日本車史上に残る最高の1台を問えば、間違いなく1位はこのバイクだろう。カワサキにとって初の完全自社開発4ストロークエンジンを搭載し、希代の名車として絶版車界で50年近くも不動の人気を誇るカワサキZ2/Z1。そのエンジンの核心部・最重要部品であるシリンダーヘッドをメーカー自身が復刻させた。日本製4気筒のルーツの復活に喝采を送りたい!
●文:栗田 晃 ●写真:モトメカニック編集部/川崎重工業 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
名車Zのシリンダーヘッドをカワサキ自身が完全復元
’70年代のハイスピード時代到来に合わせて開発された900スーパー4=Z1と、日本市場向けの750RS=Z2は、共に時代を象徴する人気モデルとなった。その後、逆輸入車&空冷4気筒ブームをきっかけに人気が再燃。今ではフレームとエンジンがあれば車体一台完成できると言われるほどリプロパーツも充実している。
しかしエンジンパーツ、中でも4ストローク直列4気筒エンジンのシリンダーヘッドは誰もが復元できるものではない。経年劣化やチューニングによりダメージが進行し、復活を諦めざるを得ないZも多い。メーカーの第一の役目はニューモデルを開発し販売することだが、1台のバイクを長く愛用し続けるオーナーの期待に応えることも重要だろう。
そんな中で「メーカーでなければ作れない部品」としてカワサキが再生産を決めたのが、’72年のオリジナル図面を元に、’78年のKZ1000までの改善点を巧みに取り入れたZ2/Z1用シリンダーヘッド。仕上がりは純正そのもので、吸排気バルブやカムシャフトなどは既存の丸Z系用が使えるから、修理用/カスタム用いずれにも活用できる。
「カワサキ ヘリテイジ」で検索できるインターネットの特設サイトから注文/決済するのもカワサキ初の試みで、1000個の生産個数も順調にその数を達成する勢いだ。生産台数や残存台数、なによりコアなファンが多いZだからという理由もあるだろうが、1台でも多くのZが未来に継承されるようにメーカー自身が立ち上がった決断は、賞賛されるべきものだ。
カワサキ900スーパー4 Z1:二輪の歴史を塗り替えた伝説の空冷フォア
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【KAWASAKI 900super4 Z1】■空冷並列4気筒DOHC2バルブ 903cc[746cc] ボア×ストローク66×66mm[64×58mm] 圧縮比8.5[9.0] 最高出力82ps/8500rpm[69ps/9000rpm] 最大トルク7.5kg-m/7000rpm[5.9kg-m/7500rpm] ※[]内は750RS(Z2)
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【世界最良を目指したカワサキ初の直4ユニット】元々は750ccで開発が進んでいたものの、’68年の東京モーターショーでホンダがCB750フォアを参考出品したことで仕様を変更し、ボアストローク66×66mmの903ccエンジンとしたことはZ1開発時の有名なエピソード。日本市場向けのZ2は750ccの中でベストのバランスを追求し、ボア/ストロークともZ1とは異なる専用設計となったが、シリンダーヘッドは共通部品を使用した。
第1ロットは即完売。反響次第ではヘッド以外も?
’19年3月1日、SNSページへの投稿で唐突に発表されたZ2/Z1シリンダーヘッドリバイバルプロジェクト。当初は「まさか本当に!?」という声もあったが、製造工程や進捗状況の投稿で事実だと知れ渡るとアクセスも急上昇。’19年10月の東京モーターショーで完成したヘッドが展示され、’20年1月6日のネット注文初日には、サイト開設後わずか2時間で銀ヘッドの第1ロット予定数が完売となった。
【様子見の銀? 本命の黒!? どちらも大人気】Z2/Z1のエンジンと言えば黒塗装のイメージが強いが、銀が先行販売された。ところが銀も即完売でカワサキ関係者は大いに驚いたそうだ。●適合機種:Z2系(’73〜’78年) Z1系(’73〜”77年) Z1000系(’77〜’78年) ●生産個数:1000個 ●価格:銀25万3000円/黒26万4000円
(左)製造メーカーのカワサキにしかできない部品を「MADE IN JAPAN」の刻印で主張。(右)SNSで発信される開発の進捗が期待値をアップした。出荷は1月27日から開始している。
歴史的名車・Z2/Z1を蘇らせるシリンダーヘッド再生プロジェクト。次ページでは当時物のヘッドと比較しつつ、その最強仕様について解説する。
丸ヘッド時代の変更点を凝縮した最強仕様 (※前ページより続く) 昔あったものを復刻する際に、現代の開発者や技術者がどこまでアレンジするかは重要な要素となる。およそ半世紀前の工業製品ならば、あれこれ手を[…]
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