世界中で話題を集めた250cc4気筒・ニンジャZX-25Rがついに発売された。2輪史に名を残すことが約束されたニューモデル、それを生み出したカワサキのキーパーソン3名に開発秘話を聞くことができた。前編・開発プロジェクトリーダーの話に引き続き、後編では車体設計担当と開発ライダーに話を聞いた。
「剛性としなやかさをうまくバランスできました。2気筒とは違いますよ」
かつてはハイパフォーマンスモデルの代名詞でもあったアルミツインスパーフレームを差し置いて、ここ数年は高張力鋼によるトレリスフレームでスマッシュヒットを連発しているカワサキ。ZX-25RがZXR250と同じアルミフレームではなく、トレリスフレームを採用したのはごく自然な流れと言っていい。
異なる径と厚さを持つパイプと、モナカ形状のスイングアームピボットセクションを組み合わせるという構成で、同社の解析技術によって剛性と柔軟性を絶妙にバランスさせているとのこと。車体設計を担当した山東雅弥氏は次のように語った。
「担当に決まったときは期待感しかなかったですね。ZXR250がラインナップからなくなって20年以上が経過していますし、また個人的にもバリオス-Ⅱを所有しているので、自分が乗りたいと思えるものを作りたいなと。まずフレームについては、もちろんアルミも検討しました。たしかに高速安定性が高いというメリットはあるんですが、高周波をフィードバックしてそれが違和感になるんですね。スチールなら”しなり”を極力有効に使えると判断して、このトレリスフレームになりました」
一口にトレリスフレームと言っても、カワサキの場合は車種ごとにレイアウトが大きく異なり、同じ250ccでも2気筒のニンジャ250のフレームとZX-25Rとでは全く異なる。エンジンの大きさが違うのだから当然ではあるのだが、25Rの方が剛性が高いであろうことは、使われているパイプの数やスイングアームピボットセクションの面積からも十分に伝わってこよう。
「SBKに参戦しているZX-10Rの設計思想をベースにしています。高速域での安定性を確保しつつ、サーキットなどスポーツ走行での軽快なハンドリングを目指しました。エンジンの幅が広いのですが、2気筒から乗り換えたときに違和感のないように、ニーグリップエリアをスリムにするのに苦労しましたね。それと、車体剛性についてはかなり高くなったと思います。
リヤサスペンションはZX-10R譲りのホリゾンタルバックリンク式を採用しました。ショックユニット上側をマウントしているのがアッパークロスブラケットで、その周辺の剛性をかなり調整しました。ここは軽快なハンドリングの要となる大切な部分なのです」
サスペンションについては、フロントフォークにショーワのSFF-BPを採用している。これは左右で機能を分離し、さらに大径ダンピングピストンを採用したフォークで、ストローク初期のスムーズな動きが特徴。調整機構はないものの、250ccクラスでこれが採用されるのは初めてとなる。
「重心位置に関しては、ロール軸に対してニンジャ250よりも上げています。エンジンの搭載位置も当然上がるので、燃料タンクの容量を減らさないように電子部品のレイアウトを工夫しました。それと、前後輪分布荷重についてはフロント側を増やしています。一次旋回への移行を早めに出せるような重量配分ですね。ディメンションで旋回のしやすさを狙いつつ、高速安定性も確保しなければならないので、スイングアーム長やホイールベースを長めにしたり、最終的にトレールで微調整しています。
2気筒のニンジャ250はツーリングを主体として快適性を求めているのに対し、ZX-25Rはサーキット走行も狙っている。ですので、よりクイックに曲がれるようにしつつ、さらに高速安定性も高めています。同じ250ccですが、乗り比べるとハンドリングはけっこう違いますよ」
スイングアームは最初からスチールで決まっていたという。独自の解析技術を持つカワサキによる、ZX-10R譲りのハンドリングに期待が高まるばかりだ。
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