三ない運動をやめて”乗せて教える”交通安全教育に転換した埼玉県。’19年から県内各地で講習会を開始し、’20年からはモニタリングが始まる予定だ。「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」で会長を務めた稲垣具志助教の話を続ける。
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Q:埼玉県での事例は、他県へのモデルケースとなり得るでしょうか? 稲垣氏:教育長から課長クラスまで、埼玉県での議論の内容、その結果をどれだけ理解いただけるか、また、自分たちの管轄下での、歩行者や自転車[…]
生徒の行動を変えられるか? がカギ
Q:モニタリングについて、またその組織について教えてください。
稲垣氏:まず、交通安全教育と安全運転講習が本当に参加している生徒たちの行動を変え得るのかどうかです。実技と座学がリンクした状態で講習が進んでいるのか。あるいは、今年度のモニタリング委員会では難しいですが、今まで問題になっている”隠れ乗車”していた子たちがどれくらい変わったのか。
また、事故が起きているのであれば、その状況は徹底的に考えなければいけません。その問題は何だったのか? 教育側の問題や本人の問題もあるでしょうけど、たとえば高校生に限らずバイク事故がどうしてもそこで起きてしまうような道路環境であるならば、二輪車事故抑止の観点から是正しないといけません。規制が要因となっている場合もあるので、モニタリング組織の中には道路管理者も入るべきです。さらに、埼玉県警にも参加してもらうなど、高校生の安全な二輪車の利用というのをひとつの転機として、二輪車の通行環境や走行環境、利用環境のようなことを考える組織でもあるべきです。
Q:モニタリングにあたり、成果や指標についてはどうお考えですか?
稲垣氏:難しいですね。定量的にベーシックな話をするのであれば、受講者数です。バイクに乗りたいという子の数、隠れ乗車をしていた数、さらにヤンチャな子がどれくらいいて、そういう子たちも自動車教習所で白バイ隊員から指導を受けたという数です。また、その中のアンケートでどのようなレスポンスがあったのかとか。
教育は、効果を図る指標というのが本当に難しいんです。特に交通安全教育は試験をやるわけではないので、平均点が上がって良しというものでもありません。本当にちゃんと見ようと思ったら、その子をしっかり追いかけて交通安全行動がどれくらい促進されたのかをモニタリングする必要があると思います。
Q:定性的な調査も重要ということですね?
稲垣氏:2年、3年と経った時に、令和元年の受講生に対して卒業時にアンケートを実施するということもあり得ます。とにかく、当事者を抜きにした評価をしてはいけないと思います。なお、事故が起きたのか起きてないのかというのは基本中の基本として押さえるべきところかと思います。
三ない運動のように、PTAから始まって教育現場に丸投げしていたものがなくなると、実は家庭に帰ってきます。なので、家庭でどれだけ交通安全教育をやっているのかというところも重要です。埼玉県では免許取得時やバイク購入時に誓約書を書いてもらいますが、その時に、親も同じリスクを背負うんです。生徒だけでなく、家で「乗っていいよ」と許可するので、家庭での交通安全教育が促進されているのかというのも追いかけたいところです。
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