オンロードとオフロードの双方をカバーし、安楽な旅性能を持つアドベンチャー。国産勢は、トレーサーを筆頭に舗装路での巡航性能を重視したモデルがメインストリーム。ヴェルシスにジャンル初の電制サス仕様がデビューした。一方で、オフ指向のモデルも増殖中。アフリカツインが人気を博し、新作のテネレ700もオフに強いキャラだ。
- 1 高速クルーズ向きから本格オフまで選び放題
- 2 HONDA CRF1000L Africa Twin/Adventure Sport/DCT[その名はダテじゃない]多彩な道に適応守備範囲が広い
- 3 イージーでスポーティ
- 4 KAWSAKI Versys1000 SE[プレミアムSUV]上質さを極めた電脳戦士
- 5 YAMAHA XT1200ZE Super Tenere[パワフル+質実剛健]旅をしたくなる万能選手
- 6 YAMAHA Tracer 900/GT[コクもキレもアリ]快適性だけじゃない
- 7 YAMAHA Tracer 700[珠玉の軽快ADV]日本仕様を熱烈希望!
- 8 YAMAHA Ténéré 700[真の冒険野郎候補]オンオフ成分を絶妙配合
- 9 HONDA VFR800X[爽快V4安楽仕立て]カジュアルにスポーツを
- 10 HONDA NC750X/DCT[ザ・コンビニエント]取っつきやすさ王者級
- 11 HONDA CRF450L[24㎰を扱い切れるか]オフ版のRC213V-S
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高速クルーズ向きから本格オフまで選び放題
安楽なライポジと長いストロークのサスによる快適な乗り心地、防風性能まで備え、ツーリングが得意なアドベンチャークラス。車体はクルーザーより軽快で、遙かにスポーティだ。
国産で多数派なのは、フロント17インチを備えた快速オンロード指向のモデル。19インチ以上でスポークホイールの車両はオフロード色の濃いキャラクターとなる。前者のオン指向では、このジャンルで珍しい直4を搭載したヴェルシス1000と、軽快なトレーサー900が代表格。高速道路でのハイスピードクルーズが大得意だ。
アフリカツインは、ライバルのR1250GSより軽く、F21インチスポークホイールなどでオフを考慮した設定。さらにオフ色が濃いのが新作のテネレ700で、ライバルより圧倒的に軽量コンパクトな車体が特徴となる。さらに別格なのがCRF450L。モトクロッサーに保安部品を装着し、公道での移動を可能にしたモデルだ。
HONDA CRF1000L Africa Twin/Adventure Sport/DCT[その名はダテじゃない]多彩な道に適応守備範囲が広い
往年のパリダカレプリカの車名を継ぐ本格クロスオーバー。270度クランクの998ccパラツインは、後輪が路面をしっかりつかみ、快活に吹け上がる。出力特性(3段階)とエンブレ(3段階)、トラコン(7段階+オフ)が連動して変更できる走行モードも便利だ。高速道路では、ビートを奏でるトルク感が心地よく、直進安定性もバッチリ。
車格は大柄に見えるが、意外とスリム&コンパクト。またがるとサスが沈み、身長168cmで両ツマ先が接地する。ハンドリングは、深く車体を寝かせてリヤからスロットルで曲げていく特性。17インチ的な素早さはないものの、積極的に操る楽しさがある。STDはサスの動きも落ち着いており、接地感を伴いつつ安定して立ち上がることが可能だ。
主戦場はオンだが、F21&R18スポークホイールと、適度にしなりライバルより軽量&スリムな鋼管フレームの車体によりオフにも強いのが持ち味。さすがに重さがあるのでバランスを崩すとリカバリーが難しいが、重心が低いため、余裕のある部類だ。
アドベンチャースポーツは、ビッグタンクなどを与えたタフ仕様。STDから+13kgとなるが、走行中はそれを感じさせない。専用設定のサスはストロークが前後とも約20mm長く、ピッチングも大きめだが、衝撃吸収性に優れ、乗り心地がいい場面が多い。
イージーでスポーティ
DCT仕様は、ラクな上に操作に集中できるのが長所。ATモードでも違和感がほぼない。クラッチ制御をレスポンス重視に切り替えるGスイッチもマル。変速時に空走感のないキビキビした操縦性となり、オフだけなく舗装路の峠でも役に立つ。MT仕様より車重はあるが、特にネガでもない。
KAWSAKI Versys1000 SE[プレミアムSUV]上質さを極めた電脳戦士
王道の2気筒勢に対し、直4で異彩を放つ本作。電スロやIMUを2019年モデルで採用し、パワーはハイとローを切り替えられる。ハイでも低回転域から乗り手を慌てさせることなく、レスポンスは極めて従順だ。大きく右手を捻れば、直4らしい吸気音とともに豪快に加速する。微振動は少なく、クイックシフターのショックもほぼなし。実に上品なエンジンだ。前後17インチのハンドリングもマル。倒し込みから舵角が入るまでの動きがネイキッドに近く、切り返しも非常に軽い。見た目は大柄な車体なのに、手足のように扱えるのだ。注目のセミアクティブサスは、その存在を忘れてしまうほど自然。強めの可減速でピッチングを適度に抑え、大きなギャップを通過した際の吸収性は抜群に高い。
YAMAHA XT1200ZE Super Tenere[パワフル+質実剛健]旅をしたくなる万能選手
ダカールラリーを席巻したテネレの名を継ぐ旗艦ADV。独特なサイドラジエターを備えた270度クランクのパラツインは、発進時のトルクは薄いものの、3000rpmからパワーバンドに突入し、厚いトルクを発生。高回転域での伸び切り感もあり、112psの数値以上にパワフルだ。ハンドリングも見た目より軽快。高速では怒濤の直進安定性を示し、クルコンも標準。防風性もいい。減衰力をスイッチ変更できる電動調整サスは、すごく簡単で変化の幅も大きい。
YAMAHA Tracer 900/GT[コクもキレもアリ]快適性だけじゃない
ベースは刺激的なMT-09ながら、落ち着いた乗り味を見せる。豊かな低中速トルクと鋭く吹け上がる3気筒の持ち味はそのままに、フラットな特性に変更。扱いやすく、穏やかもカットビも自在だ。高速道路では、安楽なライポジと快適なシート、安定した直進性で悠々。スクリーンは片手で50mmの範囲で高さ調整でき、防風性にも優れる。
そして何より旋回力の高さが光る。元々定評のあったハンドリングだが、2018年モデルからフラットで幅の狭いハンドルとロングリヤアームを採用。ネイキッドに近いライポジとなったことも手伝い、フロント荷重をかけやすく、安心してリヤにトラクションを伝達できる。GTはフル調整式Fフォークやクイックシフター、クルコンなどを備え、より快適だ。
YAMAHA Tracer 700[珠玉の軽快ADV]日本仕様を熱烈希望!
MT-07をベースに、欧州ヤマハが開発したモデル。適度な高さのアップハンドルと乗り心地のいいダブルシートを採用しており、MTとは印象が大きく異なる。エンジンはベース車と全く同じで、270度クランクによる官能的なトルクフィールも健在だ。
アッパーカウルと調整可能なスクリーンを備え、もちろん防風性に関してはベース車と比較にならないほど優秀。さらにハンドリングも一段と俊敏だ。これは、剛性バランスを調整したフレームと50mm長いスイングアーム、少しダンパーを硬めたサスによる恩恵。高速域の安定性も向上している。196kgという車重は、このジャンルでは圧倒的に軽く、小回りも得意。残念なのは国内仕様が未発売なことだ。
YAMAHA Ténéré 700[真の冒険野郎候補]オンオフ成分を絶妙配合
ダカールレーサー風のスタイルに見合う、オフ性能が魅力だ。MT-07譲りの心臓は、吸排気系を専用設計とし、最終減速比をショート化。低速域のダッシュ力と扱いやすさを増した。スタンディングに適した設計と、F21&R18インチのスポークホイール、長いサスストロークによって、フラットダート程度は余裕。出力特性と軽い車体も活きてくる。サスのグレードもあり、大きなギャップは厳しいが、この走破性は大したものだ。さらにオン性能も万全。ピレリ製スコーピオンラリーSTRはブロックタイヤながらグリップ力を確保しており、オフ車感覚で車体を深く寝かせればクイックに曲がれる。高速では防風効果もしっかりアリ。数多のライバルと比べ、冒険野郎の資質は抜群に高い。
HONDA VFR800X[爽快V4安楽仕立て]カジュアルにスポーツを
アルミフレームにV4を積むVFR800Fがアドベンチャーに転生。ハイパーVTECの爽快な走りはそのままに、アップライトな乗車姿勢が与えられ、街乗りもロングランも楽々。ベース車からトラベル量を増やした前後サスはよく動き、路面の凹凸もしっかりいなす。ハンドリングは穏やかで、難しいことを考えず、自然に旋回可能だ。高速ではドッシリ安定。ウインドプロテクションが優秀で、5段階調整式のスクリーンは肩口に当たる風も防いでくれる。
HONDA NC750X/DCT[ザ・コンビニエント]取っつきやすさ王者級
NC750Sと共通の車体を持つクロスオーバー仕様。ハンドルはSよりアップライトな設定で、上体がほぼ直立。スクリーンの防風効果も上々で、リラックスしてロングランできる。実用的なトルク特性とクセを感じさせないハンドリングは、ライバルの中でもトップクラスの取っつきやすさだ。シート高がSから+30mmの830mm(800mmのローシートもあり)のため、よりパタッと車体が寝る。Sより1L大きい22Lの収納スペースも地味にウレシイ。
HONDA CRF450L[24㎰を扱い切れるか]オフ版のRC213V-S
24ps! 単気筒449ccで、この最高出力はオフロードの走破性を徹底して狙ったものだ。――コンペモデルのCRF450Rをベースに公道走行可能とした本作は、オフ版のRC-213V-Sと言うべき存在。例えば、泥から脱出する時にCRF250Lなら回転を上げてカッぽじる場面でも、コイツなら力強い低中速トルクによって余裕で乗り越えられる。リニアな加速とわずか131kgの車体も手伝って、走破性も旋回性も異次元。24psと言えど中身が違う。オフでは持て余してしまうライダーも多いハズだ。なお、下道でも中速域までのダッシュ力が心地よく、法定速度内なら十分楽しい。価格は129万6900円。これはオフを相当走り込んだマニア向けのモデル。価値がわかる人にはたまらない1台だ。
※表示価格はすべて8%税込です。
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