今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はスズキ独自の油冷4気筒を搭載したGSX-Rシリーズを紹介。本記事ではきちんとメンテナンスしておきたいウィークポイントについて解説する。
●文:中村友彦 ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●取材協力:ガレージdb
22年の歳月を生き抜いたスズキ独自の油冷4気筒 スズキの油冷4気筒には、'85年から展開が始まったGSX‐R系と、'01〜'08年型GSX1400用の2種が存在する。本記事で取り上げるのは前者だが、改[…]
ごく普通の中古車整備で、本来の資質が取り戻せる
油冷4気筒の新規ユーザーが来店した場合、ガレージdbが最初に行う整備は、ブレーキ/タイヤ/サスペンション/チェーン&スプロケットといった足まわりで、次はキャブレターや電装系の点検に進むことが多いそうだ。誤解を恐れずに言えば、それらはごく普通の中古車の整備で、油冷ならではのものではない。
「逆に言うなら、油冷GSX‐R系はとにかく丈夫で、コレといった弱点はないんですよ。あえて問題点を挙げるとすれば、ヘッドカバーとチェンジシャフト周辺からのオイル漏れ、エンジンマウントとオルタネーターのダンパーラバーの劣化、カムチェーンテンショナーの作動不良、いまひとつの充電能力などがありますが、生産年を考えれば、それらは当然と言えなくもない」
そう語るガレージdb・前田憲明氏ではあるが、冷却方式を考えるとエンジンオイルには気を遣うべきという気がするし、昔から油冷ユーザーの間では、カムシャフトとロッカーアームの”かじり”が問題視されることが少なくない。
「エンジンオイルに気を遣うのは空冷でも水冷でも同じで、油冷だからといって特別なことはありません。ただし、ウチでバラした油冷を見ていると、定期的にオイルを交換していなかったり、粗悪なオイルを使っていたりした個体は、確かにコンディションが露骨に悪いですね。”かじり”に関しては、構造的に出やすいのは事実です。とはいえ、かじり自体が即座に大きなトラブルにつながるわけではないので、極端にシビアになる必要はないと思いますよ」
キャブレター:消耗部品の交換で本来の資質が取り戻せる
カムシャフト&ロッカーアーム:多少の磨耗やかじりは気にしなくてもOK
クラッチ:プレートの設定は車両によって異なる
エンジンマウントラバー:ラバーの劣化で振動や操安性が変化
ヘッドカバーガスケット:外周用だけではなく内側も同時交換
オイルホース:価格が高騰してきた消耗部品の筆頭
オイル&油冷パーツ:オイルと冷却に気を遣うのは油冷に限らず
リヤサスペンション:柔軟な対応が可能なナイトロンを推奨
カムチェーンテンショナー:作動不良を解消して張りを適正に保つ
スプロケット&ドライブチェーン:現代の製品なら532サイズは不要
タイヤ:前後18インチ車ではα-14が一番人気
フロントブレーキキャリパー:初期の4ピストンは作動性がいまひとつ
フロントブレーキマスターシリンダー:純正のオーバーホールよりラジアル化が得策
オルタネーター:後期型を流用することで発電量が増大する
イグナイター:純正の代替品になる最新点火ユニット
スパークプラグ:マニア心をくすぐる二極のCが定番
バッテリー:リチウムイオンで信頼感が向上
ステッププレート:転倒でダメージを受けやすい?
パーツ流通:社外品と中古を視野に入れれば、修理に困ることはない
ひと昔前は「旧車に優しい」と言われていたスズキだが、近年になって旧車用純正部品の供給状況は悪化。価格がかなりの勢いで上がると同時に、欠品が着実に増えているようだ。「まぁでも、現時点だと油冷の補修部品はほとんどが揃うので、出してくれるだけありがたいと僕は思っています。なお欠品になった部品は、アフターマーケット製や中古で何とかなるので、これまでに修復不可能という事態になったことはありません」(前田氏)
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