2020年に迫った東京オリンピック。様々な競技で日本中が盛り上がること必至だが、その周辺で起こる出来事にも注目すべきものはたくさんある。その中のひとつに、バイク好きが気になる話題もある。そう、白バイだ。
1964年(昭和39年)、東京オリンピックの聖火リレーを先導したのはメグロだった
高度経済成長期の真っ只中だった昭和39年(1964年)に開催され、日本国民に勇気と喜びを与えた東京オリンピックは、アジア発開催のオリンピックでもあった。体操男子や女子バレーボール、レスリング(当時は男子しかなかった)などのメダルラッシュは現在でも語り継がれている。
当時、日本はバイク(および自動車産業)で世界に打って出ようという機運が盛り上がってきていた時期。すでにスーパーカブなどは世界的な成功を収めていたが、花形である大排気量モデルではまさにこれからといったところ。英国の大排気量2気筒ビッグマシンを手本としながら、それを打ち負かすためにパフォーマンスと品質を高めるべく、数多くのバイクメーカーがしのぎを削っていた。
なかでも大排気量4ストローク2気筒で名を馳せていたのは、メグロの愛称で親しまれていたメグロ製作所だろう。650ccの並列2気筒を搭載したセニアT1/T2、そして500ccのメグロ・K『スタミナ』は、白バイにも採用されるなど威風堂々の存在感とパフォーマンスを誇っていた。
そうした時代背景から、東京オリンピックの聖火リレーを先導する白バイとしてメグロのバイクが採用された。その写真がトップ写真および下の写真だ。走っているのは500cc並列2気筒のメグロK2で、これは単気筒のZ7『スタミナ』とセニアT1を統合して誕生したT1の後継モデル。のちのカワサキ・Wシリーズの原型となったモデルでもあった。
ちなみに目黒製作所は、1960年に川崎航空機工業(現在の川崎重工業)=カワサキと提携し、1963年に傘下入り。1964年にカワサキに吸収されてその名が消滅した。メグロ・スタミナはその後、排気量を624ccに拡大してカワサキ・650-W1として生まれ変わり、そのシリーズは1974年のW3Aをもって生産終了となっている。
現在のW800は、往年のWシリーズをモチーフとして1999年に発売されたネオクラシックモデル・W650が元になっており、2011年モデルで排気量を773ccに拡大、2016年に生産を終了したのち、各種排出ガス規制などに対応した2019年モデルで復活したものだ。
気になる2020年 東京オリンピックの聖火リレーを先導する白バイは?
さて、そこで気になるのは、来年に迫った東京オリンピックで使われる白バイは、いったいどの車種が選ばれるのか、ということだ。ほぼ野次馬根性での予想ではあるが、もう少しお付き合いいただきたい。
まず、順当にいけば、警視庁などでもっとも多く採用されているCB1300スーパーボルドールというセンが濃厚だろう。日本が誇る“威風堂々”のフラッグシップであり、ビッグマシンでありながらスピード感を強調していないデザインも聖火リレーを先導するのに向いていそうだ。
余談ではあるが、1960年代後半からはホンダの白バイが大きな勢力となっている。下の写真は、2019年6月24日までホンダウェルカムプラザ青山で開催されている「CB」誕生60周年記念イベント「CBと駆け抜けた時代」展に展示されている白バイ(および赤バイ)だ。赤バイのほうは1970年製のホンダ ベンリィCB175 K4FVで、緊急サイレンや赤色灯など特別な装備を持った消防二輪車として仕立てられたもの。左の白バイは、1972年製のCB500 Pで、「P」の名からわかるように白バイ仕様。ベースになったモデルは4気筒SOHCエンジンを搭載したドリーム CB500 FOURだ。
ホンダ以外の可能性でいうと……?
最有力候補がCB1300スーパーボルドールであることに違いはないだろうが、ヤマハも要注目だ。欧州を中心にFJR1300ベースのポリス仕様は人気であり、日本でも“日本仕様”のFJR1300Pが街を走っている。また、同じく欧州で2016年に登場した3輪スクーターのトリシティ125をベースにしたポリス仕様、なんていうのも面白いかもしれない。ダウンサイジングやエコの観点から見れば、こうしたスクーターや、もしかしたら電動バイクというものあり得る話である。電動となると、2019年夏までの時点で国産車は小排気量相当のモデルしかないが、来年に向けてなんらかの動きがあるかもしれない? と、ヤングマシンらしく火のないところに煙を立てておきたい。
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