“闘う4スト”ことKLX250の生産終了から3年、カワサキが久しぶりに国内の軽二輪クラスのデュアルパーパス車を発売した。新開発の空冷シングルエンジン&フレームを採用した1台で、クローズドコース専用モデルと同時に開発されたことからも、ヤマハ・セローとは目指している方向性が異なることが分かる。試乗してその実力を測った。
[◯]本格的な足まわりで攻めのダート走行が可能に
ずいぶんと大きなヘッドライトが印象的なKLX230。完全新設計のエンジンは232ccの空冷SOHC2バルブシングルで、最高出力は19psを公称。これをフルサイズと呼ばれるフロント21インチ/リヤ18インチホイールの車体に搭載する。
スペックが近しいことから、直接のライバルはヤマハのセロー250だと思われがちだが、またがった瞬間からコンセプトの違いを実感する。足着き性のいいセロー(シート高830mm)に対し、KLXはシート高が885mmと高く、しかも乗車1Gでの沈み込みも少ないため、信号待ちでは緊張感が漂う。車体が軽いので慣れれば問題ないが、乗り降りも含め最初は戸惑う可能性大だ。
FIを採用するエンジンは非常に元気がいい。そう感じさせる最大の要因はレスポンスの良さで、スロットルの開け始めから快活に吹け上がる。それと、バランサーを採用していることもあって、単気筒ながら高回転域の振動は過大ではなく、高速道路では100km/h巡航も十分にこなせる。ただし、高速域での余裕となると、排気量がほんの少し大きいセローに軍配が上がる。それも含めてコンセプトの違いが明瞭だ。
舗装路の峠道では、大きなピッチングと軽い車体を生かすことで、スーパースポーツ顔負けの高い旋回力を引き出すことが可能。これについてはセローも同様ではあるが、KLXの方がサスセッティングも含めて車体がしっかりしている印象で、元気のいいエンジンと合わせ、スポーティさで上回っていると感じた。
もちろん、オフロードでの走りもいい。私はさほどダート走行は得意ではないが、それでもタイトなターンでテールスライドさせられるほどに車体とエンジン双方のコントロール性が優秀だ。加えて、ボッシュと共同開発し、カワサキ車では初採用となるデュアルパーパスABSの作動も違和感がなく、これもビギナーに自信を持たせる要因のひとつだ。
今回、高速を含む150kmを走行しての燃費は約31km/Lと良好で、経済性は高いと言えるだろう。ベテランのセカンドバイクとしても最適な1台だ。
[△]本格的に過ぎるため、足着きとロングに難あり
ポジション移動を優先したボディワークにより、どの位置に座っても足着き性はあまり良くなく、さらに座面も狭いため途中からお尻が痛くなった。ミラーによる後方視界の悪さも街乗りでの評価を下げる一因なので、あらかじめ知っておこう。
[こんな人におすすめ]セローよりもダート走行を楽しみたい人へ
クローズドコース専用モデルと同時に開発されたことからも、セローとは目指している方向性が異なることが分かる。とはいえ、かつてのKLX250よりも明らかに間口が広く、誰もがダート走行を楽しめる。余裕があれば1台欲しい。
●まとめ: 大屋雄一 ●写真: 真弓悟史
※取材協力:カワサキモータースジャパン
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