がない。”遊び”が減少中。パロディのないこんな世の中じゃポイズン。モンキーをちょこっと変更してこれができるんだから、今でもやれるでしょ。関係ないけどこのオフローダー風シートは意外と座り心地がいいな。「悪ノリで200馬力オーバーのCBR1000RR-Rバハを作っちゃった。テヘペロ」ってやってくれたら、一生ホンダについていくのでありおりはべりいまそかり。
【HONDA MONKEY BAJA】■全長1330 全幅735 全高875(各mm) 車重59kg ■空冷4ストロークOHC単気筒 49cc 3.1ps/7500rpm 0.32kg-m/6000rpm 変速機4段 始動:キック式 ■タイヤサイズF=3.50-8 35J R=3.50-8
35J ●発売当時価格:15万9000円
スズキ エポ:’90年代の復活は都市伝説ではない
’80年代が青春だった人たちはどうしても、♪う・ふ・ふ・ふ、冷蔵庫開けて〜♫ う・ふ・ふ・ふ、何を取ろうとしたか〜♪ う・ふ・ふ・ふ、う・ふ・ふ・ふ、分からなくなる〜♫ などと適当な替え歌を口ずさんでしまうのである。早い話、スズキはモンキーが欲しかった。あのバイク界の星一徹みたいなカワサキだってKV75を、ヤマハだってポッケ、フォーゲルを出した。そしてスズキはRG50ベースの2ストエンジンに8インチタイヤを履いてエポを作って’79年に販売。でも人気は日光の手前、イマイチ。なぜか’93年に倉庫から新車が見つかったような同じ仕様で復活。そしてまた…。
【SUZUKI EPO】■全長1415 全幅685 全高915(各mm) 車重70kg ■空冷2ストロークピストンリードバルブ単気筒 49cc 3.8ps/6000rpm 0.45kg-m/5500rpm 変速機5段 始動:キック式 ■タイヤサイズF=3.50-8 4PR R=.50-8 4PR ●発売当時価格:10万5000円
ヤマハ BW’S:ヤマハの先走り感がたまらなかった
’70年代後半から’80年代にかけてヤマハスクーターは先進的だった。フラットフロアのパッソルを大ヒットさせ、’80年代原付スクーターブームの下地を作る。元気の良さでスポーツを感じさせた初代JOG/チャンプ。ビッグスクーターの元祖シグナス180。ヤングボーイのリビドーを刺激した米国女優を彷彿とさせるネーミングながらテレスコピックフォークに水冷2スト16psエンジンのスポーツスクーター・トレーシー125。ウガンダ・トラを驚かせた国内初のメットインスクーター・ボクスン。そして、オフロードとスクーターを結びつけたワイルドでスタイリッシュなこのBW’S。
【YAMAHA BW’S】■全長1735 全幅630 全高1030(各mm) 車重65kg ■空冷2ストロークピストンリードバルブ単気筒 49cc 6ps/6500rpm 0.67kg-m/6000rpm 変速機Vベルト式無段 始動:セル/キック併用式 ■タイヤサイズF=120/90-10 54J R=130/90-10 59J ●発売当時価格:14万9000円
ホンダ ディオXRバハ:メキシコの西海岸のにおいが…、しない
2灯ヘッドライトにしてハンドガードを付けて、タイヤをブロック風のに変えただけでバハといい張るところがステキ。ディオXRバハを見ていると、バハ・カリフォルニア半島の砂漠を連想させる…ワケがない。もう、これならなんでもアリだ。ホンダの小型耕運機に2つ目付けて、サ・ラ・ダFF300バハとか、カセットボンベで発電できるエネポ EU9iGBバハもいい。ホンダがXLRで最初にバハを名乗った由来を気持ち良くないがしろにしている。どういう人が乗るバイクなのか。現実は母ちゃんが息子の中学校時代のジャージを着こなして乗り回すだけだったりする。
【HONDA DioXR BAJA】■全長1650 全幅755 全高1045(各mm) 車重72kg ■空冷2ストロークピストンリードバルブ単気筒 49cc 6.8ps/7000rpm 0.73kg-m/6500rpm 変速機Vベルト式無段 始動:セル/キック併用式 ■タイヤサイズF=3.00-10 42J R=3.00-10 42J ●発売当時価格:16万5000円
スズキ ストリートマジックⅡ:”本気”と書いてマジだから漢字だと素塗本気
後に池袋西口公園の伝説になったロン毛時代の長○智也を起用したTVCMで「オレ、マジ スト、マジ」と若者がひくようなマジ卍なおやじギャグを言わせていたけど、ヤングがターゲット。スクーターのユニットスイングを使ってバイク風に仕立てたのが特徴。ちなみに同時期、似た作りのジレラDNAってのもあった。ストマジⅡはキャストホイールを装着してサスが変わったストマジSをベースに、アップフェンダー/ブロックタイヤ/ディスクガードなどを取り付けて、メーカーはRVバージョンとシャレオツに表現したけど、まあいわゆるオフ車テイストバージョン。50と110があった。
【SUUKI STREETMAGICⅡ】■全長1645 全幅715 全高975(各mm) 車重86kg ■空冷2ストロークピストンリードバルブ単気筒 49cc 7.2ps/7000rpm 0.78kg-m/6500rpm 変速機Vベルト式無段 始動:セル/キック併用式 ■タイヤサイズF=120/80-12 54J R=120/80-12 54J ●発売当時価格:20万9000円
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