新型カタナの登場を機に押さえたい パート4

【原点】GSX1100S KATANA(カタナ) スポーク仕様の正体に迫る

2018年10月2日、独インターモトショーでスズキが2019新型KATANA(カタナ)を正式発表したのは周知の通り。それにともない、当WEBではこれまでカタナの原点をおさらいする特集を展開してきているが、今回のは変わり種。当時本誌スタッフのIが、偶然入手したスポークホイール仕様のカタナの正体に迫った記事を掲載する。 ※ヤングマシン2007年5月号より

偶然に出会ったスポーク仕様の正体が知りたい

原付の免許を取ったばかりの高校生の時、中古の原付を探して中古車雑誌をめくっていた。手にした雑誌で特集していたのがカタナ。バイクに興味がなかった僕は、このスタイルにやられてしまい、免許取得を決意。初めて手にしたバイクが、既にカタナだった。

そして、このスポーク仕様を手に入れる発端は3年前。マフラー以外はノーマルのSZ(初期型)を購入した事に始まる。コイツが高速走行中にエンジンブロー。ブローしたエンジンを直す際、ボアアップなど、自分の納得いくエンジンに組み上げようと思ったのだ。そしてこのエンジンに付けるために用意したのが新品のVM33キャブレター。この「キャブでは100回以上のセッティングを行ったが、今度はスロットル全開即焼き付きという事態に。そうした結果に落胆していたある日、ネットサーフィン中に珍しいカタナが売られているのを発見。スポークホイールが装着され、キャブは外されていたが、スロットルワイヤーが2本あることから純正VMキャブ装着車に違いない。そいつを一目見たいと思い、ある週末にその店に足を運んだ。ダメ元で値段を尋ねると、現状渡しなら想像以上に安い。車体から外され、保管されたVM32のキャブレターを手にした時、心は決まった。メーカーがセッティングを出したVMキャブのカタナを走らせてみたかったのだ。

納車時は不動だった8年以上前のバイクは、整備を終えると想像以上に走った。いや、ボアアップしたSZより、確実に速い。うっすらと記憶にあるのは、かつて中古車雑誌で見かけたスポーク仕様。スタンダードよりパワーが出ていると書いてあったような記憶がある。しかし今となっては、それを確かめる術は、 ない。ネットで調べると、海外サイトにわずかにスポーク仕様の姿が散見されるが、どういう素性のバイクかまではわからない。スズキにも問い合わせたが、輸出仕様で資料がないとの回答。このカタナの素性がますます知りたくなった。 ※レポート:I(当時ヤングマシンスタッフ)

【SUZUKI GSX1100S KATANA<SXZ> 1982年】2007年当時、本誌スタッフIが手に入れたスポークホイール仕様の初代カタナ(SXZ)。VMキャブなど一般的に流通したSZ(初代)と異なる部分が多数見受けられる。

マニュアルにあるSXの文字を追う

まずは、GSX1100シリーズが収められている、サービスマニュアルを確認してみることにした。初期型SZが掲載されているページの所々に、わずかだが「SX」の文字が見られる。この文字を追っていくと、スタンダードとの仕様の違いがおぼろげながら見えてくる。タイヤサイズ、カムシャフト、クラッチ板の枚数、キャブレター、プラグの熱価などがそれだ。この他、所有するもう1台のSZと比べてみると、スイングアーム、エアクリーナーボックスの加工、メーター(レッドゾーンの位置)なども異なっていることが確認できた。SXZのスタンダードとの一番の違いはスポークホイールであるから、タイヤサイズをまずチェックしてみる。

実車でSXZのRホイールサイズを見ると、リム幅は3.50インチだった。スタンダード(SZ)のカタナのRホイールリム幅は2.50インチ(1100、1000共通)であるから、 SXZのホイールのリム幅は、スタンダードより明らかに太い。それにも関わらず指定サイズは、SZよりも細いものだった。これは実車のホイールが純正品という大前提が必要だが、海外サイトなどに散見されるスポーク仕様のカタナと見比べても、純正のスポークホイールであることはほぼ間違いないはずだ(ただ、何らかの確証は欲しいところだが…)。

ここで気付いたのが、当時の他メーカーのフラッグシップマシン達のタイヤサイズ。SXZの実車のリヤタイヤサイズは、CB1100Rや Z1100Rなどと同じなのであ る。つまりSXZは、当時の他メーカーのフラッグシップを意識して作られた、という推測が成り立つ。

左列はフロントで右列がリヤ。F19インチはSZと同じだが、リヤは17→18インチとなっているSXZ。リム幅も太くなっているが、これが純正仕様なのかはマニュアル等の公式資料では確かめられなかった。

上がSXZで下がSZのメーター。SXZの実車に搭載されていたメーターのレッドゾーンは9500rpmになっており、500rpm拡大されているのが分かる。

SZを凌駕するSXZの実力

このSXZを入手した当初の目的であるVM32キャブは、スライドバルブが固着したり、フロート内に大量のカビがあったりと、まったく使い物にならなかった。そしてOHの際、キャブを組み上げる時に必要なサービスマニュアルのセッティングデータが、おかしなことに気付いた。VM32SSのパイロット系は、パイロットジェット、パイロットスクリュー(PS)、エアスクリュー(AS)から成り立っている。しかしPSとASの 戻し量が全く記載されていないのだ。 ASの戻し量は、VMキャブレター本体の打刻を何とか見つけ出し、見当がついたが、依然、PSの戻し量はわからない。その上VM32SSにはあるはずのないパイロットエアジェットの番手が記載されている。

そこで最終的に、このキャブの生産メーカーであるミクニに望みをかけた。こちらも20年以上前のキャブということで、当初は調べようがな かったようだが、OEM製品のVMキャブでボア32mmの4連キャブは、スズキ、カワサキを合わせても、カタナの1000と1100のVM32SSそれ一つしかなく、そこから古い図面データを探し出して頂けた。

PSの戻し量は3/4が正解。早速そのセッティングで走行してみる。VM32というキャブはすごい。BS34ではスロットル全開でも届かない速度域に、スロットル全開でなくても届いてしまう。1261㏄にボ アアップしているもう1台のカタナ (SZ)をも凌駕しているのだ。メー カーがセッティングを出したVMキャブのカタナは、想像以上に素晴らしかった。SXZのパフォーマンスはBSキャブの1100SZを明らかに上回る。スポークホイールに対応するタイヤが、当時のフラッグシップと共通ということなら、このカタナの存在意義はレース参戦のベース車ではなかったのか。今のところ、それを確かめる術はないのだが。

記録にほとんど残っていないSXZはレース参戦用ベース車なのか? 当時、ホンダにはネイキッドスタイルでオーストラリアのレース用に輸出されたCB1100RB1(1981年)が存在していることからもあり得ない話ではない。

ミクニのVMキャブ(右)は負圧式のBSタイプよりもパワーを引き出していることは、本文でも触れた部分。スイングアームは、SZの角材→丸パイプ状になっているのもこの車両の特徴だ。他にもエアクリーナーボックスの吸入口が拡大されていた。

ニュース提供:ヤングマシン
「【原点】1982年初代GSX1100S KATANA(カタナ)を振り返る」記事はこちらへ。
「【原点】これが本家3.0?! 1984年型GSX750Sを振り返る」記事はこちらへ。

いち

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本誌編集長。雑誌は生き残りタイアップ全盛期だというのに、ひとり次期型ネタを嗅ぎまわって反感を買う現代のスクープ魔王。
■1972年生まれ
■愛車:BMW R100GS(1988)

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