●文:ヤングマシン編集部 ●写真:Honda
ホンダは、注目の空冷ロングストローク単気筒を搭載する「GB350」およびバリエーションモデルの「GB350S」を正式発表した。昨年のインド版「ハイネスCB350」登場以来、日本の空冷単気筒ファンが心待ちにしていた新型バイクの登場だ。価格はGB350が55万円、GB350Sは59万4000円。
“キング乗り”の堂々車格と、力強く路面をヒットする単気筒 「ストトトト」と低めのハスキーサウンドでアイドリングする空冷単気筒エンジン、クリアに伝わってくるトラクションやヒット感、そして街中のUターンも[…]
- 1 GB350は価格55万円で決着! GB350Sは59万4000円に
- 2 HONDA GB350[2021 model]
- 3 GB350SはインドでCB350RSを名乗るスポーティ・トラディショナル
- 4 GB350Sの主な特徴
- 5 HONDA GB350S[2021 model]
- 6 ホンダがやってくれた! 痺れる! 憧れるゥ!!
- 7 GB350/GB350Sの核心! ロングストローク設定の空冷単気筒エンジンを解説
- 8 水平に流れる吸排気のライン、ほぼ直立したシリンダー、そして空冷フィン……
- 9 エンジンの外観デザイン
- 10 “クラッチをつないだ瞬間にわかる”粘りと鼓動感を重視
- 11 心地よい鼓動を残し、不快な振動=雑味を排するテクノロジー
- 12 サウンドチューニングと、ピストンまわりのフリクション低減
- 13 「不快な振動=NO、鼓動感=YES」は駆動系にまで
- 14 もちろん今どきのトラコンは標準装備
- 15 【車体解説】常識を覆す操縦感覚とは…バイクと一体になったライダーこそが美しい
- 16 「ライダーの存在感、ゆったりした操縦フィール、取り回しやすさ」を狙った
- 17 快適で堂々としたライディングポジションが余裕を生む
- 18 フレームの“しなり”が穏やかな運動性と、“ため”のある操縦性を実現
- 19 公式スカチューン!? “意志を持って”与えられた余白とは【デザイン解説】
- 20 キーワードは“Massive & Shaped Design”
- 21 GB350のデザインと主な専用仕様
- 22 GB350Sのデザインと主な専用仕様
- 23 鉄の温かみある表情と、シンプルな各部の造形
- 24 GB350のスタイリングとディテール
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GB350は価格55万円で決着! GB350Sは59万4000円に
これぞ、みんなが待っていた新世代の単気筒スタンダード! 丸型ケースに収められたLEDヘッドライトにシンプルな造形の燃料タンク、そしてダブルシートへの流れるような水平ライン。ほぼ垂直に立った単気筒エンジンのシリンダーには冷却フィンが刻まれ、空冷であるこをと誇示している。2本ショックのリヤサスペンションにスチール製の前後フェンダー、リラックスしたライディングポジションなど、普遍的なバイクらしさをたたえたこのバイクの名は「GB350」だ。
単気筒トラディショナルバイクとして43年の歴史を刻んできたヤマハSR400がファイナルエディションとなったこのタイミングで、入れ替わるように登場することになるGB350。かつて存在したSR500をも超えるロングストローク設定の空冷単気筒エンジンを搭載し、“バイクらしいバイク”を求める層だけでなくシングルマニアにも注目されている。
灯火類はすべてLEDで、ホンダセレクタブルトルクコントロール(HSTC=いわゆるトラクションコントロールシステムに相当)など装備も現代的だ。
さらに、モダン寄りのデザインと150/70-17サイズのリヤタイヤを与えられた「GB350S」も同時発表された。こちらは、GB350がインド版のハイネスCB350に相当するのに対し、同じくインドで先行発表されたCB350RSの日本版だ。
注目された価格については、税込み50万円というセンも真剣に検討されたようだったが、GB350は55万円に決着。GB350Sは4万4000円増の59万4000円となっている。
発売日はGB350が2021年4月22日、GB350Sは7月15日となっている。取り扱いは全国のホンダドリーム店にて。なお、製造は国内で行われることが明記されており、シリーズ合計・年間4500台の生産が予定されている。
HONDA GB350[2021 model]
【HONDA GB350[2021 model]】主要諸元■全長2180 全幅800 全高1105 軸距1440 シート高800(各mm) 車重180kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC 348cc ボアストローク70.0×90.5mm 20ps/5500rpm 3.0kg-m/3000rpm 変速機5段 燃料タンク容量15L■キャスター27°30′/120mm ブレーキF=φ310mmディスク+2ポットキャリパー R=φ240mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=100/90-19 R=130/70-18 ●価格:55万円 ●色:青、赤、黒 ●発売日:2021年4月22日
GB350SはインドでCB350RSを名乗るスポーティ・トラディショナル
GB350と同時発表されたGB350Sは、かねてよりインドで先行発表され、日本でも同様のバリエーションが登場すると噂されていたCB350RSの日本版。スタイリングはよりスポーティかつモダン寄りのロードスターとなり、150mm幅の太いリヤタイヤを履くとともに18→17インチへと小径化(ホイールデザイン自体は共通)。バンク角を増す変更も施され、走行性能もスポーツ寄りになっている。
マフラーはバンク角を深めるためにやや跳ね上げられ、ステップ位置も後退&やや上昇するとともにハンドル位置を変更。重心から遠い位置の質量を軽減するため、ショートタイプの樹脂製前後フェンダーや、シャープな面構成としたサイドカバーを採用。さらに、フロントフォークブーツを標準装備している。
ディメンション自体はGB350をベースとしているものの、ライディングポジションはステップ位置の後退&やや上昇、ハンドルグリップ位置は前方かつわずかに低めになった。これらにより、標準的なネイキッドスポーツのライディングポジションの範疇に収めながら、よりコーナリングを楽しみたくなる運動性能も備えているという。
残念ながら実車を見る機会はまだ少し先になりそうだが、サイドカバー形状の変更が足着き性にどの程度の影響を及ぼすのかも興味深い。
なお、インドからの情報では、GB350S(現地名:CB350RS)のほうが穏やかな乗り味になっているという話も。エアボリュームが増したリヤタイヤによる乗り心地の向上と、倒し込みの緩やかなキャラクターが想像できる。ただし、実際にスポーティに振りまわせるのは、バンク角に余裕があり、グリップに奥行きのあるGB350Sのほうだろう。早く乗ってみたい!
GB350Sの主な特徴
燃料タンクやエンジンなどの製法や仕上げをGB350共通としながら、より現代的なイメージの灯火器、マス集中化に寄与する前後樹脂製ショートフェンダー、よりワイドな17インチのリヤタイヤなど、いっそうスポーティな走行をイメージさせる、軽快、ワイルド、スポーティな外観とした。
GB350Sの主な専用スペック
・リヤホイールを17インチ化し、150mm幅のラジアルタイヤを装着
・バンク角を増したマットブラックのマフラー
・メインステップ位置を後退させた専用ステップホルダー
・より低く遠いグリップ位置のハンドル
・増す集中化と軽量化を図った樹脂製前後ショートフェンダー
・よりコンパクトなテールランプ&ウインカー
・ライダースペースをより長く取ったワディングシート
・よりシャープな面構成としたサイドカバー
・コンパクトなアルミダイキャスト製リヤグリップ
・フォークブーツ標準装備
HONDA GB350S[2021 model]
【HONDA GB350S[2021 model]】主要諸元■全長2175 全幅800 全高1100 軸距1440 シート高800(各mm) 車重178kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC 348cc ボアストローク70.0×90.5mm 20ps/5500rpm 3.0kg-m/3000rpm 変速機5段 燃料タンク容量15L■キャスター27°30′/120mm ブレーキF=φ310mmディスク+2ポットキャリパー R=φ240mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=100/90-19 R=150/70R17 ●価格:59万4000円 ●色:灰、黒 ●発売日:2021年7月15日
ホンダがやってくれた! 痺れる! 憧れるゥ!!
マジか! なんとホンダの正規ディーラー、ホンダドリームネットワークは、2021年3月30日~9月30日の期間中にGB350シリーズの新車を成約した39歳以下のユーザーを対象に、車両購入費用として使える5万円(税込)のクーポンをプレゼントするという粋なはからいをするというのだ。
発売価格は50万円との噂もあったが、実際はGB350=55万円/GB350S=59万4000円で決着。しかし、ホンダはやってくれた。年齢制限はあるものの実質50万円~という価格が実現したのだ。何台も乗り継いできたベテランには少し余裕をもって購入してもらい、バイクライフをこれから始める、もしくは始めて間もないライダーたちに真っ先に楽しんでもらいたい、そんなホンダの願いが込められているように思えてならない。
GB350/GB350Sの核心! ロングストローク設定の空冷単気筒エンジンを解説
この新型バイクの核となるのは、完全新開発の空冷エンジンにほかならない。一見するとローテクのようだが、中身はキッチリ造り込まれつつ、クラシカルなフィーリングを目指している。
水平に流れる吸排気のライン、ほぼ直立したシリンダー、そして空冷フィン……
「GB350」および「GB350S」に搭載されるエンジンは、最新の排出ガス規制に適合するモデルとしては異例の新開発、348ccの空冷4ストローク単気筒だ。このエンジンは、バイクの外観イメージを決定づける役割を担うだけでなく、現代のバイクが置き去りにしつつある伝統的なバイクの乗り味を実現しようとしている。
奇しくもSR400がファイナルとなり、国産400ccクラスから空冷の灯火が消えようとしているこのタイミングでの登場に、ホンダの気合いとしたたかさを感じずにはいられない。
このエンジンの特徴は、なんといっても空冷であること。そして異例のロングストローク設定であり、オフセットシリンダーや非対称コンロッドを採用するなど、最新技術で設計されていることが、大きな特徴となっている。
エンジンの外観デザイン
エンジン外観は、力強くクリアな鼓動を生み出す源として、空冷、直立、単気筒という特徴を主軸に外観表現することで機能美を導き出すことを追求したという。
スロットルボディからシリンダーヘッド、エキゾーストパイプ接続部は水平に配置され、吸気→燃焼→排気という動力発生の流れを視覚的にイメージさせる。また、単気筒であることを強調するラウンド形状の空冷フィンは、放熱性を考慮し1枚ごとに形状変化させた構成により空冷エンジンならではの立体感を獲得し、そのシリンダーヘッド部フィン端面に施された切削加工の輝きは前述の吸気から排気への流れを美しく表現した。
さらに、クランクケース上部に低く配置したスターターモーターや、配管など細部にも配慮しカバーを廃したキャニスター、バランサーウエイトを内蔵するクランクケース前部など、補器類の機能的な配置を工夫することでシリンダー前後にスッキリとした“空間”を設け、ロングストローク単気筒エンジンとしての存在感を引き立ててている。
“クラッチをつないだ瞬間にわかる”粘りと鼓動感を重視
本誌情報網によれば、エンジンフィーリングはクラシックバイクの心地よさを想起させるフィーリングに仕上がっているという。それこそ、発進でクラッチをつないだ瞬間に伝わってくる鼓動感や粘り、クランクが回っている感じが直感的に身体に入ってくるようなイメージだろうか。
その中核を担うのは、ボアφ70mm×ストローク90.5mmというロングストローク設定のスペックだ。わずか3000rpmで最大トルクを発生する日常域重視の設定で、街乗りでは力強さを、また高速道路でエンジンを回して走っても、ただの連続音にはならず鼓動感を残したサウンドが期待できる。
ホンダがこのようなエンジンの造り込みをアピールしてきたことは、長い歴史上でも異例であり、ゆえにGB350独自の魅力に期待がかかる。
ワイドレシオの5速トランスミッションは、キビキビ走れる1~4速に対し、5速は低回転30km/hから高速巡行にまで対応。低い回転でスロットルをワイドオープンしたときの、心地よく息の長い加速と、シートから実感できるトラクションがありありと浮かぶようだ。
この“息の長い加速”を実現するためにも、質量の大きなフライホイールとし、その慣性マスによって一発ごとの粘りある燃焼フィールが際立っているというからたまらない。[9.5:1]というスーパーカブ並みの圧縮比も、やわらかく湿ったような燃焼感覚を想像させる。
ホンダは「日常の移動から長距離ツーリングまで、エンジンの鼓動と対話しながらも、それに急かされることなく、常に余裕と充実感につつまれたライディングを楽しめるよう出力特性を作り込みました」と説明し、今までの同社のバイクにないフィーリングを訴えている。
心地よい鼓動を残し、不快な振動=雑味を排するテクノロジー
GB350/Sのエンジン開発では、、燃焼エネルギーを心地良さや手応えとしてライダーに届ける“鼓動=味わい”と、往復回転部の慣性力に起因する不快な“振動=雑味”を明確に分け、鼓動の最大化と振動の最小化を図ることで単気筒エンジンの特徴を引き出しクリアな鼓動を実現したとしている。
その手法として、一般的なバランサー軸に加えメインシャフト軸上にもバランサーを追加して、一次振動を抑制。クランク1回転毎に発生する一次振動を打ち消すことで、クランク2回転毎に発生する燃焼による鼓動をクリアに感じさせるのが狙いだ。また、一次バランサーを装備することで発生する偶力振動をキャンセルするために、メインシャフトにも同軸バランサーを装備。これらにより、ロングストロークエンジンの鼓動を純粋に味わえる、趣味性の高いエンジンフィールを獲得したという。ちなみにだが、“趣味性の高いエンジンフィール”という言い回しをホンダが用いることも異例といえよう。
この“ロングストロークエンジン”は、一般的にエンジン全高が長くなることに加え、搭載するバイクの最低地上高の確保も必要となることから、クランク室とミッション室の間に隔壁を設けた密閉式クランクケースを採用。ある意味、ウエットサンプのシンプルさとドライサンプの攪拌抵抗低減というメリットの間を取ったような構造で、隔壁に配置されたリードバルブが、ピストン上下によるクランク室の圧力変動に伴い開閉することで、ピストンジェットから吐出されてピストン冷却とコンロッド大端部の潤滑を終えたオイルをミッション室に排出する。これによりフリクション低減を図り、燃費向上につながっている。
サウンドチューニングと、ピストンまわりのフリクション低減
エアクリーナーボックスは、エレメントからスロットルボディに至るまでの管長を確保し、低速から力強いトルクを生み出すとともに、吸気経路のストレート化によって吸気抵抗を低減。必要な量の空気を安定して取り入れるため、吸気口を走行風による外乱影響の少ないエアクリーナー後方に配置し、おこまでの空気の導入経路をシート下とエアクリーナーボックス上面の間に設けた。
また、排気系は重厚な低温を主成分とした、鼓動感あるサウンドを重要視。マフラーの内部構造をできるだけ長い管長となるようサイレンサー後端まで確保し、トルクフルな走りに寄与させた。テールパイプは大径φ45mmとしたことで、燃焼によって生じた音圧のエネルギーをクリアに伝えるようチューニング。さらに、エキゾーストパイプを二重管構造とすることで、GB350ではクロームの、GB350Sではマットブラック仕上げの熱による変色を抑え、キャタライザーもアンダーパイプ内に直列配置とするなど、スッキリした外観とバンク角の確保にも気を配っている。
ピストン&シリンダー間の摺動抵抗抑制には、クランク軸とシリンダー中心を10mmオフセットする“オフセットシリンダー”で対応。これによりロングストロークのコンロッドとシリンダー内壁下端の干渉を避けるために、コンロッドを前後非対称としているのも新しさを感じさせる。これらにより実現した10mmのオフセット量により、燃焼が生み出すエネルギーを最大限に活かすとともに、良好な燃費にも寄与している。
シリンダーまわりの冷却に関しては、冷却フィンの深さ/厚さ/間隔の最適化、ピストンジェットの採用、燃焼室周辺を冷却するためのオイル通路を設けることなどにより、燃焼効率の高い温度域を維持できるように工夫されている。
「不快な振動=NO、鼓動感=YES」は駆動系にまで
クランクからリヤタイヤまで動力を伝える駆動系領域では、CAE機構解析シミュレーションを活用しながら、各要素をバランスよくチューニング。単気筒エンジンにありがちな、大きなトルク変動によるギクシャク感を抑えながら、その力強さを心地よい鼓動として伝えることに腐心している。
アルミカムのアシストスリッパークラッチはクラッチレバー操作荷重を約30%低減するとともに、シフトダウンのよる急激なエンジンブレーキによる不快なショックや後輪のホッピングを緩和。また、シフトフィールを追求するために、シフトカムのプロフィールには大排気量モデルと同様のタイプをベースとするなど、操作感の向上にも余念がない。
もちろん今どきのトラコンは標準装備
幅広い路面コンディション下での走行を想定し、路面状況に応じてエンジントルクを制御するホンダセレクタブルトルクコントロール(HSTC)を採用。メーター左側面のスイッチでON/OFFも可能だという。
【車体解説】常識を覆す操縦感覚とは…バイクと一体になったライダーこそが美しい
車体の狙いは、「ライダーが余裕を持って操っている姿が最も美しい」を誰もが享受できること。扱いやすさ、ゆったりした操縦フィールが美しさに繋がるというのだ。
「ライダーの存在感、ゆったりした操縦フィール、取り回しやすさ」を狙った
およそホンダらしくない物言いだ。これはけっしてネガティブな意味ではないが、今までにホンダがこんなことを大上段に構えて言ってきたことがあっただろうか。
2010年に登場した空冷4気筒のCB1100は『鷹揚』をキーワードに、大空を悠々と舞うような自由感を訴えたが、それは「操る満足」や「所有する満足」といった、スピードに頼らないライディングの愉悦とマシンの上質感を謳ったもの。今回の「扱いやすさがライダーとバイクの一体感を増し、操っている姿が美しくなる」というGB350の世界観とは、微妙に異なっているように感じる。
性能やスペックを作り込むことでライダーを満足させ、乗り手よりもマシンの完成度がクローズアップされることが普通だったホンダが、「あくまでもライダーが主役であり、見る者に印象を決定づけるのはマシンそのものよりも、むしろライダーである」と言い切っている。そのことに、1990年代以降のバイク業界を中から見てきた筆者としては驚きを禁じ得ないのだ。
ホンダは車体の狙いを、「見る者に印象を決定付けるのは、マシンそのものより、むしろライダーであり、私達はライダーが操っている姿が最も美しいと考えています。GB350シリーズの車体開発では、この原点とも言うべきライダーとモーターサイクルの一体感を見据えながら市街地からツーリングまでの扱いやすさ、動力性能、外観との統合が図られました」とした。
すべてを『余裕を持って操れること』や『取りまわしのしやすさ』に収れんさせている、ということだろう。
ホンダは、車両がもっとも引き立って見えるのは、ライダーが安心感と余裕を持って扱っている状態だと考えたのだ。そして市街地から郊外、さらに長距離ツーリング、各場面での交通環境や車速、路面状況などさまざまなコンディションでの走りから、押し歩きや駐車時などの車両取りまわしまで、ライダーがGB350/Sと体験する幅広いシーンにおいて、堂々と自信を持って扱えることがファンライドの前提条件と位置づけた。
そのためのロングストローク単気筒エンジンであり、シンプルながら考え抜かれた車体であり、そしてライダーが乗った姿やエルゴノミクスまでトータルで仕上げられた外観デザインであり……ということなのだ。
快適で堂々としたライディングポジションが余裕を生む
ハンドルバーの設定は昔ながらの言い方なら『殿様乗り』に近く、アップライトで手前に引かれたグリップ位置で上半身をアップライトにし、さまざまな状況下で視界良好。この快適で堂々としたライディングポジションによってライダーの存在感を強調しながら、安心感のある車体挙動が得られるスペックを設定した。
そしてGB350/Sのホイールベースは1440mm。同じ251~400ccクラスのCB400SFよりも30mm長く、大型スポーツネイキッド並み。これにキャスター27°30′/トレール120mm、フロントフォークオフセット量45mmという仕様を組み合わせ、大型モーターサイクルにも引けを取らない車格や、クルージング時のリラックス感を実現している。
また、左右43度を確保したハンドル切れ角により、最小回転半径は2.3m。これはコンパクトなスポーツネイキッドのCB250Rと同数値で、CB400SFの2.6mに対してかなり小回りが利くことがわかる。外乱に強い前19/後18インチホイール(GB350Sは前19/後17インチ)も相まって、アドベンチャーバイクに近い安心感と自由な操縦性が想像できる。
フレームの“しなり”が穏やかな運動性と、“ため”のある操縦性を実現
穏やかな操縦フィールをもたらすために、鋼管セミダブルクレードル式フレームを採用。多くのモーターサイクルが採用してきた一般的なフレーム形式だが、開発に際しては最新CAEによる構造解析や振動解析を導入し、動的な荷重に対する各部の変形過渡特性を総合的にコントロール。これが一貫性のあるロール特性を生んでいるわけだ。もう少し違う言葉で言えば、手応えが一定で安心して寝かし込める特性ということだろう。コーナリング時には車体質量の手応えを感じながら“ため”のある操縦性を獲得するとともに、さまざまな場面での安心感ある乗り味を作り込んでいるという。
フレームはチェーンラインの内側にピボットを設定した幅の狭いインナーピボット構造により、スチールのしなやまさを最大限に引き出しながら、縦、横、ねじれ剛性をバランスさせることで安心感につなげている。っまた、操縦性では、エンジンを低い位置に搭載することでバイクの重心を低く抑えながら前後方向の搭載位置を調整し、フロント分担荷重を最適化。併せてハンドルグリップとヒップポイント間の距離を短く設定することにより、腰を据えてハンドル操作が可能な、落ち着いたフィールを提供する、としている。
スイングアームは、幅咆哮を詰めたフレームピボット部の外側に締結されるタイプ。別体のアルミ鋳造ステップブラケットと共締めする合理的な構造だ。丸パイプ構成のフレームに対し、スイングアームはより高剛性の60mm×30mm角断面パイプを採用することで変形を抑え、力強いトルクを駆動力として無駄なく路面に伝える。エンドピースは鍛造製で、路面からの入力とクッション反力を効率的に受けられる形状とした。これらにより、スッキリした外観と快適なライディングフィールを両立しているという。
ともに120mmのトラベル量を持つ前後サスペンションはコンベンショナルなタイプ。フロント正立フォークはφ41mmで、リヤショックはダンパー内部に窒素ガスを加圧封入することで応答性の高いダンピング特性を得ている。
ブレーキはフロントにφ310mm、リヤにφ240mmのディスクブレーキを採用。GB350シリーズ専用セッティングの前後独立制御ABSを標準装備する。ABSの液圧をコントロールするモジュレーターは、リヤブレーキホースを直接締め付けられる位置とすることで、リヤブレーキパイプを廃止したコンパクトなシステムとしている。
公式スカチューン!? “意志を持って”与えられた余白とは【デザイン解説】
外観デザインは、ライダーにフィットさせた車体パッケージングによる、“ライダーの存在感”と“車両自体の存在感”のバランスと調和を追求したものだという。
キーワードは“Massive & Shaped Design”
ライダーとバイクの調和を外観デザインで表現する……そんな目標に到達するために、スタイリング、車体、エンジンの各担当者をはじめとする、各技術領域のスペシャリストたちが一体となって開発に挑んだという。
バイクの外観を後世する大きな要素は3つ。“骨格”としての役割を明確化したスリムな鋼管セミダブルクレードル式フレーム、“ボディー”としての役割を代表する表情豊かなフューエルタンク、“象徴”としての空冷直立単気筒エンジン……。これらが、外観の印象を左右する核と位置付けられた。
内側に骨格を感じさせる立体的なボディとともに、エンジンまわりなどに“空間”を設けることで、ライダーと車体の双方を際立たせるための、幅方向に奥行きを持った深い立体感が表現された。これがGB350シリーズの特徴だ。
また、車体骨格の3つのライン(ダウンチューブ、ピボットパイプ/リヤショック)を平行とし、これを対称となる角度で受けるフロントフォークを配置。さらに、ライダーが触れる車体上側と、メカニズムを主とした車体下側を分ける水平ラインを配し、安定感のあるたたずまいとした。
さらに、補機類のサイズや配置を工夫することで、シリンダー前後、前輪からヘッドパイプまわり、サイドカバー下部から後輪に抜ける“空間”を設けることで、構成部品の形状と量感を際立たせている。この“意志を持ってすっきりと空けられた明確な余白”が、GB350シリーズのたたずまいに大きく影響している。確かに余分な配線や補機類はほとんど表に出ておらず、現代のエンジンに必須のキャニスターも、言われなければ旧車のオイルキャッチタンクか何かに見えなくもない。
言わば公式スカチューン……というのは半分冗談だが、各機械構成部品が際立つつくりは、シンプルでありながら、どこか温かみのある抑揚と機能美が感じられる仕上がりだ。
GB350のデザインと主な専用仕様
燃料タンクをはじめ、前後フェンダーやサイドカバーなどの、スチールならではの深く絞られた温かみのある形状、アルミダイキャストによるクランクケースカバーや、冷却フィン端面を1枚ずつ切削加工して仕上げたシリンダーヘッドなど、主要部品を金属の豊かな表情でまとめた高品位な造りからくる、信頼感や落ち着きと抑揚が調和した外観が特徴となっている。
主な専用仕様
・クローム仕上げのマフラー
・メイン/ピリオン別体の専用ステップホルダー
・ヘッドライト、テールライトのクローム仕上げ
・スチール薄板(0.8mm)前後フェンダー
・スチール薄板(0.8mm)サイドカバー
GB350Sのデザインと主な専用仕様
燃料タンクやエンジンなどの製法や仕上げをGB350共通としながら、より現代的なイメージの灯火器、マス集中化に寄与する前後ショートフェンダー、よりワイドな17インチの後輪など、一層積極的な走りを喚起させる、軽快、ワイルドでスポーティな外観とした。
主な専用仕様
・リヤホイールを17インチ化し、150mm幅のラジアルタイヤを装着
・バンク角を増したマットブラックのマフラー
・メインステップ位置を後退させた専用ステップホルダー
・より低く遠いグリップ位置のハンドル
・増す集中化と軽量化を図った樹脂製前後ショートフェンダー
・よりコンパクトなテールランプ&ウインカー
・ライダースペースをより長く取ったワディングシート
・よりシャープな面構成としたサイドカバー
・コンパクトなアルミダイキャスト製リヤグリップ
・フォークブーツ標準装備
鉄の温かみある表情と、シンプルな各部の造形
エンジンが織りなす造形の妙については【エンジン解説】編でお届けしているので、ここでは車体まわりのデザインについて。
GB350のスタイリングとディテール
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