“オフロードのヤマハ”が満を持して送り込んできたアドベンチャーツアラー「テネレ700」。その実力・真価を確かめるべく、同じ21インチのフロントタイヤを備えたクラス最強・ホンダCR1100Lアフリカツインとの試乗比較を行った。前ページのオンロードテストではアフリカツインに軍配が上がったが、本丸オフロードでのパフォーマンスはいかに?
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【テスター:谷田貝 洋暁】ちょっと前まで初心者向けバイク雑誌の編集長だったが、決してビギナー向きではない突飛な内容、派手誌面を求めるキャラのためフリー化。だが最近はYouTuberになりつつあるとかないとか…。ちなみにレース経験などはほとんどない、フツーのツーリングライダーである。
電子制御はまだいらない、その伊達を通せる喜び
(前ページより続く)
さて、ここからはクローズドのオフロードセクションでの試乗。タイヤはもちろんノーマルのまま。アフリカがミシュランのカルーストリートで、テネレがピレリのスコーピオンラリー・STR。空気圧は両車とも規定空気圧のままとした。まずアフリカ、次にテネレの順に走ってみる。
その結果、テネレでコースインした瞬間にアフリカとの大きな違いを感じた。テネレの方がフロントまわりが圧倒的に軽いのだ。アフリカツインで走るオフロードコースの印象は、あくまで”走れないことはない”というもの。7段階設定のトラコンは介入度を一番低くしてはいるものの、サンド質の路面では完全に切りたいとは思わない。大きく重い車体の最終的なマージンにトラクションコントロールをとっておきたい…、そんな気分だ。
アドベンチャーツアラーのなかではオフ性能が高いアフリカツインではあるが、気持ちよくスライドコントロールできるのは電子制御あってこその部分もある。
一方のテネレ。トラコンが一切ない車両でコースインすることに最初こそ躊躇したが、インしてしまえばそれがまったくの杞憂だったことにまず驚かされた。まるで枷を外されたかのようにフロントまわりが軽く感じるのだ。ステップコントロールにしても、ハンドルの抑え込みにしても、アドベンチャーツアラー特有の重さは感じず、半分の労力でコントロールできる。そんな風に感じるくらい軽い。
さすがは”オフロードのヤマハ”といったところだ。市場からはWR250Rがなくなり、セロー250もファイナルエディション。’21年には生産終了を迎えることになる。オフロードのヤマハは、いったいどうなるのだ? と、一人のオフロードファンとして心配していたが、テネレ700こそがヤマハの答えだったのだ。
テネレ700。こいつは紛れもなくアドベンチャーツアラーの形をしたオフロードバイクだ。電子制御なしでここまでしっかりとしたオフロード走行ができるとは正直考えていなかっただけに、度肝を抜かれた。「まだまだトラクションコントロールなしでイケるでしょ? 電子制御に頼ってアクセルを開けるのはもう少し体力が落ちた後でいいんじゃないの?」 テネレにそう言われている気がする。ネクストホライズン。新たなる地平を夢見る余地が、まだまだ僕にも残されているようだ。
200kg以上の車体によるジャンプを軽々いなすフロントサスペンションに脱帽。しかも明らかにフロントまわりが軽くコントローラブルに感じるのはテネレの方なのだ。
フロントフェンダーのタイヤとのクリアランスはノーマルで4cmほど。しかし、ブロックの高いタイヤ、また泥詰まり防止のために、さらに5mm(実測)ほど増やせる仕組みを持つ。
激しいオフロード走行した際に、フロントフォーク内の空気が熱膨張して動きが渋くなる。その圧力を抜くためのネジ穴は、オフロードバイクならでは。もちろん減衰調整は伸び側、圧側とも可能である。
スタンディング時のマシンコントロールで一番の要となるのがフットペグだ。幅55mm、長さ80mmとかなりのワイドなステップを採用し、ラバーパッドも工具なしで取り外せるようになっている。
スクリーンはもちろん、サイドのスポイラー部分まで、すべてクリア素材にすることでフロントタイヤのすぐ前の路面状況がライダーの視覚に自然に入ってくる。視界確保はオフロード走行ではかなり重要。
オフロード性能はテネレの勝利!!
アフリカツインは、走り出した瞬間フロントにアドベンチャーらしい重さを感じるのに対し、テネレの車両感覚はかなり軽快。オフロードバイクのステップコントロールができるライダーなら、トラクションコントロールがなくてもボディアクションできっちり抑え込めるようになっている。しかもパワー感、重さがコントロールできるギリギリのラインを突いてくるから面白い!
比較試乗まとめ:同じアドベンチャーだが実はキャラクターが真逆!?
21インチ・ガチオフロード系アドベンチャー対決。わかったのは、アフリカは”オフロード寄りのアドベンチャーツアラー”で、テネレは”アドベンチャーツアラーよりのオフロードバイク”ということ。アドベンチャーツアラーとしてのロード性能を最低限確保したうえで、残りのすべてをオフロード性能へ注ぎ込んだ。そんな気合の入った開発がなされている。
●文:谷田貝洋暁 ●写真:真弓悟史 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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