2017年の東京モーターショーで発表された立ち乗りモビリティ・ヤマハ トリタウン。当時は単なるショー向けのモデルかと思われていたが、実はスペックや耐久性もアップし、近未来のパーソナルモビリティとして量産化を視野に開発が進んでいた。電動バイクの可能性を探り続けるタレント・近藤スパ太郎がレポートする。
発表時から大きく進化!量産化を目指して開発中
2017年の東京モーターショーでお披露目されたトリタウンは、トリシティやナイケンに採用されるヤマハ独自のリーニングマルチホイール(LMW)技術を採用したフロント二輪/リヤ一輪の三輪立ち乗りモビリティだ。
トリタウンはバイクと同じように、ライダーが自分でバランスを取って乗る構造で、自立はしない。そのため、停車時は車体が倒れないようにするロック機能が付いている。つまり走行時には「立ち乗りでライダーの体重移動が必要」な乗り物なのだ。バランスや操作は難しくなく、5分くらいで乗りこなせてしまうほど簡単だ。最高速は25km/hだが、走行音がなく風を感じながら移動できるので気持ちがいいし、一緒に走っている人と会話が楽しめるのもいい感じだ。
直進時はバイクの走行感と変わらないのだが、特徴的なのがリーンする時の足まわりの挙動だ。リーンすると車体の傾きと連動して内側のステップが持ち上がり、外側が沈む。これはステップ部にもフロント部のLMWの動きに合わせた平行リンク構造を採用しているためだ。スキーのターンの時の膝の動きと似ていて、下半身の体重移動で操作する感覚はバイク以上に強く、慣れてくるとこの荷重移動がクセになる楽しさなのだ。
それから、旋回性能がとても高いことにも驚いた。コンパクトな車体に小径タイヤという理由の他にも、ナイケンと同じ「LMWアッカーマン・ジオメトリ」という平行リンク構造を採用しているからだそう。これは四輪車に採用されている前輪のステアリング機構で、ハンドルを切った際にコーナーの内側にあるタイヤの切れ角が大きくなるように動くメカニズム。コーナリング時にフロント二輪の旋回の中心点が同心円上に揃うため、より小回りができるという仕組みだ。
ヤマハの方によれば、トリタウンは量産を視野に開発が進んでいるそう。今回試乗したカラフルなものの他にも、黒やダークグレーの落ち着いたカラーもあった。今後は観光地の移動モビリティとしても活用したいそうだ。1回充電で約30キロ走るから、パーソナルモビリティとしては十分な性能だろう。
実は開発中の資料写真をチラリと見てしまったのだが、トリタウンよりも二回りほど大きな立ち乗りモビリティが、まるで高性能なスポーツバイクが高速でバンクしているかのような迫力の走行にビックリ。「えぇー、こんな走行ができちゃうんですか?」 スマートモビリティの未来には期待が持てそうだ。
トリタウンのディテールをチェック
バッテリーは脱着式リチウムイオン電池
380Whの脱着式リチウムイオン電池を搭載。外しても、車載したままでも充電が可能。バッテリーの脱着はロック機能付きで盗難も防止できるから安心だ。
楽しさ倍増の秘密はリーンした時の安定感
ステップ部にもLMWの動きに合わせた平行リンク構造を採用しているため、車体のリーンと連動してステップ部分が可動する。リーンの内側のステップは持ち上がり外側は沈む。味わったことのない感覚に最初は戸惑うが、慣れてしまうとクセになる楽しさだ。
出力500Wのインホイールモーター
インホイールモーターを採用してモーターの搭載スペースを確保。車体にはサスペンションがないため、スポークを採用することで衝撃吸収性を向上させる狙いもあるそうだ。原付一種のヤマハE-ビーノが580Wだから、この車格で500Wのモーターは十分なスペックだ。
フロント二輪の機構はNIKENと同じLMWだ
NIKENやトリシティに採用されている、転ばないバイクを目指してヤマハが独自に開発してきたLMW(Leaning Multi Wheel)のテクノロジーを、初めて電動モビリティにも採用した。LMWはコーナリング時にフロント二輪と車体を同調させてリーンさせる機能だ。
カードキーを近づけると車体の電源が入る
メーターにある電源マークにカードキーを近づけると、2〜3秒ほどで自動的に車体の電源が入る。アイドリング音が無いので起動した時の「ピー」という音と、メーターが光っている事が電源ON状態の目印となる。電源マークを長押しすれば、電源OFFとなる。
●文:近藤スパ太郎(環境番組のパーソナリティを担当したことを機に、電動バイクの強烈なパワーにひと目ぼれする。俳優・MCの他、企画プロデューサー、芸能プロダクションSPANCHOOSの代表を務める) ●写真:輪
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