総じて軽快、過激もフレンドリーもよりどりみどり

2019新車走評:国産大型ネイキッド編[カテゴリー別“試乗インプレッション”大図鑑 #07]

トガッたルックスを持ち、SS由来の強心臓を搭載するモデルも多数――。「ストリートファイター」や「スーパーNK」と呼ばれるマシンが居並ぶ当クラス。国産は、始祖であるカワサキのZシリーズに対し、ヤマハがMTシリーズでイッキに勢力を拡大。そこにホンダの近未来カフェ、CB-Rシリーズが加わった。走り自慢のツワモノから、やさしい相棒まで揃う。

刺激的なのはリッター級。等身大の相棒も選べる

ヘリテイジ系と真逆の現代的かつ過激なルックスを持つネイキッドクラス。リッターモデルは、直4スーパースポーツ譲りの強心臓を低中速寄りにセッティングしたモデルが多い。アップハンドルとカウルレスによる軽快さも相まって、ストリートでは最強レベルの運動性能を発揮する。一方、600〜800ccのアッパーミドル系は、軽量コンパクトで扱いやすいモデルが揃う。

国産のリッター系では、MT-10が160psと最もパワフル。限界性能も高く、「凄いバイクに乗ってる」感がある。CB1000Rはホンダらしい正統派のスポーツバイク、Z1000はルックス通りの刺激とトルク感が楽しい。GSX-S1000は日常の使い勝手を含め、総合的にソツがない。

900クラスでは、軽さでMT-09が突出。Z900はパワーと落ち着き感に優れる。ビギナーにオススメなのは600クラス。ただし新作のCB650Rは少しヤンチャなキャラだ。

HONDA CB1000R[王道ホンダNK]とことんキビキビ

HONDA CB1000R
HONDA CB1000R■水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ 998cc 145ps/10500rpm 10.6kg-m/8250rpm 212kg 16L■シート高830mm ●164万520円

初代2004年型CBR1000RR譲りのユニットに電制スロットルを融合した直4は、右手の動きにドンッとダイレクトに反応。パワーバンドが幅広く、ギヤが少々高くても十分加速できる。いかにも伝統的な180度クランクらしい感覚で、ヨンフォアから連綿と続くホンダ直4の面白さがある。車体もコンパクトで倒し込みが軽快。前後とも高い接地感があり、キビキビしたエンジンと相まって、思い通りにコーナーを駆け回れる。

ソリッドに効くブレーキ、カッチリしたオートシフターもキレのよさに貢献。シンプルにスポーティさを追求しており、峠を流すのが最高に楽しい。ライポジはやや前傾し、動きもクイックなので、高速巡航より下道を快活に走るのが得意。これぞ昔ながらのホンダらしい「ザ・直4NK」だ。

YAMAHA MT-10/SP[天使と悪魔の二面性]万能さと刺激が同居する

YAMAHA MT-10/SP
YAMAHA MT-10/SP■水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ 997cc 160ps/11500rpm 11.3kg-m/9000rpm 210kg 17L■シート高825mm ※諸元はSTD ●[STD]167万4000円 [SP]199万8000円

公道向けに最適化したYZF-R1譲りのクロスプレーン直4は、二面性が特徴。5000rpm以下はレスポンスが穏やかで、ドロドロしたパルス感と柔らかいエンジンフィーリングが滋味深い。車体は大柄で安定感があり、上体が起きたライポジもラクチン。オートクルーズも標準で備え、高速巡航が得意だ。SPは、前後にオーリンズ電制サスを奢り、一段と乗り心地に優れる。

さらに回転を上げると豹変。強烈に加速し、右手に対する反応も鋭くなる。ウイリーも簡単で、この過激さはクラス随一だ。コーナーではフロント荷重をかけなくても自然にバンクし、寝始めればスパッと曲がる。ただしエンジン特性からタイトな峠はやや苦手。CBとは対照的に、広い汎用性とキバを備えるのが本作だ。

KAWASAKI Z1000[漢の素バイク]獰猛サウンドとシャープ感

KAWASAKI Z1000
KAWASAKI Z1000■水冷4ストローク並列4気筒 1043cc 141㎰ 11.3kg-m 220kg 17L■シート高815mm ●115万200円

2003年の初代から進化を重ね、現行型は低く構えたルックスが特徴。アクセルの開け始めでタメが入る場面もあるが、トルクがスムーズに湧き出てスポーティ。7000rpm以降でさらに力感を増す。独創的な4本マフラーのサウンドは獰猛で、高回転の吸気音が特に迫力がある。サスはやや硬めだが、低中速で舵角が強く入り、ハンドリングの応答性はシャープ。効力とコントロール性を兼備したブレーキも武器だ。ABS以外の電子制御を敢えて持たないのも潔い。

SUZUKI GSX-S1000[ネイキッド化で駿足度アップ]振り回したくなる軽快感

SUZUKI GSX-S1000
SUZUKI GSX-S1000■水冷4ストローク並列4気筒 998cc 209kg 17L■シート高810mm ●113万1840円

GSX-S1000Fのカウルレス版で、ハンドルマウントのビキニカウルを持つ。ゴリゴリした低中速トルクを持つエンジンはFと全く同じだが、車重は5kg減。サス設定も微妙に変更され、一段とよく動く。低中速域ではよりクイックなハンドリングを見せるが、やや個性的なZに比べれば素直な特性だ。高い速度域でギャップを越えた時は、やや挙動が大きくなる場面も。落ち着きのあるハンドリングと防風効果を求めるならF、振り回して乗るならコッチだ。

YAMAHA MT-09/SP[2スト風の操る醍醐味]豊かな表情と個性的な脚

YAMAHA MT-09/SP
YAMAHA MT-09/SP■水冷4ストローク並列3気筒 DOHC4バルブ 845cc 116ps/10000rpm 8.9kg-m/8500rpm 193kg 14L■シート高820mm ※諸元はSTD ※写真はSP ●[STD]100万4400円 [SP]111万2400円

845cc3気筒は、往年の2スト車を思わせる過激さが楽しい。極低速ではドロドロと粘り強く、4000rpm程度で強烈なパンチ感があり、8000rpmでもうひと伸び。右手だけで自在に加減速を取り出すことができ、大きく開ければウイリーも簡単だ。回転域によって表情が変わる3気筒の魅力が存分に堪能できる。

車体はライバルより圧倒的に軽く、クイックな倒し込みが武器。ただしコーナーでは、ソフトかつロングストロークなサスを伸縮させ、モタードのように上手く姿勢変化を利用する必要がある。ハマらないコーナーも出てくるが、キマった時は最高に気持ちいい。刺激と操る喜びに満ちた1台だ。一方、SPはハイグレードサスを採用したSPはサーキットもイケるほど安定感に優れる。

KAWASAKI Z900[高バランスが光る]幅広く使える優等生

KAWASAKI Z900
KAWASAKI Z900■水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ 948cc 125ps/9500rpm 10.0kg-m/7700rpm 210kg 17L■シート高795mm ●95万400円

Z1000ベースの直4は発進からトルクフル。フラットに加速し、実に扱いやすい。テイストこそ希薄だが、心地いい振動と6000回転以降の伸び感が愉快で、「ザ・直4」といった感覚だ。エンジンモードは非装備だが、特に不都合は感じない。車体も軽快で、自然かつ安定したハンドリングを見せる。締まったサスによりブレーキの絶対制動力を引き出しやすく、加速感が一定のため、コーナーの立ち上がりもキマりやすい。この自由度はZ1000以上。純粋な速さではMT-09を上回るほどだ。高速道路では、安定した直進性と穏やかな加速感、軽く前傾したライポジがピッタリ。シートも快適で、移動手段として優秀だ。個性的なMTとは対照的。トータルで優等生なスポーツバイクだ。

YAMAHA MT-07[小粒でもピリリと辛い]万人が楽しめる懐の深さ

YAMAHA MT-07
YAMAHA MT-07■水冷4ストローク並列2気筒 688cc 183kg 13L■シート高805mm ●77万7600円

270度クランク並列2気筒は、発進や低速時のレスポンスが滑らか。4000~8000rpmの幅広い回転域でリニアにトルクが発生する。それ以降はパワーが炸裂。この二面性が腕前を問わず満足できる所以だ。400並みに軽いため、小回りもキビキビ。さらに、その気になれば、高回転パワーと締まった足で前輪から向きを変えるSS的な旋回が可能。サスの限界性能も高く、Z650より攻められる。単にイージーではない、その先の領域が用意されたバイクだ。

KAWASAKI Z650[しなやかに大らかに]幅広いステージで気軽

KAWASAKI Z650
KAWASAKI Z650■水冷4ストローク並列2気筒 649cc 187kg 15L■シート高790mm ●78万6240円

ニンジャ650の兄弟車で180度クランクのパラツインを搭載。中低速域のパルス感とトルクが濃厚で、サスもしなやかによく動く。MT-07とは対照的な乗り味だ。ハンドルが近くコンパクトなライポジと抜群の足着き性が相まって、街乗りは大得意。直進安定性や乗り心地にも優れ、高速道路も快適だ。ハンドリングは軽快で、リヤから旋回するネイキッド的な特性。ダラダラ流しても勢いで攻めるもよし。乗り手もステージも選ばぬ、ハードルの低い1台だ。

HONDA CB650R[硬派な玄人指向]元気にグイグイ曲がる

HONDA CB650R
HONDA CB650R■水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ 648cc 95ps/12000rpm 6.5kg-m/8500rpm 202kg 15L■シート高810mm ●96万1200円

CBR650Rと基本設計を共通としながら、印象がかなり違うので驚いた。CBRから吸気系を変更した直4は、極低速トルクが厚くなり、非常に元気。さらに8000rpmを超えて二次曲線的に伸び上がっていく。トルクの厚みがあるため、街乗りではエンストしにくく安心。足着きは身長168cmで両足の腹までしっかり着き、アシスト&スリッパークラッチの軽い操作感もうれしい。独特なのが、やや低め&フラットに構えたバーハンドル。CBRより前傾度は浅いものの、ネイキッドにしては実に戦闘的だ。フロントに自然と荷重がかかるため、前輪を中心にクルッとよく曲がり、思わず積極的に攻めたくなる。汎用性が高いCBRに対し、峠道やショートツーリングが似合う、玄人好みの1台だ。

HONDA NC750S[驚異の実用性]無類の扱いやすさと安心感

HONDA NC750S
HONDA NC750S■水冷4ストローク並列2気筒 SOHC4バルブ 745cc 54ps/6250rpm 6.9kg-m/4750rpm 218kg 14L■シート高790mm ●[赤]74万5200円 [黒]76万1400円

270度クランクの並列ツインは、実用的の一言。最高出力発生回転数を6250rpmに抑えることで、抜群に豊かな低中速トルクを発生し、牧歌的な脈動感も味わい深い。ハンドリングも扱いやすさ抜群だ。低重心設計と適度にコシのあるサス、リヤを主体に回り込む特性により、転ぶ気がしないほど安心。乗り手がトラクションを感じやすいのも美点だ。そのため、車重の数値以上に軽やかに駆け回ることができ、教習車として使われるのもナットクの出来である。さらに、通常のタンク位置にフルフェイスが入る収納スペースによって利便性も圧倒的。セミオートマのDCT仕様は、レバー操作が不要の上、ライダーの気持ちとシンクロする場面が多い。ラクに走りたい人はぜひ選びたい。

【掲載インプレッションについて】本文は、本誌の膨大なデータベースから、様々なテスターのインプレを統合し、凝縮している。そのため掲載写真のライダーによるインプレとは必ずしも限らないので、ご留意を! また、限られたスペースを有効活用するため、車両の解説は最小限としている。マシンデータは関連記事をサブテキストとして参照されたい。
※表示価格はすべて8%税込です。

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