新型コロナ禍での社会生活や経済活動が今後も続いていくと仮定すると、3密になりやすい満員電車・バスを避けるための感染対策として、通勤・通学といった移動の足に原付バイク等のパーソナルモビリティを活用しようと考える人が増えるだろう。そうした場合、やはり問題になるのは、現在の駐車環境だ。
●文:田中淳磨(輪) ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
新型コロナ感染対策としてのモビリティ活用が求められている
2006年の駐車場法改正、放置駐車違反取締りの民間委託により、バイクは街中で気軽に乗れるモビリティではなくなった。バイク駐車場は足りていないし、欲しいところにないような状況だ。箱モノとしての行政の取り組み、民間駐車場事業者の増設、商業施設駐車場への二輪スペースの確保にはすでに限界が見えており、今後数年で駐車環境が劇的に良くなる見通しはない。停められないから乗らない、乗らないから駐車場利用者が増えないという負のスパイラルに陥っている。
ここではまず、行政側が発想を転換することが必要だろう。現在の「駅前や繁華街における放置駐車対策としての駐車場整備の必要性」から、新型コロナ禍における「通勤・通学など区域内流入者への(からの)感染対策として、パーソナルモビリティの円滑な運用を促進するために駐車環境を整える必要性」に転換する。そのために必要な施策として提案したいのが次のものだ。
[1] 公有地への駐車を可能に
東京都で言えば、都立公園や区立公園といった公有地、区民ホールなどの公共施設、東京国際フォーラムなどの第3セクター施設、さらには、都道や区道の車道(歩道)などのデッドスペースに駐車可能スペース(枠)を設ける。2006年以前のように無造作に停めるのではなく、スマホアプリを使い、スペースの予約や支払いといった手続きをMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)化することで、高度な駐車管理環境を実現するといったビジョンが必要となる。人通りの多い歩道への駐車でも、エンジン車両のようなマフラー熱といった危険性が少ないことから、東京都が推進するゼロエミバイク(電動バイク)の普及促進とも親和性が高い。
すでにシェアサイクルに関しては、都立・区立公園内でのサイクルポート設置が許可されている。これら自転車シェアリングの主体は区であり、新宿区の場合、その目的は、区民の移動手段の確保、地域・観光の活性化、まちの回遊性の向上といったものだ。新型コロナ禍においては、区外からの流入者に対する駐車環境の整備という視点を新たに加えるべきだろう。
[2] 宅配・医療従事者を除外する
もうひとつは、デリバリーピザなどの宅配従事者、病院勤務等の医療従事者といった新型コロナ禍の社会で必要とされる業務に携わる者のモビリティは放置駐車違反の取締りから除外することだ。こうした視点もとても重要とされるだろう。
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