「責任があるのは警察?道路行政?」『事故多発交差点』の看板だけで危険な道が放置……【元警察官が解説】


●記事提供:モーサイ編集部 ●レポート:鷹橋公宣

「危険なら道路を改善しないの?」との疑問を感じるが……

市中の道路を走っていると「事故多発交差点」と書いた立て看板を見かけることがあります。

その交差点で交通事故が多発しているので気を付けて運転してほしいという注意喚起のために設置しているのは理解できますが、「危険なら改善しないの?」「危険なのに放置して事故が起きたら誰が責任を取ってくれるの?」という疑問を感じずにはいられません。

交通事故が発生する危険があるのに道路を安全なかたちに整備・規制しないまま、実際に事故が発生したとき、警察や行政は責任を取ってくれるのでしょうか?

道路に「瑕疵」があれば道路管理者の責任

交通事故が多発している原因が「道路の瑕疵(かし)」にある場合は、道路管理者が責任を問われることになります。道路管理者とは、道路法の定めに基づいて道路の新設・改築・維持・修繕・管理などをおこなう者で、次のように分類されます。

●一般国道……指定路線は国土交通大臣、それ以外は都道府県

●都道府県道……都道府県

●市町村道……各市町村

もし道路に設置や管理の瑕疵があり、それが原因で他人に損害が生じた場合は、道路管理者がその損害を賠償しなければなりません。すると、危険な道路を放置することは「適切な道路を設置していない」「安全を維持できるように管理していない」とも考えられそうです。

もし、次のような原因で交通事故が多発しているなら、道路の瑕疵が認められる可能性があります。

●舗装の陥没・くぼみ・路面の凹凸・側溝の段差・マンホールの突出などが原因で正常な運転が難しい状況で起きた事故

●側道からの樹木や倒木、路肩の雑草などが原因で起きた事故

●凍結しやすい箇所におけるスリップ事故

ただし、これらの原因による事故が交差点で多発するケースはまれです。道路の瑕疵を問えるのは、通常の注意を払っていても事故に巻き込まれてしまうような状況に限られるので、いわゆる「事故多発交差点」にも適用できる話ではないでしょう。

交通の安全と円滑の確保は警察の責務

道路そのものに問題がなくても不注意による交通事故が多発しているなら、警察の出番になるでしょう。

交通事故が多発している交差点でも、常時その交差点に警察官やパトカーを配置していればほとんどのドライバーが注意を払うので、事故を防ぐことができそうです。

また、信号機による規制がない交差点に信号機や横断歩道を設置する、一時停止の標識・標示を設置するといったハード面での整備も、警察・公安委員会が果たすことになります。

とくに警察は、道路交通法が掲げる「道路における危険防止」と「交通の安全と円滑の確保」を担う責務があるので、事故多発交差点を放置するのは「責任放棄」だといえるかもしれません。

たしかに「信号によって規制されていれば」「横断歩道さえあれば」「一時停止の標識があれば」「警察官が常時監視してくれていれば」と仮定すると防げた交通事故もあるでしょう。

しかし、そもそもクルマやバイクの運転手には交通法規を守り、交通事故を起こさないように注意を払って運転する義務があります。

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