パワー差にコントロール性で挑むYZF-R25の真価とは?

【YZF-R25 vs ライバル】250ccスポーツ 実測徹底比較 [#02 加速/減速テスト・サーキットデータ解析]

ついに国内デビューを果たした新生YZF-R25。以前に公開した記事ではインドネシア・セントゥールサーキットでのテストを紹介したが、今回は日本でライバルを一堂に集め、サーキット&ストリートで徹底的に乗り倒した! 今回はサーキットでのデータを解析するとともに、0-120km/h加速テストと80km/hからのABS制動テストをレポートする。

データ解析[1]:サーキットタイム

データロガーでサーキットの走りを解析。ストレートや高速コーナーではCBRとニンジャが速く、中低速コーナーで新R25がタイムを稼いでいた事実が判明した。

全区間でメリハリのあるRR、新R25はコーナー勝負

[TEST TRACK:袖ヶ浦フォレストレースウェイ]FIA 規格の本格レーシングコース。多彩なコーナーと適度なアップダウンを備え、森の中を走り抜けるのが特徴。首都圏からはアクアライン経由でアクセスしやすく、2輪&4輪の走行会や草レースで人気だ。
テストを行った袖ヶ浦フォレストレースウェイにおける各セクションの速度をグラフ化したもの。速度の伸びは鈍い新YZF-R25だが、ボトムで速度が落ちておらず、コーナリングスピードがひと際速いことがわかる。全体にまんべんなく速いのはCBRで、ニンジャ250はコーナーで落ちた分をパワーで取り返している印象だ。旧R25はコーナーでの限界が低く、速度の乗りも今一つ。

上記コース図の[1]~[6]のセクションを見ると、CBRはホームストレートでトップスピードを出し、以降も減速と加速のメリハリが圧巻。ニンジャは[2]~[3]の高速コーナーで最速タイムを出すなど、CBRに迫ったが、最終コーナー立ち上がりからCBRが大きく引き離している。新R25は、登りの中速コーナーである[4]や、ヘアピン手前の[5]~[6]で速く、コーナリング区間でタイムを削ったことがわかる。旧R25は、直線は新型と同等ながら、やはりコーナーで差が開いた。

結果は前回の記事[#01 サーキットで運動性能対決!]のとおり、CBR250RRがラップタイム/最高速度ともにトップ。スペックどおりの結果に。

インドネシアでのテストで新R25が好走だった理由は?

ギャップで荒れたセントゥールでは、硬さの中にしなやかさを秘めた新R25の足まわりが真価を発揮。収束性の高さと踏ん張りで好タイムを出した。CBRはイニシャルやダンピングが硬めで、好路面寄りのセッティング。細かく車体が跳ね、タイムを落とした。

2019年3月に行われたテストでは、柔らかい足まわりの旧R25はギャップで跳ね、大きくタイムロス。インドネシア育ちのR25だけに、新型は荒れた路面も考慮した?

サーキットデータの記録にはGPS DATA LOGGER デジスパイス3を利用

国内外のサーキットをカバーし、タイムや速度に加え、ライン取りやコーナーごとの速度まで解析できるGPSデータロガー。48×37×15.5mmと小型で、重さも28g。バイクへの取り付けにも最適だ。4万3200円。

データ解析[2]:エンジンパワー

シャーシダイナモで後輪出力を測定したところ、スペックどおりCBRがトップを獲得。新旧R25はエンジンはなぜか最高速付近で若干の違いが?

カタログ値と比較すると、全車一律で5馬力程度の数値ダウンが見られるが、これはエンジンのクランク軸で測定するメーカーと、後輪で測定するシャーシダイナモの違いによるものだ。
CBRがスペックどおりトップとなったが、低中速トルクに厚みのあるニンジャ250は綺麗なパワーカーブを描いた。

トップエンドで伸びるCBR、新R25はパワーが落ちない?

後輪出力の実測値は、CBRが順当に最高値をマークした。一方、綺麗なパワーカーブを描いたのはニンジャ。8400rpmまで出力、トルクともCBRを上回った。新旧R25も8000rpmまでCBRといい勝負をしたが、以降はCBRが盛り返し、ライバルが頭打ちした1万2000rpm超でも唯一伸びを見せた。R25は新旧とも同じエンジンながら、新型は1万2000rpm超でパワーを維持。最高速付近で1psほど差が出る。ECUを変更した可能性も?

2017年12月測定時は、CBRが34.7psを記録したが、今回はダウン。これは、気温が低いと酸素量が増え、最高出力がアップするのが原因(前回は気温9度)。今回は曇りで気圧が低いことも影響した模様だ。

CHASSIS DYNAMOMETER:ブルーライトニングレーシング

パワーチェックはダイノマシンを搭載した「BLRラボ・スーパートラック」を所有するブルーライトレーシングさんに依頼。全国どこでも出張パワーチェックが可能だ。自社製インジェクションコントローラー「i-CON」の出張セッティングやイベントで全国を駆け回っている。なお、「250は気温などのコンディションでバラつきが出やすい」とのこと。

ブルーライトニングレーシング 神奈川県平塚市西八幡4-4-12 http://www.blr-jp.com/

データ解析[3]:0-120km/h加速テスト

ゼロ発進から全開での加速性能を測定。エンジン出力が大きい方が有利だが、まさに結果はその通り。パワーチェックで上位の2車が速さを見せつけた。

RRとニンジャがブッチギリ! パワー差がダイレクトに出た。

頭ひとつリードしたのはCBRだった。R25は差を埋められず

0→100km/h、0→120km/h加速ともCBRが頭一つ抜きん出た。2番手はニンジャ。ほぼ互角でいい勝負をしているが、最高出力と高回転パワーに勝るCBRには惜しくも一歩及ばなかった。とはいえ、数字上では僅差でも、車載映像ではかなりの差として現れている。

3番手は新R25だが、同じエンジンを搭載するため、当然ながら新旧との差はほぼなし。これは体感的にも同様で、乗り手でわずかな違いが出た。CBR&ニンジャとは明確にパワー感の差があり、2番手のニンジャと比べても0-100km/hで0.8秒差、0-120km/hで1.3秒差がついている。これは見た目にも明らかで、距離を増すごとにグングンとニンジャがリードを広げていった。

データ解析[4]:80-0km/h ABS減速テスト

80km/hで走行中にフルブレーキングを行い、絶対制動力とABSの作動性をチェック。新R25の倒立フォークがタイヤのグリップを引き出し、最も短い制動距離をマークした。

制動距離、コントロール性とも倒立の新R25がダントツ!

温めれば効力がアップするR25、新型は唯一ストッピーもこなす

テスト車は全てABS仕様。短制動では、ABSの作動タイミングやリリース度合いが重要となる。結果は、新R25が圧勝。これはサスの影響が大きい。よく動き、コシがある倒立フォークは、前輪のグリップ力を引き出し、タイヤがロックしにくい。ABS介入のタイミングは遅く、制動を抜く間隔も自然。このコントロール性は秀逸で、後輪を浮かせるストッピーも唯一できた。ただし、ディスクが冷えていると効きが弱いのは難。旧型は同じブレーキだが、サスが柔らかいため、距離が伸びた。

CBRとニンジャは、ABSの介入が早く、制動を抜く間隔もタタタタと短い。そのため、制動距離が伸びる結果に。CBRはFフォークの踏ん張りがR25より弱いが、安定感はある。ニンジャは特にABSのリリースが速く、サスが硬いため、リヤが跳ねるのだが、初期から制動力は抜群。公道では安全な側面もある。

QSTARZ LT-Q6000S:80km/hはキュースターズで統一

デジスパイスと同様にGPS内臓の多用途ラップタイマー。ここでは、車種ごとのメーター誤差を解消するため、実速値を表示する速度計として使用。80km/h統一でABSテスト開始ラインまで走行した。6万1560円。

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