
●文:モーサイ編集部(鷹橋公宣/元警察官)
違法改造車は、その証拠として“押収”されるかも
警察が暴走族を取り締まっている様子を、テレビ番組やニュース等で見たことがあるかと思います。とくに交通安全運動が始まる時期は、警察も取り締まりを強化し、暴走族の根絶に向けた対策も立てています。
彼らが乗っているバイクは、いずれも改造バイクにあたるケースが多く、当たり前ですが警察による取り締まりを受けると、厳しい処罰が待っています。状況次第では、違法改造の証拠品として押収されてしまうかもしれません。
では、違法改造されたバイクだった場合、勝手に押収されるのか、押収されたバイクは持ち主に返ってくるのか、元警察官/刑事の鷹橋公宣さんが解説します。
取り締まりを受ける可能性がある違法カスタムとは?
道路運送車両法では、保安基準に適合しない改造や装置の取り付け/取り外しが禁止されています。保安基準に適合しないバイクカスタムとしては、次のようなものが考えられるでしょう。
- マフラーの改造
マフラーには排気音の騒音規制が設けられています。250cc以上のバイクだと、近接で94dB(デシベル)、加速時は82dBを超える音が生じる状態では走行できません。 - 灯火の改造
バイクの場合は、前照灯(ヘッドライト)の常時点灯や方向指示器(ウインカー)などの色指定/点滅回数といった点が問題となります。 - ハンドルの改造
ハンドルは車検証に記載されている数値、つまりノーマル状態と比べて幅±2cm以内/高さ±4cm以内の範囲に収まるものでなければ違法です。
基準外のカスタムをすると“違法改造”となり、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。これらは球切れなどの“整備不良”とは異なる故意的な違法行為であり、切符処理は受けられません。
つまり、点数や反則金といった問題ではなくなり、窃盗や傷害といった犯罪と同じように処理されることになります。
“押収”はされても、警察は勝手に“没収”できない
違法改造に当たるバイクで走行している最中に、警察官から停止を求められたり、事故などで警察官が現場に来る事態になったりすると、当然「これは保安基準に適合しないのでは?」という疑いをかけられることになるでしょう。
もし違法改造だと判明すれば、道路運送車両法違反となるわけですが、その証拠は“バイクそのもの”でしかありません。なぜなら、違反は“バイク”がしたのではなく、“運転者”に課せられるからです。つまり、バイクは事件の証拠品として警察に“押収”されることになるかと思います。
この流れでいう押収とは、警察が強制的に取り上げるわけではなく、所有者本人からの“”任意提出」という方法を取るのが一般的です。「バイクを押収されるのはいやだ!」「任意なら拒否する」と拒んでも、令状を取って差し押さえられるだけなので、文句を言っても意味がありません……。
※本記事は2022年7月1日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
Z1とともに、CB750Fourを挟み撃ちするねらいで生まれた、Z1ジュニア=Z650 公害やマスキー法、オイルショックなどが社会問題として声高に叫ばれ始めた1970年代、カワサキは2サイクルのマッハ[…]
意外なる長寿エンジン「ザッパー系」が積み重ねた31年の歴史 2006年12月、ゼファー750ファイナルエディションの発売がアナウンスされ、1990年初頭から続いたゼファー750の16年におよぶ歴史が幕[…]
白バイがガス欠することはあるの!? 今回は、「白バイが警ら中にもしもガス欠になったら!?」について、お話したいと思います。結論を先に言うと、ガス欠にならないように計画を立てて給油しています。 私も10[…]
1998年登場のロングセラーモデル、ホンダCB1300シリーズの魅力とは? 今回は、私が白バイ隊員として約10年間、ホンダ CB1300に乗ってきた経験や感想を交えて、CB1300シリーズをお勧めする[…]
日本車に特化した、イタリアのバイク販売店を訪ねてみた イタリアのバイク事情を現地からお届けするコラム「Vento Italiano」(イタリアの風)第3回。今回はイタリア人は日本車をどう見ているかにつ[…]
最新の関連記事(交通/社会問題)
バイク駐車場の拡充に取り組む千葉市 千葉市内には6区で50の鉄道駅がある。中でも千葉駅は千葉県の中心駅として、JR東日本の在来線6線と京成電鉄、さらに千葉都市モノレールが乗り入れている。 都心や成田空[…]
「危険なら道路を改善しないの?」との疑問を感じるが…… 市中の道路を走っていると「事故多発交差点」と書いた立て看板を見かけることがあります。 その交差点で交通事故が多発しているので気を付けて運転してほ[…]
情熱は昔も今も変わらず 「土日ともなると、ヘルメットとその周辺パーツだけで1日の売り上げが200万円、それに加えて革ツナギやグローブ、ブーツなどの用品関係だけで1日に500万円とか600万円とかの売り[…]
EVは脱炭素社会実現と移動課題の改善に寄与するか 「バイクラブフォーラムin南国みやざき」で実施されたパネルディスカッション、「電動二輪車利活用による社会課題(脆弱な二次交通)解決」において、次のトー[…]
100万都市・千葉市のバイク駐車場問題 上総台地の平坦地に位置する千葉市は、人口98万人強の大きな自治体で、現在も増加中であることから「最後の100万都市」とも呼ばれている。 高度経済成長期には大規模[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
白バイがガス欠することはあるの!? 今回は、「白バイが警ら中にもしもガス欠になったら!?」について、お話したいと思います。結論を先に言うと、ガス欠にならないように計画を立てて給油しています。 私も10[…]
免許制度は基本、ヨーロッパで共通 イタリアのバイク事情を現地からお届けするコラム「Vento Italiano」(イタリアの風)第2回。今回はイタリアの自動車運転免許制度について紹介していきます。 と[…]
660ccの3気筒エンジンを搭載するトライアンフ「デイトナ660」 イギリスのバイクメーカー・トライアンフから新型車「デイトナ660」が発表された際、クルマ好きの中でも話題となったことをご存知でしょう[…]
バイク同様に開放感を楽しめるオープンカー、屋根を開けた状態での雨対策はどうなっている? ごく一部の特別なモデルやカスタムされたマシンを除くと、バイクは雨の中を走ったからといってトラブルが起きないように[…]
実は大型二輪の408cc! 初代はコンチハンのみで37馬力 ご存じ初代モデルは全車408ccのために発売翌年に導入された中型免許では乗車不可。そのため’90年代前半頃まで中古市場で398cc版の方が人[…]
人気記事ランキング(全体)
日本を代表するツーリングロードのティア表だっ! 「次のツーリングは、どこへ行こう?」 そんな嬉しい悩みを抱える全てのライダーに捧げる、究極のツーリングスポット・ティア表が完成した。 ……いや、そもそも[…]
Z1、GPz900R、Ninja ZX-9Rから連なる“マジックナイン”の最新進化系 カワサキは、948cc並列4気筒エンジンを搭載したスーパーネイキッド「Z900」および上級モデル「Z900 SE」[…]
幻のヤマハロータリー〈RZ201〉 1972年東京モーターショウの最大の話題は彗星のように登場したこのローターリー車だ。水冷・横置きツインローターを搭載、また前輪とともに後輪にもディスクブレーキを採用[…]
涼しさの心臓部。それは「素材」と「構造」の魔法的組み合わせ うだるような暑さと、じっとりと肌にまとわりつく湿気。毎年繰り返されるこの季節に、多くの人が少しでも快適に過ごせる服を探し求めている。そんな中[…]
機能性を損なうことなく利便性を高めた、期待の新製品 おたふく手袋は、長年、多くのプロフェッショナルから信頼され続けている老舗軍手メーカー。同社が展開する「BODY TOUGHNESS(ボディタフネス)[…]
最新の投稿記事(全体)
バイク駐車場の拡充に取り組む千葉市 千葉市内には6区で50の鉄道駅がある。中でも千葉駅は千葉県の中心駅として、JR東日本の在来線6線と京成電鉄、さらに千葉都市モノレールが乗り入れている。 都心や成田空[…]
州知事や政府関係者のほか、従業員も参加し祝う 四輪車はもちろん、ビジネスジェット機でも知られ、最近では再使用型ロケットでも話題のホンダ。その始まり、つまり「祖業」は二輪車にある。 スタートは自転車用補[…]
2024年モデル概要:XSRらしさを受け継いだ末弟 海外で先行して展開されていたXSR125の国内導入が明かされたのは、2023年春のモーターサイクルショーでのこと。発売は同年の12月8日だった。 X[…]
似ているようでカブとはまったく違うのだ アウトドアテイストの強いCT125ハンターカブが人気だからといって、ここまでキャラクターを寄せてくることないんじゃない? なんて穿った見方で今回の主役であるPG[…]
実績豊富なディーラーによる絶妙なバランス感覚 全国のハーレーダビッドソンジャパン販売網がカスタムの腕とセンスを競うコンテスト『バトルオブザキングス』にて2年連続で日本一になった実績を持つワタナベモータ[…]