英国スズキは、ヨーロッパクラシックエンデュランス(クラシックバイクによる耐久選手権)のために開発したカタナレーサーをモチーフとした、公道バイクのプロジェクトを立ち上げた。
1年以上も限られたレース活動を強いられ……
“小人閑居して不善をなす”という言葉があるが、コロナ禍による断続的なロックダウンに見舞われた英国スズキの「Team Classic Suzuki」には、そんなことは当てはまらないようだ。
「Team Classic Suzuki」は、新型カタナが登場するよりも前の2016年末に、ヨーロッパクラシックエンデュランスに向けたカタナの耐久レーサーを開発し、実際に翌2017年のシリーズにガイ・マーチン選手らを擁して参戦。実はそれ以外にも油冷バンディットレーサーの製作やケビン・シュワンツが駆ったRGV500Γのレストアプロジェクトなど、コロナ禍以前には活発な活動を見せていた。
これらを含む形で、英国スズキは“ビンテージパーツプログラム”と称してRGV250、GT750、GSX-R750、GT250EX、A50P、GS1000SN、GSX-R1100L、TL1000Sといったマシンのパーツを供給するなど、旧くからのファンを大切にする活動も続けている。
そんな「Team Classic Suzuki」がコロナ禍によるロックダウンに直面したとき、非常に限られたレース活動しかできなかったこともあって、「LOCKDOWN PROJECT BUILD」というプログラムを開始することを発表した。
なんと、2017年に走ったカタナ耐久レーサーをモチーフにしつつ、現代の公道を走れるように水冷エンジン+アルミフレームのGSX-R1000(K8)のワールドスーパーバイクマシンをベース車両に選んだというから驚きだ。
エンジンは本物のレーサーが元になっている。2008年のスーパーバイク世界選手権を戦ったアルスタースズキのGSX-R1000が搭載していたエンジンそのものをリフレッシュ。後輪出力で200馬力を発揮するそうだが、当時のノーマル車両は余裕がある設計だったためかラジエターとオイルクーラーは工場出荷時のものを使用するという(ウォーターパイプはアルミ製に)。電子制御はヨシムラのEM Proキットだそうだ。
フレームもスーパーバイク世界選手権のものだが、寸法はストリートバイクのGSX-R1000 K8と同じ。これに特注のスイングアームをサブフレームを組み合わせ、オリジナルのカタナに敬意を表するためにツインショック(オーリンズ製)を採用している。ダイマグ製CH3ホイールもクラシックな外観とし、ブレンボ製のブレーキシステムを組み合わせた。
テールは「Team Classic Suzuki」のレーシングアイテムであるシートユニットにLEDテールランプを装着。ノーズコーン(アッパーカウルのこと)は、英国スズキのビンテージパーツプログラムから入手できる、オリジナルカタナ用の新品を、この車体にフィットするように加工したものだ。
これが実際に公道を走り出すことになるのかはプロジェクトの推移を見守っていきたいが、使っているパーツがパーツだけに、一般に手に入れられるものにはならないだろう。ただ、そのノウハウが彼の地でのカスタムシーンに反映されたら、面白いことになるかもしれない。
今回のプロジェクトで発表された公道カタナの姿
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