’19年秋のミラノショーで発表されたショーワの電子制御サスペンション=自動車高調整技術「イーラ ハイトフレックス」。走行中は車高が上がり、停止すると足着きが良くなるらしい!? ウマイ話にはウラがあるとは言うが、そんな都合のいい話がホントにあるの!?
停車寸前に車高が下がって、3cmほど足着きがよくなる!?
ショーワの2輪用電子制御サスペンション・イーラ。今回の技術体験試乗会の目玉は、やはり「イーラ ハイトフレックス」。この電子制御サスペンションは、従来からの減衰力制御に加え、その名の通り、”高さ”が”可変”する。
アドベンチャーツアラーのような、大きな最低地上高とロングストロークを必要とする車両向けの技術で、なんと走行時と停車時でサスペンションの全長が切り替わるというのだ。バイクとしての走行性能は長いストロークと最低地上高でしっかり確保しながらも、それらが必要ない停車時だけ車高が下がり、足着き性が格段によくなる。体格的に不利な我々日本人にとっては夢のようなシステムである。
その仕組みは、走行中のピッチングモーションのエネルギーでポンプアップを行い、前後のサスペンションをジャッキアップして足長化。走行中はジャッキが固定されたままとなり、停止時には、ECUが停車タイミングを予測し、停止の約1秒前にジャッキダウンして足着きを良くする。
試走して驚いたのは、その自然な乗り味。試乗車はデモ機ということもあり、前後サスペンションのジャッキアップ具合を視覚化する装置が付けられていたのだが、走り出すと少しずつジャッキアップされ、100m(凹凸があればもっと短い)ほど走るとジャッキアップが完了。つまり、発進後30秒ぐらいはジャッキアップが完了しない状態で走ることになるのだが、変に直進性が強まったり弱まったりするような挙動の変化がなく、自然に走っていられることがすごい。
ならば? と興味本位で、巡行速度から一気に減速してUターン、またスタンディングなどを行ってみたが、Uターン時やスタンディングスティル時にはジャッキダウンするようなアルゴリズムが現状では設定されているようだ。
開発陣に「オフロード走行を行うアドベンチャーモデルというと、深い轍をバタ足で進んだり、難所の前で微速前進するような場面もある。任意でジャッキアップしたままにする機能があるといいかも」なんて話をすると、「そのあたりは車両メーカーのオーダー次第でいかようにも設定可能」で、どこまでジャッキアップするかのフレックス具合の自由度もかなり高いらしい。
こうなってくると、足着き云々というより走行時だけ異様な最低地上高を持つモデルが登場する可能性すら出てくるというワケである。シート高という、オートバイ有史以来抱えてきた絶対的な設計制約から解き放たれる日は、意外と近いのかもしれない。
反力を溜め込んで油圧でジャッキアップ
走行を開始すると、路面の凹凸/アクセルオンオフ/ブレーキングなどで起こるピッチングモーションの反力を利用して、油圧でジャッキアップする。前後のサスペンションがそれぞれ設定した目標値までジャッキアップを行い、目標値に達すると油圧ジャッキのバルブがロックされ、その状態が保たれる。停車時はその状態をECUが感知して、ジャッキの油圧を抜いて車高が下がるという仕組みだ。電気で動くのは油圧バルブだけで、非常にシンプル。フロントフォークにすべての構造が収まってしまうくらいだ。
EERA®(イーラ):電子制御式油圧バルブが作り出す魔法のようなサスペンション
イーラ(EERA®)は「Electronically Equipped Ride Adjustment」の略で、ショーワの2輪向け電子制御サスペンションの総称。その最大効用は、電子制御式油圧バルブを備えたことで、走行状態に合わせたリアルタイムでの減衰力変更や、荷物の有無などを設定すれば自動でプリロード調整もできること。これらの機能は、’18年モデルのニンジャZX-10Rへの搭載を皮切りに、’19モデルのヴェルシス1000、ニンジャH2SXなどですでに実用化。最新のCRF1100LアフリカツインアドベンチャースポーツESには、ジャンプしたことを検知し、着地時の衝撃に備えて減衰力を自動で高める“ジャンプ着地制御”も搭載された。加えて’21年からは、いよいよ“スカイフック制御”も実用化し、’21モデルのヴェルシス1000SEにも搭載される。今後は、荷物の重さを姿勢変動から検知して自動でプリロード調整をする“自動積載補正”や、サスストロークに応じて減衰力を調整することであたかもバネレートそのものが変わったかのような制御を行う“仮想バネレート制御”の実用化も目指している。
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