「これで大丈夫なん?」最新のタイヤは溝が浅いけど、雨で滑らないの?【ビギナーQ&A】

雨でもリスクの低いツーリングスポーツタイヤを愛用してきました。ところがツーリングを前提にした最新スポーツタイヤは溝が細くて浅いデザイン……これでウエット性能は安心できますか?


●記事提供: ライドハイ編集部

ハイグリップ仕様でなくても溝が少なく浅い最新スポーツタイヤ!

A. 確かに最新のツーリングを意識したスポーツタイヤは、少し前のサーキット専用のハイグリップタイヤのように、トレッドに刻まれた溝が少なく、しかも細くて浅いものが多く、排水性が高いイメージがありません。でも最新のタイヤはそもそもグリップさせる仕組みが変わってきていて、溝の大きさや深さに依存しないつくり方なのです。

左はピレリのツーリングスポーツタイヤとして定番のエンジェル。この後にエンジェルGT、エンジェルGTIIと続き、現在もツーリングスポーツとして絶大な信頼を得ています。そして右が最新のディアブロロッソIV。ハイグリップ系のデザインを継承しつつ、ツーリング性能を前提にしたスポーツツーリングタイヤです。

ご質問なさった方のように、ツーリングで雨にも遭遇するし冬場のグリップしにくい路面に対し、リスクの少ないツーリング仕様を選んできた感覚からすれば、バイクの高性能化で雨や冬場にツーリングは諦めましょうと言われているかのようなトレッド・デザインに見えるかも知れません。

しかし、これが近年のテクノロジーの進化で変わりつつあるタイヤの新しい顔なのです。溝の大きさや深さが、雨や低温での性能を補ってきたイメージを覆すような変化が起きています。

トレッドの溝は排水だけが目的じゃない

例えばレーシングにおけるレインタイヤとスリックタイヤ。

雨が降って路面に水膜ができているような状況には、排水性が良さそうな深い溝が有効に思えます。しかしレインタイヤの溝は、もちろん排水性もありますが、もっと重要なのは路面に接するトレッドのゴム質、いわゆるコンパウンドが柔らかいことでグリップするためのものなのです。

路面に接するトレッドのコンパウンドは、柔らかいほど路面の凹凸に柔軟に粘着します。同時にゴムは温めると柔らかくなるのですが、雨のように低温の場合は幅があって深い溝にすることで、路面に接する部分を撓み(たわみ)やすくできます。

しかし低温でも潰れやすいくらい柔らかいタイヤは、ゴム質としては強度が低く路面を掻くとすぐ減ります。レースだと雨が止んで少しでも路面が乾きだすと、慌ててピットへ戻りスリックタイヤへ交換するのは、乾いた路面を走ったら瞬く間にトレッドのゴムがなくなり、呆気なく転倒するリスクがあるからです。

左がレインタイヤで右がドライで履く溝のないスリックタイヤ。

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