【開発者取材】カワサキ独自の剛性解析で実現

2018新型Ninja250の車体にはH2の技術を導入

2017年12月25日に発表された2018新型Ninja250/400国内仕様のスペックでも明らかになったのは、大幅な軽量化を達成していること。その秘密は一体どこにあるのか開発者取材を行ったところ、H2の車体設計で培った技術がフィードバックされていることが明らかになった。

カワサキ独自のピボットレスフレームを採用

10月25日、カワサキの2018年モデル取材会でNinja250/400の開発責任者である田中邦博氏は、大幅な軽量化を達成した理由について聞くとこう切り出した。「クランクケースに直付けしてるんです。上下合わせのクランクケースの後ろにスイングアームマウンティングプレートを結合してそこにショックの根本をつけているんです。エンジンにはこの力を受け止める剛性もつけています」。新型Ninja250/400が掲げたのは「ハイパフォーマンスイージー」というテーマで、そのために最も重要視したのが軽量化となる。しかし、エンジンは400cc版と共用化するため250ccについて言えば従来型からの大幅な軽量化は難しい。そうなると車体でいかに軽くするかということがポイントとなり、新型Ninja250/400の軽量トレリスフレームが生まれたのだ。そしてその技術は、2015年モデルのH2/H2Rが基礎となっている。

上から3枚はH2/H2Rで4枚目が新型Ninja250/400の写真。H2はクランクケース下側後方にボルト穴を4つ用意し、スイングアームマウンティングプレート(図の赤の部分、写真2枚目)を結合。そこにスイングアームとリヤショックをマウントしたいわゆるピボットレスフレーム構造が特徴。現在でもドゥカティの多くのモデルが採用し、スーパーバイクではパニガーレ以前のモデルはH2同様にトレリスフレームだった。H2との違いはクランクケースに直接スイングアームが取り付けられることが多いのと、エンジン型式がV型だということだ。新型Ninja250/400のフレームは、カワサキ独自の剛性解析を駆使してH2の構造を受け継ぐことに成功した。250/400のエンジンの写真はトップに掲載。

なぜ軽くできるのか?!

カワサキの説明は「新設計のフレームはNinja H2からインスパイアされたトレリスフレームを採用。先進解析技術を使用し、フレーム剛性の最適化と大幅な軽量化を実現する。加えて、エンジンをストレスメンバーとしても利用することで、軽量化に大きく貢献している。スイングアームをエンジンに直接取り付けたのと同様の効果が得られることで、クロスメンバーを使用せずに剛性を確保。優れた安定性と軽量化に貢献している」というもの。エンジンもフレームの一部とし、従来型のダイヤモンドフレーム以上に活用しているのだ。また、ホイールベース短縮と同時にロングスイングアームとし、ハンドリング性能向上にも貢献するという。このように徹底的に誰にでも扱いやすいイージーさとハイパフォーマンスを追求していったのだ。

こうしてみると極限まで合理化・簡素化されたフレーム構造が理解できる。写真中段のシリンダーヘッドとクランクケースをつなぐ金属プレートは最初は設定されていなかったということで開発初期はもっとシンプルな構造だったが、テストを重ねて加えることになったと田中氏は説明した。250クラスではピボットレスフレームのスポーツバイクはVTR以来。その点でも新鮮だ。

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モリワキ氏に聞くピボットレスのメリット

これは、フレームに全然力はかかってないようやね。スイングアームは結局エンジンについてるのと一緒でしょ。ドゥカティの場合はエンジン側にスイングアームピボットがあるけど、それだと後から位置移動はできない。でもこの形式だとプレート部分を作り直せばいくらでも調整できる。フレームにはそれ程ストレスはかかっていない。4輪のF1と一緒やね。エンジンがなくなったら足まわりもなくなってしまう。
エンジンがフレームの一部というドゥカティの考え方にも似てるけど、ドゥカティの場合は、クランクケースにリヤまわりがそのまま付いてるもんで、あそこで揺すられるとケースに負荷がかかるけど、H2Rの場合はプレートが別になっているんで、エンジン自体には押す力がかかるのみで、ケースに負荷がかかりにくくなっている。
普通のアルミフレームだと、フレーム本体を押し進めてクルマを走らせていく方式だけど、H2Rはスイングアームからの力を、エンジンで受けて押しているという感じかな。これだとエンジンを押して、エンジンマウントボルトで留まっているところ全体で前へ進めていくというやつやから、直接フレームにリスクはかかりにくいやね。フロントから来たリスクはかかるので、このフレーム自体はフロント支えになればいいわけや。普通スイングアームがねじれるとフレームまで一緒にねじれてくるけど、H2Rのピボット方式だとフレームとは関係ないところで、ねじれるわけやから。フレームにはフロントを押されたリスクなんかを吸収するだけの強度があれば、走るのには問題ないでしょう。
これ販売するんですか? やるなぁ。面白いじゃないですか。みんなアルミフレームだったら面白くない。いろんなアイデア持った人はどのメーカーにもおるわけですよ。設計者の中には。フレームを鉄パイプでやりたいと思っている人もたくさんおるけど、それをやってみろという会社の心意気がすごいと思いました。なんでもベストだけでいいもんじゃなくて、新しいものをやってお客さん楽しませていくっていうところに凄さがあり、遊び心があるっちゅうことですよ、オートバイに対して。みんな同じ作り方やったらどこのメーカーか分からないじゃないですか。いつも新しいことやる時にはカワサキがやるという感じやね。(カワサキH2R解説インタビュー/ヤングマシン2014年12月号より)

モリワキエンジニアリング代表・森脇護氏。日本のフレームビルダーの草分けとして、1970年代から多数のオリジナルフレームを製作してきた森脇氏。インタビューは2014年の日本GPで実施。H2Rの写真を見ながら自説を語っていただいた。当時、自社製フレームのマシンがモト2クラスをワイルドカードで参戦していた。

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