
最近徐々に増えてきた、外国車や高速ツアラー系が採用するタイヤの「横型エアバルブ」。ダブルディスクの前輪だと、空気を入れたりエアチェックするのに便利そうで羨ましい。……が、横型エアバルブのメリットはそれだけではない!
●文:伊藤康司 ●写真:山内潤也、伊藤康司
横向きの方が空気が入れやすい!
タイヤの「空気圧の管理」はかなり重要。ハンドリングや乗り心地はもちろん、空気圧が下がり過ぎるとタイヤの摩耗やパンクしやすさ、燃費にも影響するので、できるだけ頻繁に測って適正に保つことが大切だ。
……とはいうモノの、従来からあるストレート型のエアバルブだと、空気圧ゲージをあてがったり、空気ポンプの口金を差し込むのが結構大変。とくにダブルディスクの前輪は、ガソリンスタンドに備わる四輪車向けの空気入れだと、ディスクローターに邪魔されて使えないことがある。また走行直後だとディスクに手が触れてヤケドする危険もある。
ところが近年の外国車や、国産も大排気量車の一部は「横型エアバルブ」を採用。一回でも使えば、もうストレート型は絶対嫌!というくらい、空気を入れたり空気圧チェックが簡単で、もちろんガソリンスタンドの四輪車向けの空気入れもまったく問題なく使える。
遠心力で空気が漏れる!?
エアバルブは、バルブコアと呼ばれる小さな「弁」を内蔵している。この弁は空気を入れる時(空気ポンプからの圧力がかかっている状態)には開き、それ以外はスプリングの力とタイヤ内の空気圧で閉じて、空気が漏れない構造になっている。
……なのだがスーパースポーツやスポーツツアラーなどは、近年は飛躍的に高速性能が上昇している。すると長時間タイヤが高回転を維持することで、既存のストレート型エアバルブだとバルブコアの中の弁が遠心力で外周方向に下がり、タイヤの空気が少しずつ抜けていく可能性があるという(かなりの高速走行時の話ではあるが……)。
しかし、エアバルブを横方向に寝かしてしまえば、バルブコアが遠心力の影響で開くリスクは限りなく低くなる、というワケだ。横型エアバルブのメリットは、空気の入れやすさだけでは無いのだ。大排気量の高速ツアラーなどから採用が始まっているのも、それが理由だ。
エアバルブの中に入っているバルブコア(通称:ムシ)。内蔵した弁をスプリングで押し上げて空気を漏れないようにしているが、遠心力で開いて少しずつ漏れることも。その漏れを極力防ぐのがエアバルブキャップなので、必ずつけておくこと! [写真タップで拡大]
そもそもエアバルブは消耗部品!
とはいえ「愛車はストレート型エアバルブだし……」と嘆く必要はない。最近はアフターパーツの横型エアバルブが多数販売されており、価格も数百円~1500円ほどだ。タイヤを外さないと交換できないが、逆を言えばタイヤの交換時に一緒に取り換え作業して貰えば工賃もそれほどかからないだろう。
じつのところ、タイヤのエアバルブはそもそも「消耗品」。大抵は本体部分がゴム製なので(金属製のタイプも、ホイールと接する部分がゴム製だったり、密閉用にゴム製のOリングが入っている)、徐々に劣化してヒビ割れを起こし、そこから空気漏れするパターンはけっこう多い。
なのでタイヤ交換の際には一緒にエアバルブも交換するのがオススメ(毎回でなくても良いが、数年も換えないのは危険)。そして愛車がストレート型エアバルブならば、その際に横型エアバルブに取り換えれば一石二鳥というワケだ。
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