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峻険なイタリアンアルプス1000kmを42時間で走破するHAT(ハードアルパインツアー)に、ジャーナリストのクラウス・ネネヴィッツ氏がファンティック・キャバレロシリーズの中でもオフロード性能を一段高めた新型「ラリー500」を駆って参戦。その奮闘の様子をレポートする。
●文:クラウス・ネネヴィッツ ●外部リンク:モータリスト合同会社
【FANTIC CABALLERO RALLY500】■全長2187 全幅878 全高1183 軸距1432 シート高860(各mm) 車重150kg ■水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒 449cc 40ps/7500rpm 4.4kg-m/6000rpm 変速機6段 燃料タンク容量12L ■タイヤサイズF=110/80-19 R=140/80-17 ●色:アンティークマットオリーブ/サンドベージュ ●価格:127万6000円
ファンティック ラリー500がハードアルパインツアーを走破!!
標高2000mを超えるイタリアの高山を巡り、オン/オフ含めた総走行距離1000kmを42時間で走破するHAT(ハードアルパインツアー)。’09年に12名の参加者で始まったこのイベントは、’21年は15カ国450人が参加するヨーロッパ最大のアドベンチャーイベントにまで発展を遂げた。このイベントに参加できるのは、いわゆるエンデューロマシンではなく、最少重量150kgと規定され、ラリーマシンやビッグアドベンチャーが不利にならないようになっているのが特徴だ。最新のBMW1200GSの隣りに古いHPNが並んでいたりと、エントリーマシンも新旧さまざま。そんなこともあり、私は懐かしさのあるスタイルに最新のテクノロジーを搭載したファンティック キャバレロラリー500で参加してみたら、このイベントをより楽しめるだろうと思ったのだ。
パルクフェルメ(車両保管所)には、新旧さまざまなマシンが並ぶ。最少重量150kgの参加規程があり、KTM890アドベンチャーR/アフリカツインアドベンチャースポーツ/BMW R1200GSアドベンチャーといったビッグマシンが多数エントリーしている。
スタート地点はイタリアのシーサイドリゾート地・サンレモ。ここから細い海岸線の道を、おびただしい数のバイクが走っていくのだ。しかも夜間に! 1000kmのルートの多くは厳しいオフロードで、だからGSやラリーマシンが多く参加しているのだが、そんなビッグアドベンチャーについていくことができたのは、車重150kgと軽量コンパクトなラリー500だからだと未だに思っている。また、ラリー500のLEDヘッドライトは驚くほど明るく、視界が欠けて気が散ることもないので、暗闇の中の走行を大いに助けてくれた。
アルプス超えのダートを含む1000kmを42時間で走破するこのイベントには、夜間走行もある。そんな時にラリー500の明るいヘッドライトが大いに助けてくれた。
最初の休憩ポイントであるレッツォ村に到着したのは土曜日の早朝だった。最初の夜はアドレナリンの分泌が効いていて時間はあっという間に過ぎ、身体と精神のバランスも保たれていた。ラリー500と私(クラウス・ネネヴィッツ)は永遠に飲み込まれてしまうような深淵を走りながら、ゆっくりと一体化していくようだった。そう、あたかもケンタウロスになるかのように、私自身がラリー500に溶け込んでいくのだ!
途中10カ所ほどの休憩所が用意され、また可能な場所では横になって休むこともできる。しかし、その様子は異様ともいえ、事情を理解してもらうまでは二度見されることもしばしばだった。
15分の効果的な睡眠時間を含む一時間の休憩は、身体を本当にリフレッシュさせてくれた。続くステージは標高2000mを超える35kmものロングダートだ。ラリー500のトルクフルな低回転域を使いながら、マシンを確実に進ませていく。峠を越えて市街地に戻ると、夕方の帰宅渋滞に巻き込まれながらディナー付きのチェックポイントへ到着。その後のルートには生い茂った森のシングルトラックもあり、GPSのリンクが途切れたりとなかなかハードな設定。かなりの疲労を感じながら、なんとかメレの街に到着し、宿に泊まった。この宿泊は私の人生でもっとも意味のある投資だったといえるだろう。翌朝4時にスタートし、5時には濃霧でマディのギルバ峠を越えていたのだが、宿を選ばなかったライダーたちは体力的により厳しい峠越えになっているだろうことが分かったからだ。しかし、6時を回ってすぐにリヤタイヤに釘を拾ってしまった。まさに悪夢だ…。
ロチェッタという街の教会の広場で、朝6時にパンク修理。しかし、地元の農夫が私のためにコンプレッサーを動かしてくれた。過ぎてしまえばアクシデントもいいアクセントに。
予期しない休憩を強いられたが、ここからのルートは全行程中でもっとも難しい上り坂が待ち受けている。厳しいマディや深い穴が点在し、止まると沈んでしまい、掘らずに発進できない路面が続く。だが、こんな路面こそラリー500の軽い車体が生きてくる。1速で大きな石をゆっくり乗り越え、2速で頂上をめざしていく。採石場を経由して、スキーゲレンデをさらに上り、雲の上にある最後の給油所へと向かっていく。雨でぬかるんだサンド質の路面で、踊るように暴れるラリー500を走らせていく。ゴールのピエモンテで与えられる健康的ですばらしい朝食ビュッフェを目指して!
最後のステージは非常に埃っぽいアッシエッタの尾根道。晴れていればアルプスの360°パノラマが広がることもあり、日曜日ともなると多くの観光客でにぎわうそうだ。
42時間のライディングは格闘ではなく、相棒との瞑想の旅でもあったのかもしれない。ライダーの身体と心/マシン/自然/料理/さまざまに用意されたエンターテイメントが、厳しさとともに大いなる楽しさも与えてくれたのだ。終わってみればラリー500は本当に最高の相棒だった。そして、人生とはなんとすばらしいものか!
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