前を見たまま全方位をカバー

クロスヘルメット クロスワン実走レビュー【日本発のスマートヘルメットで未来が見える】

『ヤングマシン』’20年6月号で紹介し、大いに反響を呼んだスマートヘルメットのX-1(クロスワン)。今回は公道でテストし、実際の使い心地を試してみた。後方のカメラ映像やナビ情報がディスプレイに浮かび上がる未体験アイテムの真価はいかに?

前を見たまま全方位をカバー。移動がさらに楽しくなる

ヘルメットに内蔵された小型ディスプレイに映像や情報などを映し出すスマートヘルメット。その決定版となりそうな製品が「X-1」だ。日本のベンチャー企業であるボーダレスが開発し、北米では既に’19年末から販売中。国内でも’20年11月中旬頃から発売開始予定で、5月から実施されたクラウドファウンディングでは1億円超もの支援が集まるほどの注目ぶりだ。

【ボーダレス クロスヘルメット クロスワン】●規格:DOT SG JIS(予定) ●帽体:レキサンポリカーボネート+ABS ●重量:1780g ●メインプロセッサー:Quad ARM Cortex A53,1.2GHz ●フラッシュストレージ:8GB ●無線通信:2.4GHz ●HUD解像度:0.23nHD+resolution(3281ppi) ●フル充電時の稼働時間:4~6時間 ●サイズ:M(58-60㎝)、L(61-63㎝) ●色:ラスターブラック ●税込価格:18万9000円 ●発売:’20年10月予定

X-1はリヤカメラを搭載し、中央のHUD(ヘッドアップディスプレイ)に後方の映像やナビ情報などを投影。感覚的には映像が横幅6〜7cmで上方に浮かんで見える。カメラは広角170度と広い範囲をカバーしており、開放的なアイポートと合わせ、前を向いたままほぼ360度を見渡すことが可能だ。左右のミラーを見ずに済み、死角が消えるのは安全面でプラスになる。額の映像は、クルマのルームミラーのように必要な時だけ見ればよく、視界のジャマにならないのがいい。

HUD内の画像は説明用の合成(実際の景色とは異なる)。後方画像の一部がHUDの形に欠けているが、これも合成の都合。肉眼ではHUD内に長方形に浮かび上がるのだが、写真で表現するのは難しい…。

ただし映像が見にくい場面もあった。夜間など周囲が暗いとクリアに見えるが、明るいとHUDが透けて見にくくなるのだ。これは、前方の視界を妨げないための仕組み。コンセプト通りではあるものの、国内発売に向けて調整を検討中とのこと。現状でもシールドをスモークに変更するか、HUDの表側を黒くすれば問題ないという。

被り心地は、かなり新感覚。帽体内部に大型のスピーカーが内蔵され、本格的な密閉型ヘッドホンのように耳を包み込む。額、頭部まわりを中心にサポートし、ホールド感は薄めの印象だ。重量は1920gで、内蔵バイザー付きのシステムヘルメットにインカムをつけた程度の感覚。重さはあるものの、重量バランスは良好で、特に違和感はない。前後に長いフォルムの恩恵か、高速道路では良好な直進安定性を体感。不快な風切り音もなかった。

音へのこだわりにも感心した。スマートフォンとブルートゥース接続して音楽を聴いてみると高音も低音もしっかり出て非常にクリア。スピーカーは、高級ヘッドホンと同等の品質で、音の広がりも素晴らしい。さらにノイズキャンセル機能も搭載。アプリで調整すると、エンジン音や風切り音が減り、ロングランでの疲れにくさに貢献してくれる。逆に増幅して、エンジンの鼓動感などを強調することも可能だ。

安全性を高め、バイクでの移動を一段と楽しくしてくれるX-1。確実に従来のヘルメットにはない魅力が詰まっていた。今後、さらに改良を重ねるというから期待は高まるばかりだ。

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