二輪車の利用環境には課題が多い。特に、さまざまな課題の根本ともなっている「三ない運動」「駐車できない」という2つの問題について考える連載です。今回は、電動バイクを導入したとして現状ではどうなるのか? について考察します。
●文:田中淳磨(輪)
歩道の路上駐輪場に原付一種は停められない?
東京都が環境基本計画に則りゼロエミ・バイク(電動バイク)の普及に補助金を出しているのに「停められないんだから増えるわけないじゃん」という問題。今回は、歩道(路上)の駐輪場整備を進める新宿区交通対策課自転車対策係に話を伺ってきた。
【概 要】新宿駅周辺で歩道(路上)にある自転車等駐輪場が整備されている。以前は、自転車とバイクがひとつの枠の中にごちゃっと置かれていたが、今では時間貸しのサイクルラックが整然と並び、電子カードでも決済できるというスマートさだ。ただし、時間貸しのサイクルラックは全て自転車用で原付一種のバイクが停められる歩道上の駐輪場は定期利用スペースのみ。これは残念だ。法律的にはバイクも停められるはずだが……。
【経 緯】歩道上に自転車やバイクを停めるための「自転車等駐車器具(車輪止め装置その他の器具)」の設置が認められたのは平成18年(2006年)の道路法改正によるもので翌年1月4日から施行された。それ以前も歩道上に自転車等整理区画を整備することはできたが、装置や器具の使用はNGだった。なお、法改正では器具を設置する際の基準も規定されている。こうした動きは構造改革特区の第6~8次提案で要望されたもので「規制改革・民間開放推進3か年計画(再改定)」(平成18年3月31日閣議決定)において決定した。
【現 状】新宿駅の東口、西口ともにサイクルラックを利用した歩道の自転車等駐輪場が整備されたが、原付一種や自動二輪用のものは進んでいない。歩道上に白線で枠を取った定期利用スペースには契約ステッカーを貼った原付一種が置かれているが、定期利用は一年ごとの抽選制だ。区としては昔から残っている定期利用は減らし、今後は時間貸し利用に切り替えていきたい考えだ。また、時間貸し利用には区営のものと民営のものがあり、今後は民営に移行したいとのこと。新宿駅周辺には昨年8月時点で2682台の自転車駐輪場(歩道以外の駐輪場も含む。商業施設等は含まず)があるが、区としては「まだ足りていない」という認識だ。
【課 題】①そもそも、歩道の路上駐車場は、土地の少ない新宿駅周辺で「仕方なく設置されているもの」。本来は個々の商業施設等が用意すべきもの(附置義務)。なお、鉄道会社で区に土地を貸与しているのはJRのみ。②都道沿いなら東京都、区道なら新宿区、甲州街道(国道20号)沿いであれば国と管理者がバラバラで駐輪場設置の観点(景観重視で設置したくないなど)も異なる。③新宿駅周辺に停めたいというニーズが可視化できていない。見られるのは日本二普協の「バイク駐車場、ここにつくって! 要望フォーム」くらい。
【所 感】新宿区は放置自転車という既知の問題に対処しているだけ。根本的に変えるには、都市計画とパーソナルモビリティの関わりを再考する必要がある。つまり東京都だ。
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