’80s神名車メンテナンス

プロに学ぶスズキGSX1100Sカタナ完調術#2〈ウィークポイント解説〉

  • 2020/11/23
プロに学ぶスズキGSX1100Sカタナ完調術#2〈ウィークポイント解説〉

●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 YM ARCHIVES ●取材協力:ユニコーンジャパン

永遠に色褪せぬ2輪デザインの金字塔・スズキGSX1100Sカタナ。その走りを末永く楽しむには、何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろう? 現在の中古車流通状況やメンテナンスすべきウィークポイント等について、この1台を知り尽くす専門家・ユニコーンジャパンに尋ねた。

素性が不明の中古車で、絶好調の可能性はほぼゼロ

正確な統計を取ったわけではないものの、’70~’80年代に生まれた大排気量並列4気筒車の中で、カタナの耐久性はかなり高い方である。事実、今回の取材に協力してくれたユニコーンジャパンの池田隆氏によると、エンジンのフルオーバーホールを必要とする個体は現時点でも決して多くはないようだし、固有の弱点と言えるのは、クラッチセンターロックナットの緩みと、新車時から不評だった’94年型以降のパワーアシストクラッチぐらい。とはいえ、だから整備が不要かと言うとまったくそんなことはない。「世の中には、耐久性が高い=整備が不要と考える人がいますが、カタナは誕生から20〜40年が経過した旧車ですからね。本来の資質を味わうためには、車体や吸気系や電装系など、ひと通りの点検整備が必要です。率直なことを言うと、素性が不明のカタナを入手して、その日から充実したバイクライフが送れる可能性は、ほぼゼロと考えたほうがいいでしょう」(池田氏)

ちなみに、同店が1/2年間の保証付きで販売しているカタナの認定コンプリート車は、エンジンの圧縮測定、オイル漏れ修理、タペットクリアランス調整、キャブレターのオーバーホール、車体全ベアリング/タイヤ/スプロケット+チェーン交換、フロントフォーク/前後ブレーキのオーバーホールなど、約100項目の点検整備を実施。逆に言うなら、そのくらい入念な作業を行わないと本来の資質が味わえないほど、昨今のカタナの中古車は劣化が進んでいるのだ。

固有の弱点は少なめ。エンジンの耐久性も特筆モノ

10万kmはまったく問題なし。オーバーホール依頼が少なくて困る!?

スズキGSX1100Sカタナ完調術〈プロに学ぶ'80s神名車メンテナンス〉

エンジンはとにかく丈夫だが、タペットクリアランスが適正値外の車両は少なくない。 [写真タップで拡大]

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ジェネレーターからの3本の配線は、コゲが発生している可能性が高い。いったん切断してギボシ部分の新規製作で対処。 [写真タップで拡大]

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左側のジェネレーターカバーは、立ちゴケで割れることがある。その対策としては、パイプ型のエンジンガードがもっとも有効。 [写真タップで拡大]

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ユニコーンではこれまでに多種多様なスパークプラグをテスト。最も信頼性が高いのは純正のD8EAだったという。 [写真タップで拡大]

エンジン:唯一と言える弱点=クラッチセンターロックナット

非常に緩みやすいクラッチセンターロックナット(写真左・矢印部)は、材質と形状が異なる油冷GSX-R用(右)を流用することで対応。この部品の緩みは、クラッチの異音やクラッチハブの破損、さらにはエンジンブローにつながる可能性がある。

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矢印部のクラッチセンターロックナットが非常に緩みやすい。 [写真タップで拡大]

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材質と形状が異なる油冷GSX-R用を流用。 [写真タップで拡大]

キャブレーター:ラバーパーツの劣化に要注意

固有の弱点ではないものの、通路の詰まりやラバーパーツの劣化、同調不良など、キャブレーターが本来の性能を維持していない個体は多い。幸いなことに、補修部品は現在でもほとんどが入手可能だ。

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イグニッション:機械進角こそカタナの味!

デジタル進角を採用する国内仕様(SR/SY)は、騒音規制に対応するため3000~4000rpmに谷がある。輸出仕様の機械式ガバナーに変更することで解消できるが、パーツは既に廃盤。ユニコーンの速度リミッターカットは、この輸出仕様に近いフィーリングを実現しているという。

フレーム:侵入した水が溜まる?

すべての個体ではないが、上部のわずかなすき間からスイングアームピボットプレート内に入った水分がフレームを腐食させることがある。この問題には下部にドレンを設けて対処。

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ブレーキ:使い方で十分な制動力

SYを除くカタナのブレーキは、現代の基準で考えると物足りなさを感じる。とはいえ、「当時の基準に従ってリヤブレーキをきちんと使えれば、ノーマルでも制動力は十分ですよ」(池田氏)

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チェーン/ベアリング:現代の高機能部品に

ドライブチェーン+スプロケットは630→530に変更するのが定番。車体各部のベアリングは純正にだわらず、低抵抗品やシール付きなど、現代の高性能品を使用したい。

スズキGSX1100Sカタナ完調術〈プロに学ぶ'80s神名車メンテナンス〉
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クラッチ:アシストクラッチは外したい

操作感が著しく悪いパワーアシストクラッチは撤去が一般的。ユニコーンのクラッチ3点セット(ワイヤ/レリーズ/レバー)を導入すると、操作力はノーマルの約1/3 になる(国内モデルの場合)。

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タイヤ:新車指定はチューブタイヤだが…

最終型SY以外の純正タイヤはチューブタイプだが、ユニコーンではほぼ100%のユーザーがチューブレス仕様を選択。その際はビードにシーラーをしっかり塗布。なお同店の推奨タイヤはブリヂストンBT45V/46V。

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SL/SMがお薦めも最優先は程度。人気のファイナルは今後が不安

’70~’80年代に生まれた日本車は、初期型と最終型の人気が高騰するケースが少なくない。とはいえカタナの場合は、初期型SZと2代目SDの前期型、そしてファイナルエディションのSYは専用設計されたパーツが多いため、維持の容易さという面では部品の流用が利く他の年式に軍配が上がるようだ。

ユニコーンのオススメは、各部を熟成しつつ初期型SZのディテールを持つアニバーサリーモデル・’90年型SMと、その継続生産仕様であるSL。日本仕様として’94~’99年に販売されたSRもアリだが、最高出力が輸出仕様より16ps低い95psで、180km/hリミッターを装備するため、人によって評価が分かれるようだ。

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’90 SUZUKI GSX1100SL/SM

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【初期型ジェネレーターは廃盤】初期型用ジェネレーターはすでに廃盤。取り付けボルトのPCDが異なるため、後年式車用の流用はできない。 [写真タップで拡大]

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【ファイナルエディション専用品は欠品チラホラ】SYは純正パーツの欠品が増加中。足まわりは他の年式との互換性がないため、社外パーツの流用も難しい。 [写真タップで拡大]

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【別体ステップが仇に?】SYのタンデムステップブラケットはボルト留めの別体式。振動の影響で、マフラーにクラックが入りやすい。 [写真タップで拡大]

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【“フルパワー化”は個別に対応】国内仕様フルパワー化に有効なユニコーン製セッティングキット(廃盤)。現在は車両状態に応じた個別対応を行う。 [写真タップで拡大]

純正部品は約7割が供給中だが、ストックはしておきたい

’00年まで販売が続いただけあって、’80年代初頭に生まれたモデルとしては、カタナの純正パーツ供給状況は良好な部類。現在でも約7割が入手可能だ。もっともここ数年を振り返ると、欠品は着実に増えているし、価格はかなりの勢いで上昇している。「当社では定期的にスズキ側の在庫状況を確認して、数が減った部品に関してはクラブのメンバーにお知らせして購入を薦めています。今の時点で押さえておきたいのは、エンジン左側のジェネレーターカバーとウインカー。中でも破損が多い前者に関しては、コスト面からリプロパーツにはなかなか着手しにくいので、オーナーになったら1個はストックしておくべきでしょう。なお現在の当社では、廃盤になったサイドカバーのリプロ品を検討中です」(池田氏)

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【純正スタイルにこだわるなら】埋め込み型などの社外品に変更という選択肢もあるが、ノーマル派ならウインカーもストックしておくべき。 [写真タップで拡大]

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【特徴あるサイドカバーは廃盤】サイドカバーは独創的にして複雑な形状。リプロパーツの生産には、相当なコストがかかりそう…。 [写真タップで拡大]

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【リプロ困難な大物金属部品】ジェネレーターカバーは転倒時に破損しやすいせいか、在庫数は減少中。上で触れたようにガード装着が望ましい。


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